薫、教習中に
「はい!そこ右に曲がって
先に信号があるから気をつけて」
松岡に教習を受ける薫。恐る恐る運転をしている。
「はい!停止線にぴったり車を止めて!
ところで映画とか好き?
今度一緒に行かない?」
薫は緊張した表情。
「教習中に私的な会話は
やめて頂けませんか?
こっちが緊張している時に
余計な事言わないでくれます!
気が散るじゃない!」
信号が青に変わり車を発進させる薫。
「はい!左右をちゃんと確認ね!
その後、、、吉田君だったっけ
彼とはその後どう?
ああ!薫ちゃん車蛇行してるよ」
動揺した薫は右へ左へハンドルを切る。
あわてて助手席にもあるブレーキを踏む松岡。
車は路肩へと止まった。
「もお、、、薫ちゃんわかりやすいなあ、、
彼の名前を聞くだけで動揺するなんて、、、」
「もお!運転中に気の散ること言わないでって
いったでしょ!!」
薫は激しく怒る。
「でも、、その様子だとうまくいってないようだねえ
チャ―ンス!!
あんな軽そうな小僧はやめてさあ
俺と付き合おうよ」
「やめるも何も私は吉田のこと
なんとも思ってないから!!
それにあいつは梓のことが好きなの!!」
松岡にやりと笑う。
「なるほどー吉田君が友達のことが好きで
ちっとも振り向いてくれないから
そんなにカリカリしてるのかー
ほんと薫ちゃんわかりやすすぎだよー!」
先まで怒っていた薫が静かになる。
「先生、その通りです。
でも、それが先生に何の関係があるんですか?」
「その俺に向ける冷酷な顔もいいな、、、
ますます好きになったよ。
ここでキスしないか?」
松岡は教習中だというのに
薫に迫る。
薫は松岡の顔を見据えた後
目をつぶる。
顔を寄せる松岡。
しかし薫の手はパワーウインドーのスイッチに伸び
窓をあける。
思いっきり空気を吸い込む薫。
そしてあらん限りの声で叫ぶ。
「この教官、ナンパしてくるんですー!!!!
キスされそうなんで助けて下さーい!!!!!!」
何事かと、ほかの教官たちが
路肩に止まる松岡と薫の車に集まってくる。
「たはは、、、やばい、、
にげよ!!
飛ばすぞ薫!!
捕まってろよ!
そのまま車は走り出し
門を抜け
どこまでも走って行った、、、、、、、
ら、カッコ良かったのだが、、、、
松岡は先輩の教官につかまり
あえなく連行されていった。
「おーい薫ちゃんあきらめないぞ!!
またねえ!!」
連行されながらも
必死で別れの言葉を言う松岡を
薫は微笑みながら見ていた。
「ほんと、、あいつ悩みなんかなさそう、、
馬鹿だわ、、、あいつ」
ひとり路上に残された薫は
松岡が連行されていく姿を
いつまでも眺めていた。
私、ミッション運転できます
家の車もミッションです