第七話 進展
家を出る。
最寄り駅から電車に乗る。
適当に大きな駅で降りる。
1人で歩く。
行くあてもなく、もちろん約束もなく吉田君は
1人で街を歩く。
吉田君は何か考え事をする時は、いつもそうしていた。
街に溢れかえる沢山の人々。
それにしても人ごみというのは、言い得て妙だ、、、、
名前も知らず、交流も持たない人々が
何人、何万人いても俺には同じこと。
俺にとって彼らはごみと同じ
もちろん彼らにとっても俺はごみ同然。
街の中では完全に1人になれる。
梓は与える男が好きだ。
これは揺るぎない事実だ。
しかし
そうだからといって俺は、
自分の気持ちをごまかしていなかったか?
今更梓にどうこう言っても、もう遅いのは
よく分かっているが、
「俺は意気地なしと思われんのが一番イヤやねん!」
薫に突っ込まれるのも
もうごめんだ。
歩きながら吉田君は考えがまとまったようだ。
たとえ振られようとも
友達関係に波風立てようとも
自分の気持ちを伝えるべきだ。
「とにかくそうせんと、、、、、、、、、、
俺は前に進まれへん。」
ただ、、、、、、、、、、、
与える男には謝りたい。
「嫌いになるやろな、、、、、、
あいつ、、、、俺の事」
少し肩を落としながら歩く吉田君は
街の雑踏の中に消えて行った。
彼を飲み込んだ雑踏は、
相変わらず無機質な存在であり続けた。
関西では雪が降りました。