抱けないあの娘
「あなたが梓に与える男の電話番号を
渡したのはなぜ?
あの子たち、あれをきっかけに仲良くなっていった、、
なぜ敵に塩を送るようなことしたの?」
薫がブラックのコーヒーを飲みほす。
「ああ、、そんなこともあったっけ、、
あれは、、、
なんだか梓、落ち込んでいたから
どうすれば笑顔になるか
考えた結果や。
梓を喜ばしたかったんや
それが俺にとって損な方法でもな」
ふふ、、、
薫は、今日初めての笑顔を見せる。
「でも今はしもたー(しまった)って
思ってるよ」
吉田君も笑顔を見せる。
「所で、、、こんなことを聞くために
俺をこんなとこに連れてきたんか?
、、、違うやろ」
薫は吉田君の目を見据える。
「吉田は、、、私のことどんな子だと思う?」
コーヒーカップのスプーンを回す吉田君。
「そうやな、、一言でいえば、酷薄な性格やな」
「コクハクって?」
「残酷の酷に、薄情の薄って書くんや
人が触れてほしくない心の傷を
ずけずけと言ってしまう人をそう言う」
吉田君、にやりと笑い、話を続ける。
「でも、、自分が責められたら
非常にもろいと見た!
薫君!何を聞きたいのかは知らんが
人の心を探ったり
人のこと試したりするんは
えーことあらへんで!!!
俺はイラチなんや!!
言いたいことははっきり言わんかい!」
確かに薫は攻撃に弱いようだ。
先ほどまでの涼しげな顔は消え
顔を赤くして、下を向いて黙ってしまった。
「そ、それが、、言いたいことが分かんないから
みんなに聞いて回ってるんじゃない、、、、
自分がよくわからないから、、、」
下を向いてぼそぼそ言う薫。
いつもとは別人のよう。
「ん??
何言ってるかさっぱりわからん。
でも、、ひとつだけアドバイスしたるわ
自分がよーわからんようになってもうたら
裸になるんや。
自分のプライドとか他人向けの顔とか
全部捨てて身一つになったら
何となく、自分が見えてくるんとちゃうか?」
「、、、、ありがとう、、」
薫は、初めて吉田君に優しい笑顔を見せる。
「そうや!そのAカップの胸も全部さらけだして
裸になるんや!!」
「Cカップはあるわ!どあほ!!」
薫が真っ赤になって言う。
「なかなかええ突っ込みしてるやないか!!
その調子やで!」
吉田君はいつまでも笑っていた。
結局薫の心の中は見えず。
吉田君の心も謎。
五里霧中の2人の
霧が晴れた先には何が見えるのだろう。
きれいな青空か
雨模様か
どちらにしても
波乱含みなのは間違いないようだった
寝不足で死にそうっす