これって、、、
仮想的箱庭世界。
日本の交通事情が
学校の校庭ぐらいの敷地に
これでもかと詰め込まれている場所。
その中を、本物の道路では
ありえないスピードと技術で
車がのたのたと走っている。
それが教習所。
教習所の建物の中は
若い学生でごった返している。
その中を歩く2人の女性。
薫と梓。
「うー忘れろ忘れるんだ、、、
でも、、、びよよーん、、いすがびよよーん、、」
梓は緊張していて
わけのわからないことを口走っている。
「私も、、ちょっと不安、、
頭では運転の仕方を理解したけど
実際に出来るかなあ、、」
常に冷静な薫も
いつもとは少し違う様子。
「私が理解したのは
いすはびよよーんとならないってことだけだあ
あああ、、やっぱ、教習所行くのやめようかなあ、、」
梓は頭を抱えて悩んでいる。
「君たち、ここ初めてだね?
もしかして、、私に車なんて運転できるのかなあ?
って悩んでるでしょ。
大丈夫だよ!運転は慣れれば誰にでもできるようになるから!
一緒に頑張っていこう!!」
男が声をかけてきた。
なんだかやたらと背が高い。
「な、なんでわかったの!!
なんで、免許取ろうなんて大それたこと
考えたんだろうって、今悩んでたとこなの!!」
梓は、ワラにもすがるような気持ちでその男に
言った。
「教習所の方ですか?」
薫は、声をかけてきた
やたらと背が高い
年は20代後半ぐらいに見えるその男に尋ねた。
「はい、ここで教官をやっている
松岡というものです。
よかったら、君たちだけに
今から車の乗り方を教えてあげようか?」
「ええー!いいんですかあ?
やったー!!お願いしまーす!」
梓は有頂天になって喜ぶ。
「よし!まずはこの教習所から
案内しよう!うちの自慢の
最新設備を紹介するよ!!」
梓は喜んで、その教官の後ろについていくが
薫は、そのまま動かなかった。
「え?そっちの君どうしたの?
早く行こうよ」
と松岡が促すが
薫は少しにやりとしながら
「先生、、ひとつ聞いてもいいですか?」
といった。
「質問か?何でも聞いてくれ?」
「これって、、、ナンパですか?」
その言葉を聞いた
松岡も、不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「、、、、正解」
対峙した二人は
お互いに目を合わせたまま動かなかった。
教習所に昼時を知らせるチャイムが鳴り響く。
建物の中は
またいっそう学生たちでごった返してきた。
友達が教官してるんです