帰還
帰ってきた。
いや、帰ってこれた。
高速道路を下り
事務所のあるマンションに
とうとうついた。
車から荷物を降ろしながら
与える男はいいようのない
解放感に浸っていた。
事務所に入る。
「本当に今回はよく頑張ってくれた
お礼を言うよ。
はい、給料、御苦労さま」
本田さんは給料袋を与える男に渡す。
分厚い包みに驚く。
20万入っていた。
「え?約束より多いんじゃ、、、
こんなにもらえないですよ」
恐縮する与える男。
「いいんだよ、君はよく働いてくれたし、、、、、
また声をかけるから働きに来てくれないかな?」
「はい!よろこんで!」
「そうか!良かった
近々また現場が入っててな
戦時中の防空壕の調査なんだけど
そこで死んだ人たちが
今も出てくるって言う話なんだけど、、、」
「やっぱ、、、、、やめときます、、」
事務所を出ると、まだ残暑が残る
町並みはいつもの喧騒と熱気をたたえていた。
分厚い給料袋を持って
梓のもとへと向かう与える男
足取りは軽い。
「おかえり」
背後で声がした。
「待ちきれないから、来ちゃった、、
おかえり」
改めて彼は思う。
きれいだ。
ほかの誰よりも
「あ!お金持ってきたよ
お金お金!」
「お金の話はいいの
あなたが無事なら、お金なんていらない、、
山から帰らない時、ほんとうにそう思った。
なぜ私、お金使っちゃたこと責めたんだろう
って自分を責めた、、、、」
「いつものように元気出してよ
僕はお金って言って泣いている君の方が僕は好きだな」
「もう、、、」
梓は赤くなった。
「そうそう、、本田さんに給料弾んでもらったんだ!
20万だよ!20万!
これで今からご飯でも食べに行こうよ
ごちそうするから」
「え?いいの?やったー!」
喜んだ梓は二人で歩きだす。
「手えつないでえ、、手え!
なかよししようよー」
子供のように
甘える梓。
二人は、
これ以上ないぐらいの幸せな時を過ごしていた。
町並みに消えていく二人。
二人は、この時が永遠に続くと思っていた。
第5話 完
第5話終わりです。
いやあ、文章を書くのってむずかしいですね