黄昏時
一歩足を踏み出すのにも苦労する。
汗をかく。
歯を食いしばる。
山道を重い荷物を持って
歩くとそうなる。
そういえばこの夏、汗かいてばっかりだなあ。
こんなに働いたのは生まれて初めてだ。
与える男はしみじみ思う。
そして
誰かのために働くのも初めてだ。
誰かのために働くって
結構いいもんだ、、、、、
夕方、二人はまだ山頂付近にいた。
「ちょっと作業欲張りすぎたなあ、、、、」
本田さんがつぶやく
「今4時半、、、
足もとが暗くなるまで30分か、、、
おい、急いで降りるぞ!
ついてこい!」
本田さんは重い荷物を持って
山道を下る。
山道は昇るより、降りる方が実はつらい。
昼間酷使した足の筋肉が
悲鳴を上げる。
ヒグラシの音が
心を苛立たせるほど
夕方の山々に響き渡る。
足もとがだんだん暗くなり
ただでさえ歩きにくい山道
がさらにつらいものになる。
「うーん、、、」
本田さんが低い声で唸る。
時間は5時半
あたりは真っ暗。
立ち往生である、、、、、
そのころふもとの旅館では
梓がお爺さんに別れを告げていた。
旅館の前で
名残を惜しむ二人の背後から
電話の音が聞こえてくる。
電話をとるおじいさん。
「ああもしもし、、
ああそれは心配だねえ、、
ああ、、もう少し様子を見て見るか、、」
心配顔のおじいさん
「どうしたの?」
梓が首をかしげながら聞く。
「2人がまだ山から下りてこないんじゃと、、、」
梓の顔がみるみる青ざめて行く。
黄昏時の山を見つめ
一言もしゃべらない梓は
二人の無事を強く願っていた。
さむーーーーーーーい!