会いたいから
一日山を駆けずり回った与える男は
疲れていた。
背中に50キロはある
機材を背負い
でこぼこの山道を歩く。
同じような機材を背負って
一日歩いていた本田さんが
ぴんぴんしているのが与える男には
信じられなかった。
「あー終わったー
この後のビール一杯のために
俺は仕事してるようなもんだからなあ!」
本田さんが、汗をぬぐいながら
豪快にしゃべる。
与える男は疲れすぎて
うつろな目をしている。
本田さんの話も上の空。
やっと旅館に戻ると
おじいさんが笑顔で出迎えてくれた。
「お帰り。疲れたろう
そうそう、そっちの兄さん
さっきから山本さんって方が何回も電話してきてたよ」
山本さん?、、、、梓じゃないか!!
「お、おじいさん!ちょっと電話借りてもいいですか!!」
「おおいいよ。そこにあるから使いなさい
彼女かい?いいねえ若いもんは」
急いで梓の携帯に電話する与える男。
今日一番聞きたかった声が聞ける!
与える男の胸の鼓動が高まる。
「もしもし梓?」
「わー会いたいよお!!!
なんでそんな変なバイト行っちゃうの!
お金なんてどうでもいのにい!!
それより顔が見たい!
会いたいの!」
梓は声を張り上げて会いたいという。
1日あっていないだけなのに。
「バイトどう?」
「すっごいきつい、、、
山道を一日歩いて、ものすごく疲れた」
「、、、御苦労さま、、、
私のためにそんなことしてくれてるのね、、」
「まあそういうことになるか、、、
自分にけじめをつけるためでもあるけど、、、
貯めなきゃいけないお金を
使ってしまう
馬鹿な自分に対してね」
「あー今すぐそこへ行って
御苦労さま、有難うって言ってあげたい!」
「はは、、そうだね、僕もいってもらいたいよ」
「と!!思ったのでえ
梓!!来てしまいました!!」
「へ?」
ガラッと扉を開ける音がした。
そこには梓が立っていた。
美しい山々をバックに立つ彼女。
映画のワンシーンのようだ。
「御苦労さま!!」
梓は汗と泥で汚れた与える男に
抱きついていく。
「服が汚れるよ、、」
「構わない、、、、」
後ろでは、本田さんとおじいさんが
あきれ顔で二人を見守っていた。
夜はおじいさんも加わって
4人で宴会となった。
「こんな美人さんがこの里に来るのは
滅多ににないことじゃのう」
おじいさんはうれしそうだ。
「ほんとだぜ!
しかし梓さん、こんな奴のどこがいいんだ?
こんなもやしみたいな奴の?」
本田さんが聞いてはならないことを
ビールをぐびぐび飲みながら言い放つ。
梓はちょっと考えて言う。
「全くどこがいいんだろう?
ウーン、、馬鹿!なところかなあ」
与える男、不満そうに言う。
「な、なんだよその理由!」
梓、ちょっと微笑んで
与える男を見つめる。
「私に馬鹿なところがいいの」
「がははは、熱いなあ!!
おまえ!梓さんに嫌われないよう頑張れよ!!」
本田さんほろ酔い状態で
上機嫌に笑う。
宴会はいつ終わるともなく続いている。
澄み切った空は
満天の星空を夜に作りだし
4人の楽しそうな笑い声は
静かな里にいつまでも響き渡っていた。
31日更新出来るかなあ、、、