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与える男  作者: geinguns
与える男
45/120

黒は隠せ!

与える男は、今

高速道路を走っている。





車で。






彼は今、山奥の現場に向かう車に

乗っている。




高速道路を2時間ほど走り

そのあとも山道を延々走る。





「ここは携帯のアンテナもないからなあ

そんなとこ今時ここだけじゃないか?」




運転席の与える男を雇った社長がつぶやく。




空を見上げるとトンビが飛んでいる。

空は雲ひとつない快晴だ。





旅館に着くと人の良さそうな

おじいさんが出迎えてくれた。



「よーこんな山奥まではるばる来なさった。

疲れただろ、部屋でゆっくりなさい」





空気が驚くほどうまい

与える男は深呼吸を2度3度とした。





ここは山奥



携帯の電波も届かない。




昔話に出てきそうな

おじいさんが玄関先で出迎えをしてくれた。



旅館はかやぶき屋根で囲炉裏まであった。







ついさっきまでいた都会とは

全く別世界、ある種パラレルワールド

に迷い込んだような気分。



「そうだ、ひとつ言っておくぞ

俺のこと社長って呼ぶなよ。

下請けで来てるからなあ

本田さんって呼んでくれるか?」



与える男の雇い主、本田さんは

笑いながら言った。






「そうそう、テレビの奴らはもう帰ったか?」



本田さんは旅館のお爺さんに尋ねる。



「ああ、オオタカを撮影しに来た人たちかい?

もう帰ったよ。

自然が残るこの里で工事なんてとんでもないって

いつも言ってたなあ」



「け!天然記念物なんてくそくらえ!!

じいさん、今度あいつらにライチョウの焼き鳥でも

出してやれ!」



オオタカと言えば、特別天然記念物

絶滅危惧種である。




「そのオオタカの巣がよお

俺の現場のすぐ隣にあるって

テレビの奴らがいいだしてさあ

自然保護団体の奴らが工事をやめろってうるさいのよ!!」




「でも天然記念物は守らなくていいんですか?」



与える男は聞いた。



「おう!そんなこと言ってたら

こっちはおまんまの食い上げなんだよ!



それにな、天然記念物なんてここには

腐るほどあるのよ!

ほれ、その小川を見てみろ」




小川の水が澱んだ所に

頭のでっかいこげ茶色の物体が見える。



「ええ!!、本田さん、、あれなんですか?」



「オオサンショウウオよ

捕まえると、本当に山椒の匂いがするぜ


かば焼きにして食うと

結構うまいらしいぞ」



あれも天然記念物らしい。



「それに山に行くといつも見る

日本カモシカ

あいつは顔がでかいから


人かと思ってよく挨拶しちまうんだよ。」



がはは、、



豪快に笑う本田さん。




天然記念物だらけ、、、



確かに与える男は

ここにきて30分でもう天然記念物を

見てしまった。




もしかしたら、どえらい所に

来てしまったかも、、、、



「おう、それからこれ渡しておくぞ」



本田さんから何故か鈴を渡される

与える男。



「鈴?なぜ鈴をくれるんですか?」



「熊が出るんだよ、この現場

これから秋口にかけて熊が一番凶暴に

なる時期だからなあ



出会い頭に熊に会うと

やられちまうから

鈴でこっちの居場所を

熊に知らせるのさ。



熊だって人間が怖いから

鈴の音を聞くと逃げていくって寸法よ」




、、、、、、熊って本物の?




どうやらどえらい所に来てしまった

という予感は当たっていたようだ。




生きて帰れるだろうか、、、、

そして梓に再び会えるだろうか。



梓のことを思い出した与える男は

なんだか無性に帰りたくなってしまった。






「なんだ?もうビビったのか?

ここにいるのは熊だけじゃないぞ



スズメバチには特に気をつけろよ

あいつら山では土の中に巣を作るから

そこを踏んだら一巻の終わりだ。



あいつら、熊が天敵だから

黒い物に向かって攻撃するからな!



髪の毛は帽子かタオルで隠しとけよ

後、眼にも来るから、、、

目は黒いからなあ、、


目を刺されたら失明するから

襲ってきたら地面に伏せて

眼はつぶってろよ!



それから一番怖いのはマムシだなあ、、」





本田さんの山の怖い話は延々続く。



熊 蜂 蝮 ヒル、、、、、





なんか妙にバイト代がいいと思ったら

こういうことだったのか、、、、、



今頃気がつく与える男。





ウーウー




サイレンが里に響き渡る。



昼の合図だ。

(田舎では時間ごとにサイレンが鳴るところが多いんだが

なぜだろう?)






お昼に出された

山の珍味を食べながら

与える男は

明日からの自分のサバイバル生活に

思いを馳せていた。





自然は大切にしなきゃだめですね


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