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与える男  作者: geinguns
与える男
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いいお父さん

バイトの面接を終え通用門から

外に出ると、

もう夕暮れ時だった。




あれだけ強かった日差しも和らぎ

蝉の声も収まってきたようだ。



面接を終え、ほっとしたからだろうか

彼は、どっと疲れを感じ

近くのベンチに座り込んだ。



同じように、吉田君もベンチに座り

しばらく夕暮れを黙って見ていた。



「自分なんでバイトするの?」

吉田君がけだるそうに言った。



「車の免許取ろうと思って、、、、

30万ぐらいいるんでバイトしてためようかなと、、、」



「あ、、俺も免許取ろうと思って、

俺の場合は2輪やけどな、、、



でっかいバイクに乗りたいんや、、、

小さい時からのあこがれでな



親父がZっていうでっかいバイクに乗っててな

休みの日は一日中バイク磨いてるくらい大切にしとった。



子供の頃の俺にはめちゃめちゃかっこよく見えて、

大きな音をさせて親父が走ってるのを見て

あこがれたもんや、、、



親父は学校の先生でな

よく生徒がうちに遊びに来るくらい

人気があったんや。



親父自慢のバイクの周りに

教え子が集まって

楽しそうにバイクの話をしてたなあ、、


あの親父の笑顔は忘れられないよ、、、、、




それで今は俺も学校の先生目指してるんやけどな、、

俺ってファザコンかなあ、、」




「そんなことないよ、

でもいいお父さんだね。吉田君のお父さんは、、、」




「ああ、、、いい親父だ」

















学校の先生で、大きなバイクに乗ってるなんて、

吉田君のお父さんはカッコイイよなあ、、




家に帰る電車の中で、

彼はぼんやりしながら考えた。










電車の窓から

家やビルの明かりが見える。



車内は静かで、咳払いしただけでも

車内に響きそうだ。











それに引きかえ俺の親父は、、、




自分では大手と言っていたが

聞いたこともないような名前の商社に勤める

普通のサラリーマンで



あ、、



普通じゃないところが

ひとつだけあったけ、、




親父の趣味はロックを聴くことだ。

しかも古いロックばかり

自分の部屋でヘッドフォンをつけて

一人悦に入ってる。




最近何を思ったかエレキギターを買ってきて

練習し始めた。




それが悲しいくらい下手なのだが



ある日親父が必死に俺を呼ぶかと思うと

「おい!ちょっと聞いてくれ!

ホテル カリフォルニアのイントロが弾けるようになったんだ!」



と言って親父がたどたどしくギターを弾き始めた。



とてもへたくそで、カッコ悪かったが、

親父は実に楽しそうに笑顔でギターを弾いていた。




「俺もあの笑顔は忘れられないや、、」



彼は電車の中で苦笑しながら

独り呟いた。


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