第一歩
与える男は躊躇なく
梓を抱きしめる。
梓は与える男の体に手も回さず
棒立ちで抱かれている。
梓からそっと離れる与える男。
バスが、不快なエンジン音をたてて
走り去っていく。
街の喧騒の中、立つ二人。
「優しく、優しくだきしめてくれたね、、、
ちょっとドキドキしちゃった!」
「抱きしめるのうまいでしょ
小学生のころ公園の木で何回も練習
したからなあ、、ははは」
「あなた、公園の木で
練習してたの?
馬鹿じゃない?
はははははは、、」
梓は与える男の言葉に
ウケて、いつまでも笑ってた。
「梓、、、その笑顔
いいね、僕まで幸せな気分になるよ、、」
与える男はしみじみという。
「私、きれいだから
笑顔もいいにきまってるでしょ、えっへん」
梓は得意顔。
「一言余計なんだよなあ
何も言わず黙っていれば素敵な人なのに、、、」
「うるさーい!もう帰る!
与える男!
ちょっと私と抱き合ったからって
調子に乗るんじゃないわよ!1
それから、、、」
「それから?」
「また明日、、じゃあね」
梓は改札口へと走り去って行った。
まだ梓を抱きしめた感触が
残る与える男。
じっと梓を抱きしめた両手を見つめている。
他には変えられないもの
大切なものを手にした与える男。
大切なものを手にした男は
それを守るため
強くなり
それを守るため
自分の持つものすべてを与えて行く。
与える男は
大人の男としての第一歩を
今踏みだした。
第四話 完
四話終わりです。
ちょっと話がダレて来たなあ