ソフトクリーム
テーマパークに雨が降る。
夏には珍しくしとしと降る雨。
朝から降り続く雨で、テーマパークに入場者は少なかった。
「はい!お客さん!ソフトクリーム大サービス!
20段までまいといたで!」
「吉田、、いいのかよ、そんなことして、、」
「大丈夫やって!どうせ余ったら捨てるんやし、、
それに店長居眠りこいてるからわからへんって!」
そういい終わると吉田君はにやりと笑った。
「これはチャンスやないか、与える男よ、、」
「え?何が?」
「鈍いなあ、、今、店は暇で店長は寝とる、、
これは、前の案内所にちょっとあいさつするチャンスちゃうかっていっとるんや」
そう言うと吉田君は、お客さんもいないのに
ソフトクリームを器用に巻き始めた。
みるみる大きくなっていくソフトクリーム
30センチに達しようかというほどの高さだ。
「おい!これもって案内所に行け!
プレゼントです!ってちゃんと言えよ!」
「お前が持っていけばいいじゃないかあ、、」
「お前は与える男だろ!
お前は今、案内所に行ってプレゼントを与える義務がある!」
義務って、、、吉田君のパシりをさせる口実に
与える男を使われて、ちょっとうんざりした
彼ではあったが
仕方なく、この大きいソフトクリームをもって
案内所に向かって歩き始めた。
不安定なソフトクリームをもって
小雨の降る園内を歩くのはなかなか大変だった。
滑りやすい地面を
不安定なソフトクリームを持って歩く姿は
まるで、綱渡りをしている芸人のようだった。
「こんにちわー」
彼が案内所であいさつする。
「こんにちわ、、、ってすごーい!大きいねそのソフトクリーム!」
梓が驚いた顔で言う。
吉田君の狙いどうり、案内所の二人に特大ソフトクリームは
ウケけているようだ。
「あ、あの、、売店からの差し入れです。よかったら食べ、、、、」
彼がソフトクリームを梓に渡そうとしたその時だ。
ただウケたいがためだけに、異様に巨大化させたソフトクリーム。
所詮その存在自体に無理があった。
その巨大ソフトクリームは
渡そうとした瞬間崩れおちた。
その様はまるで
昔、神の意思に逆らって建造され、
そしてもろくも崩れおちたバベルの塔のようだ。
そしてバベルの塔が
崩れおちた先には、、、
梓の顔があった。
ソフトクリームが崩れて梓の顔に命中したのだ。
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