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与える男  作者: geinguns
与える男
2/120

通学時間

「しかしホント不便だ。ここは、、、、」

彼はため息をついた。


彼の通う大学まで

まずバスに乗って最寄り駅に行き

電車を2回乗り換えやっとたどりつく。

片道1時間半の道のりだ。

車中、

音楽を聴いても

メールをしても

なかなか流れない時間に

彼は辟易としていた。


自然も多く

静かで

夕暮れにはヒグラシの鳴く音も聞こえる

この環境は気に入っていたが

交通の便の悪さには

彼はほとほと嫌気がさしていた。



「車の免許でも取ろうかなあ」



「それはいいことねえ。ぜひとりなさい。」

母親は夕食を作りながら言った

鍋のコトコト煮える音が聞こえる。

「うちの車使ってもいいわよ。

今の車大きすぎて不便だから

買い換えようかと言ってたところなのよ。

あなたが乗るなら、下取りに出さないわよ。

私たちは軽にでも乗るわ。」

彼は喜んだ。

車で学校に通えば、

あの通学地獄から逃れられる、、、、、




「でも自動車学校の費用は自分で出しなさいね!!」




翌日彼は、

自動車学校のパンフレットを見て絶句した。



学費、、、30万、、、、




「、、バイトするしかないかあ、、」



彼はこの際、通学時間を短くするためには

なんだってやってやると

心に誓った。





彼はテーマパークの通用門の前に立っていた。

夏の抜けるような青空の下にその赤茶けた門は建っていた。



陰鬱としたその門を見て

表正面玄関とのあまりの違いに

彼は寒々とした思いになった。



あちらの門はお金を使うお客様用

こちらの門はお金を払う使用人用



と、経営者が差別してるんじゃないか?

あからさま過ぎる!と彼は思った。



なぜ彼はこんな所にいるかというと

駅で見つけたフリーペーパーの

バイト募集の広告に応募したからだ。


「あまり楽しくなさそうだな、、、」


こんなあからさまな差別をする経営者のもとで

仕事するなんて、、、

こき使われるにきまってる。

とにかく目標の金額まで頑張ったら

すぐ辞めてやる!



そう決心して彼は

アルバイト合同面接会場に足を踏み入れた。




寒々とした心のままで

面接会場に入った彼は驚いた。





なぜならそこには彼が

理想とする光景が広がっていたからだ。






面接会場となっている部屋は

普段は会議室として使用されているようだ。




窓も大きめにとってあり

壁紙も品の良いもので

部屋の印象としては良いものだった。




二つの部屋をパーテーションをとって

一つにしてあり

その広い空間の中に

足を踏み入れた瞬間

彼は鞄の肩ひもがずれるのも気がつかないほど

固まってしまった。



その部屋には女性 若い女性であふれかえっていた。



部屋には女性の匂いがたちこめ

おしゃべりがざわめきとなって聞こえてくる。



中にはかなり美しい

彼が人生の中で口をきいたこともないような

美人もかなりいた。



いや



彼にはそこにいる女性すべてが

ものすごい美人に見えていた。



「おい、よだれが垂れてるぞ!」



突然の声に彼は我に返り

自分の口の周りを思わず確認した。



彼の背後には浅黒い顔の見知らぬ若い男が

にこにこして立っていた。



一見大学生風で、年も彼とあまり変わらないようだったが

肩からさげた高級ブランドのバッグが

少し気になった。



「よろしくな!一緒に汗かいて頑張ろうや!

しっかしここはグレード高いなー

俺ものすごくやる気出てきたわ!

、、、あそこの二人組なんかどうや?

あれが一番やな!

背の高い方なんかそのままモデルで行けそうな感じやわあ

隣の子もかなり可愛いはずやのに

あの子の隣にいるとかすんで見えるわー」




彼の10メートルほど先には

確かに美人の典型のような人が

友達と楽しそうにしゃべっていた。




「なんか話しかけるのも恐れ多い感じやね」



「なにいってんねん!

コミュニケーションをとらずに始まった恋は

有史以来ないんやで!!

声はかけられる時にかけるもんや

たぶん夏が終わるころには

俺はあの子と付き合ってるで。見ててや」




彼は、自信たっぷりのこの男に

少し好感をもった。





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