大きなタオル
梓の仕事場にお客様が訪れる。
時間は昼過ぎ。
一番の賑わいを見せる時だ。
人気のライドには
長蛇の列ができ
イベント会場にも
立ち見が出るほどの盛況ぶり。
お客様は老夫婦。
男の子のお孫さんを一人連れている。
「すいません、さきほど売店の前で財布を
落としたのですが、、、」
「ば、売店〜!そんなとこで財布を落としたら
とられちゃいますよ!店員が悪者ですから!!」
「こら!梓!お客様に何言ってんの!!
すいません、、、ではこちらに遺失物の特徴などを、、」
「いえいえ、財布はすぐ見つかりまして、、
親切な店員さんが、追いかけて届けてくれたんですよ。」
老夫婦は、梓たちに一部始終を話した。
「与える男ね、、あの子やるじゃない」
薫は感心した様子で梓に言った。
「梓、、あの子たち、悪者どころかいい人じゃない!!
私、ちょっと興味出てきた!
あの子たちと友達になろうか、、、いい?梓?
もしかしたら付き合っちゃったりして?」
梓はぶぜんとした表情で何も言わない。
「それで、お礼をしたかったのですが
かたくなに受け取ろうとしなくて、、
よく見ると、全身汗でびっしょりだったのでこれを」
袋の中には大きいタオルが入っていた。
「与える男さんに渡してもらえないでしょうか。
そして
これからも与える男でいて下さい
と伝えてもらえないでしょうか」
タオルの袋を置いて
老夫婦は帰って行った。
「梓、私あの子に届けてこようかなあ、、」
薫が袋を取ろうとすると
突然梓は袋をひったくった。
「私が持っていくの!!絶対!
薫ちゃん!大人の女に見えるようなセリフ考えて!
今から練習するから!」
顔を真っ赤にしながら叫んでいる梓を
薫は微笑んで見ていた。