揺れる心
「私、カンチョ―してたのかなあ、、、、」
「緊張でしょ!、、、、全く何を言い出すやら、、」
仕事場に梓と薫は立つ。
案内所の制服を着て背筋を伸ばして
立つ姿は梓を大人っぽく見せてはいたが
中身は変わらないようだった。
朝の出来事を梓は思った。
怖かったから声が出なかったのだろうか。
生まれてこの方、物おじなどしたことなかったのに
あいつの前に立つと固まってしまった、、、
案内所のガラス越しには
あいつが働く売店が見えていた。
「あ、梓!彼が出てきたよ!うわーすごい汗!
えーそのまま地面に倒れてるー大丈夫かなあ」
薫は梓にそう言ったが梓は無言だった。
お茶を一気飲みして、タオルで汗をふくと
また彼は売店へ入っていった。
「頑張るわねえ!あそこの厨房すごく暑くて
大変らしいよ。」
梓は珍しく不機嫌な顔をしていた。
「薫ちゃん、、もうあいつらの話やめようよ、、、、、、、」
またあいつが外に出てくるのが見える。
肩で息をし
ぼたぼたと地面に汗を落としている。
汗と油で汚れた彼は
さらに見るに堪えない姿になっていた。
その姿を梓は無表情な顔で見つめていた。
昼前の夏の空は
ぐんぐんと外気温を押し上げ
厨房の中にいる
二人をさらに苦しめ始めていた。