第三話 丸1年
7月は梓と出会った月。
そして今は7月と言うことは
梓と出会って1年になるということだ。
早いもんだ。
しみじみ思う与える男。
ジリジリと照りつける夏の日差しが
次々と全国の海水浴場を海開きさせる。
蝉も鳴き出し始めた。
そんな初夏の1日に与える男は
梓に海辺へと引っ張り出されている。
2人で歩く砂浜。
聞こえるさざ波の音。
「丸1年だね。私たち出会って、、、
いろんなことがあったね」
梓は感慨深そう。
「そうだな、あの時から僕の転落人生が
始まったんだよなあ、、、いてて!冗談だよ!」
つまらないことを言って、梓の怒りを買う与える男。
「まったく、、、最近私に対して安心しすぎてない?
つまらないことは言いまくるし、、、」
梓はなおも続ける。
「この状況にあなたはあぐらをかいているのよ!
私が隣にいて当たり前って思ってるんじゃないの?
もしかしたら、遠くに行っちゃうかもしれないし、
それに、、、」
「それに、、、なに?」
梓は与える男をじっと見つめる。
「浮気しちゃうかもよ?」
その言葉を聞いてじっと梓の顔を見つめる与える男。
なおも見つめ続ける与える男。
一言もしゃべらない。
さざ波の音だけが2人の耳に届いている。
やがてその視線に根負けした梓が与える男に飛びついて言う。
「う、うそよお!するわけないじゃん!!」
その言葉を聞いてにこっとした与える男。
「そうだろうね。そう思うよ」
梓はなぜかふくれっ面が直らない。
梓は何か不満でもあるようだ。
口を尖らせ与える男に訴えかける。
「でもさあ、これって去年は反対だったよねえ?
去年は好きで好きでたまらない梓ちゃんを
さえない与える男が追っかけるって展開だったのに
今はまるで逆、、、
いつからこうなったんだろう、、、悔しい」
そう言う梓をやさしく見つめる与える男。
「僕は今も梓を追っかけてるつもりなんだけど、、、」
その言葉を聞き頬を赤らめる梓。
「ははは!そんなことどうでもいいや!
それよりも見てよ!海きれいだねえ!」
確かに目の前にある海は
幸せな2人の前できれいに輝いていた。
あっついですねえ