一生懸命な有
「ドラムを始めたんですけど、やっぱりバンドがしたくなって、、、
誘ってくれる人はいっぱいいたんですよ、、、でも」
駅で初めて出合った3人は
まだお互い探りあい、
相手の気持ちを知ろうとしている。
「でも、私、古いロックが好きで、、、
でもみんなとは趣味が合わなくて、、、
そんなときパソコンで吉田さんの書き込みを見つけて
思わず飛びついたんです、、、
サバスが好きで、家も近く、初心者ってことだったんで
ぴったりだなって思って」
緊張しながら話すその、スネアドラムを肩から掛けた
女の子。
うつむき加減で一生懸命話す彼女に
いじらしさを感じる与える男。
顔を紅潮させ、印象的な黒髪のストレートを
少し触って彼女は話を続ける。
「すごく、すごく下手なんですけど、、、よいでしょうか?
お願いします。
女の子じゃ駄目でしょうか、、、
ごめんなさい、、、女の子って書きこむと
変な書き込みがいっぱい増えるので、、、
内緒にしてたんです、、、」
直立不動で聞いていた与える男と吉田君。
またまた作戦会議だろうか、
後ろを向いてこそこそ話。
「サバス?ブラックサバスか?
師匠に楽譜もらったんで勢いで書いたんやけど
俺、実は聞いたことあれへん、、、」
「僕もだよ、、、でも本当は知らないって言ったら
一緒にやってくれないよ、、、どうしよう?」
「俺が今日帰って、アルバムダウンロードしとくから
今は話を合わしとくんや!
それにしても、、、
ありがとう師匠!サバスの楽譜くれて!!
とにかく、なんでもいいから話して
気に入られるんや!!
何としても逃がしたらあかん!ええな!」
「わかった、、、」
前を向き最高の笑顔を女の子に向ける。
「女の子?全然かめへんよ!!
有ちゃんやったね!よろしく!
それからこいつは与える男。
人にええ顔ばっかする嫌なやつや!
まあ、顔だけでも覚えといて!」
「ひど、、、そんな紹介があるかよ
まあとりあえず、よろしく」
与える男があいさつすると
にこっと有も笑いかける。
目じりが下がるのが自分でもわかる与える男。
「それにしても、、ブラックサバスが好きな
女子高生なんて、全国で君だけちゃうか?
苦労したやろうなあ、、、」
「そうなんですよ、、、誰も理解してくれないんです、、、
彼氏に聞かせても、雑音扱いするんですよお、、、」
あ、、、やっぱいるのね、、、彼氏、、、
心の中でつぶやく2人。
自分たちには将来を誓った相手がいるのも忘れて
2人は、目の前にいるかわいらしい女子高生に彼氏がいる
という事実に
少し落胆する2人だった。
パソコン初めてちょうど一年が経ちました、、、
早いもんです、、、