勝たなきゃ、、、
フルに招待され、コンテストの会場にやってきた与える男と吉田君。
コンテストの本選だけあって、1000人規模の
大きい会場。
たくさんの人が会場に飲み込まれていく様を見て
与える男は息をのんだ。
「こんなにたくさんの人の前で師匠はギターを弾くのかあ、、、
すごい、、、すごすぎるよ」
吉田君もおおきくうなずく。
「そうやな、、、もしかしたら俺達すごい人と
知り合いになったのかもしれんなあ」
2人は楽屋をノックする。
すると出てきたのは、満面の笑みを浮かべたフル。
「よく来たなあ!ありがとな!
まあ入って座れよ!」
楽屋の中は、ほかの出演者もいて
みな一様にピリピリとした表情。
場違いな2人を見て、明らかに
不快な表情をする人までいる。
その中で笑顔を浮かべたフルは
誰よりも、自信と余裕があるように見えた。
2人にコーヒーを差し出すフル。
恐縮しながら2人は受け取る。
「今日は楽しんでくれよ!
もしかしたら、今日で俺のギター聞けるの最後になるかも知んないからさ!
俺、決めたんだ!もし負けたらきっぱりギターやめて
就職しようと思って」
「え、、、」
フルの言葉に驚く2人。
「なんでやめちゃうんですか!師匠!
あんなにうまいのにもったいないですよ!」
カラーン!
フルは飲んでいた缶コーヒーをゴミ箱に投げる。
「はっはは!まだやめるって決まったわけじゃないよ!
優勝したらもちろんプロになるよ!
世界中をツアーして
ギター弾きまくるんだ!」
「世界中を回るのかあ、、、」
与える男はフルが世界中をツアーする姿を想像する。
でっかいスタジアムに、山のようなアンプを積み上げて
フルはギターを弾く。
フルが操るクライベイビーのひと泣きで
何万という観客が熱狂する。
「師匠なら絶対優勝しますよ!じゃあ会場で待ってます!」
与える男と吉田君は楽屋を出て行った。
ばたん、、、
ドアが閉まるとフルは頭からバスタオルをかぶり
椅子に座る。
愛用のマスタングを抱き抱え、左足は貧乏ゆすり、両手はぐっと握りしめている。
バスタオルをかぶり下を向いたフルは
ブツブツ独り言を言う。
「、、、自由、、、自由に生きる。
それがもう少しで実現する、、、、
勝たなきゃならん、、、
勝たなきゃ、、、、、、、、、」
バスタオルの中からのぞくフルの鋭い眼光。
その眼はしっかりと前を見据え、目標をとらえていた。
強すぎるぜ!阪神!ははははははははははははははははははははは!ひゃっほーーーー