轢かれた猫
昼間の公園は子供たちのものだが
夜は、もう少し大きい子供たちが利用する。
大きい子供、与える男と吉田君は
なぜか夜、公園にいる。
後から考えたら実につまらない話をしているのだが
本人たちは大真面目に熱っぽく話している。
「でね、今度コンテストに出るらしいんだ、師匠が。」
「すっごいなあ!絶対見にいかなあかんなあ!」
「ところでさあ、、、どうしたらあんな風に
なれるんだろう?、、、師匠みたいに」
「まあとにかく、練習してみようや、、、
楽器も買わんとあかんなあ、、、」
「メンバーも全然足りないよ!2人じゃちょっとさみしいね」
公園の隣を走る道路はかなり交通量が多い。
ヘッドライトに照らされる道路をボーッと見ていた
吉田君は光の中に何かを見つけた。
「、、、?あの道路の真ん中にあるのはなんや?」
2人は道路に出てみた。
そのさきには、毛むくじゃらのペッチャンコになった
干物のような物体があった。
「、、、、車にひかれた猫みたいやな、、」
吉田君がつぶやく。
よく見るとそれは、表現するものはばかれるような
グロテスクな猫の死体だった。
轢かれてからだいぶ立つらしいその猫の死体は
干からびてペッチャンコになりながら
道路に存在していた。
後続から来る車になおも引かれるその猫。
「与える男、、、おまえはどう思う?あれを見て」
「気持ち悪い」
「あのなあ、、、それでもおまえは与える男か?
かわいそうやとは思わんのか?
持ってきて、ちゃんとお墓も作ってやろう」
与える男は意外に思った。
がさつで乱暴な吉田君に猫を思いやる心やさしい心があったなんて
これは失礼か、、、
とにかく吉田君のいつもと違う一面を見て
不思議な気持ちになる与える男
2人は道路の真ん中から歩道まで死体を持ってくる。
においと群がるハエに、気持ち悪くなる与える男。
公園の木の下に穴を掘って埋めてやり
その上に石を立て、墓碑の代わりにする。
2人はならんで、手を合わせた。
「おい、、猫、、、ご苦労さんやったな」
つぶやく吉田君。
2人は猫を供養すると、家路についた。
「なんかいいことした後は、気持ちがいいねえ」
「ちゃうで、、、当然のことをしたまでのことや」
夜空を見上げながら吉田君は言う。
死んだ猫と生きている僕ら。
何かの因果でかかわったからには、出来るだけのことをする。
それが「因果」というものなのだから。
与える男は今日、ひとつ吉田君に教わったような気がした。
書きたいことを書き散らしてます!