決まり事
「背筋は伸ばして、肩はリラックスさせる。
後ギターはなるべく寝かさない。
弦そのものをを見るんじゃなくて
ほら、ネックの上に点があるだろ
これを目安にするんだ」
与える男は今日も楽器屋にきて
ギターを教えてもらってる。
与える男
これまでになく真剣な表情。
「ギターを立てたら、、
まったく弾けません、、、難しい、、、」
「、、、難しく考えることはないよ」
フルはやさしく微笑みかける。
「ロックには決まり事なんか一切ない。一切だ。
俺が今言っていることもこうすれば弾きやすい
と、勧めているだけで、こう弾かなければならない
ってもんじゃないんだ。
なんならギターを歯で弾いてもいいし
手の代わりに電気ドリルで弾いてもいい。
そこが、ロックとほかの音楽の違いだよな」
フルはギターを下ろし、煙草に火をつける。
「ロックは何をやってもいい。そこが最大の魅力だ。
考えてみろよ。世の中は決まりゴトだらけだ。
朝は起きなければならない。
学校に行ったら机に座って勉強しなければならない。
休み時間は休み時間で、友達のつまらないギャグに
愛想笑いしなきゃならない。
そうすればうまくいく。
決まり事には従わなきゃならないのは十分わかってるんだが、、、
疲れる時もある。
そんなときに、決まり事一切無視。
裸に長髪、水道の蛇口をチェーンにつけて
首からかけた男が、
悪魔を礼賛する歌を歌っている姿を見ると
スカッとする。
よくぞここまで、世の中の決まりごとを破ってくれた。
俺にはできないことを、この男はやってくれたと熱狂する。
そうして俺はどんどんロックにはまっていった、、、」
与える男は師匠の話を目をきらきらとさせながら聞く。
「でも、、、ギターは立てないとFは一生押さえられないぞ!
あくまでアドバイスだけど、、、」
ははっはは!
2人は笑いだす。
快活な笑い声が楽器店に響く。
「でも、、、そんな風に自由に生きられるのはほんの一握り。」
下を向いてフルはつぶやく。
「たいていはあきらめて、規則だらけの社会で窮屈に生きていかなきゃならない。
でも、、、俺はいやだ、、、」
手をぐっと握りしめ、前を向くフル。
鋭い眼光。
「やっと、、、やっと本選まで残れたんだ、、、
俺は勝ってプロになる、、、
俺、、、今度コンテストに出るんだ、、、
それに優勝したらプロデビューできるってやつなんだけど、、、
もしよかったらさあ、、、見に来ないか?
俺のギター聞きたいんだろ?
俺の最高のギターをそこで聞かせてやるよ!」
与える男はもちろんうなずく。
「もちろん行きます師匠!
喜んで行かせてもらいます!」
「ありがとう、、、がんばるよ」
師匠の一世一代の舞台に招待してもらった与える男。
今から楽しみで仕方がない様子。
「頑張ってほしいなあ、、、師匠、、、」
3連勝は当然の結果です!!!