聞き入る
「よし、、、弦を張り替えて、配線も点検しといたよ
それと隅々まで磨いておいた。」
ギタースタンドに立てられたレスポールは
輝いていた。
それをじっと見つめる3人。
「ありがとうございます、、、いくらですか?」
財布を取り出す与える男を
店員は静かに制する。
「いいよ、タダでいいよ。
でも、ひとつお願いがあるんだけど、いいかなあ?」
店員は遠慮がちに与える男に尋ねる。
「えーと、このギター少し弾かせてもらっていいかな?
これからも持ち込んでくれたら俺がタダで見てやるからさあ?
いいだろ?」
与える男は快くうなずく。
「いいですよ!好きなだけ弾いてください」
「え?いいの?」
店員はうれしそうにシールドを取り出し
タンスぐらいはあろうかという大きいアンプに差し込んだ。
ボリュームをいっぱいに回し、ペダルを踏み込む
その大音響は店内に響き渡り、ショーウインドーのガラスを
細かく震わせた。
目にもとまらぬ速さで指を動かし
次々と複雑な音色を奏でる。
このギターは本来こんな音が鳴るのか、、、
与える男は思い知った。
その後も与える男の想像を超える演奏は続く。
与える男と吉田君は口をあんぐりしながら
その演奏に聞き入った。
なおも恍惚として弾きまくる店員の後ろから
大きな声がした。
「こら!フル!またギターで遊んでるだろ!
てめえ!しかもこの音はレスポールじゃないかあ!
あれほど売り物には触るなと言ってるのに!」
「ありゃ、、店長だよ、、、
これ返すよ」
与える男のふるえる手にギターを返す店員。
「僕、、、震えが止まらないです、、、
このギター、、、こんなにすごい音が出るんですね
あの、、また来て聞かせてもらってもいいですか?」
にっこりと笑う店員。
「もちろんいいよ!
あ!俺はフル。
いつもフルボリュームでギターを弾くのと
あと、ジョン=フルシアンテに顔が似てるからフルって呼ばれている。
いつでもおいで!待ってるから」
頭を下げて店から出ていく2人。
「すごかったなあ!なんかおれもやってみたくなってきたわ」
「あんな風に弾いてみたいよなあ、、、」
顔を紅潮させて話す2人。
「所でな?」
「何?」
「ジョン=フルシアンテって誰だろう?」
「、、、、、、知らない」
フルの熱い演奏が楽器初心者の2人に
火をつけたのは間違いないようだった。
またロックに魅せられた人間が
この街に誕生したようだ。
ジョン フルシアンテはレッチリの
ギタリストです。
個人的に好きなんです