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第一話 混在
山間に切り開かれた住宅地がある。
自然に囲まれた中に
忽然とその町が存在している。
いわゆる新興住宅地だ。
街の中は整然と住宅が並び
学校や店などもあるが
一歩街を出ると
田んぼや里山の風景が
脈絡なく始まっていく。
住宅地の近くには川が流れている。
なかなかの清流で
そこで川遊びをする人たちも多い。
ある日ふとその川を見ると
少女が一人で川遊びをしていた。
少女は
真っ白な服に麦わら帽。
夏の日差しの中
小さな魚を追いかけたり
川に石を投げたりして無邪気に遊んでいた。
少女?
よく見ると少女というよりは
もっと大きく、女性といった方がいい
年齢の人のようだ。
そんな女の人が一人で川遊びをするわけがない
という先入観が
その女性を少女と錯覚させたのだろう。
まるで目の前で
少女が女性に突然大きくなったような感覚に
陥った。
空想と現実
自然と町が混然と存在しているような所に
彼は住んでいる。