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薔薇色の瞳 Ⅰ
私の父は、研究者であった。
コンスタンボアーズの丘にあるゴールドベルク学院を卒業してすぐに、学院長となり、引退後、研究者となったという。
父は、優しい人であった。母と私を愛で包み込んでくれた。
私たちは、幸せだった。
あの日が来るまでは。
父と母は、私の七歳の誕生日に、列車事故で亡くなったのだ。
学院の大広間には、歴代の学院長の写真が並んでいる。
写真の中の父は、優しい微笑みを浮かべている。
父は、ここで学び、青春のすべてを過ごした。
そして、私も同じように、この場所に青春のすべてを捧げている。
チェリーブロッサムの木に登れば、薔薇園が見える。
若い緑の葉に包まれて、緑の木漏れ日は、母の瞳になる。
密かな情熱をたたえた薔薇は、父の瞳になる。