6話 続き
今日も今日とて投稿!
投稿する度に、少しずつですが、閲覧数が増えて嬉しい、どうも僕です!
いつもありがとうございますね!
皆協力しなければならない状況だというのに、ならずものというのはどこにでも存在します。というよりは、訳のわからないモンスターと戦うよりも、用意されたPvPで人から物を奪う方が楽だと考えてしまったのでしょう。盗賊やPK専門の人間も少なからず存在しているのです。悲しいですが、これが現実。リンが、ただでさえ鈍いリンが疲労度でさらに鈍り、ほとんど抵抗ができないリンが人質に取られてしまってはどうしようもありません。その時はリンを犠牲にしてでも生き残らなければなりませんが、トーマの心に残るしこりがそれを許さないのです。おそらく、そうなってしまったら、その時は自分も死ぬ時なのでしょう。やれなくはないかもしれませんが、その可能性は低いです。
いろいろと長話になりましたが、最終的に警戒を怠るな、という話です。
索敵スキルを最大範囲で発動しながら、トーマはリンを支えて進んでいきます。
しばらくする内に、暴走特急列車が終点にたどり着き、リンは正気を取り戻しました。何やってんだ私と顔を赤らめますが、すぐに聞こうとしていたことを思い出し、話を切り出しました。
「あの、トーマさん?」
「……なに?」
「助けてくれたのは嬉しかったです、でも、トーマさんの実力なら最前線にいてもおかしくないとも思ったんです。……なんで、あそこにいたんですか?」
「……」
トーマが黙り込んだのを見て、リンは慌てて口を開きます。
「あ、嫌ならいいんですよ!? 過去を詮索するのはMMOの法度ですし……」
「別に、構わない」
少し目をすがめて、トーマは言いました。
「俺はフリーター。だから最前線にいない、だからあそこにいた」
「あ、……すいません」
「だから、構わない」
一度登場した単語、フリーター。フリーターとは、最前線で戦えるほどの実力を持ちながらも後方でクエストをこなし続ける者を指します。もとはあの掲示板から生まれたもので、自由に遊べることに対する羨望と、臆病者と罵る意味、そして現実世界でもそうやって逃げ続けているのだろうと蔑む意味を込めて、そう名づけたのです。その呼び名はすぐに広まり、レベルが高いプレイヤーが後方にいると、低レベルプレイヤーや物資の補充の為にマーケットへ来た高レベルプレイヤーなどがこぞって暴言を吐きかけるようになりました。盗賊とは真逆ではありますが、嫌われ者という点では似たもの同士という訳です。
意識せずとも、フリーターであると相手から言わせてしまったことに気まずくなってしまったリン。言葉を探しますが、何も思いつかず、なんとも薄っぺらな謝罪の言葉しか言えませんでした。
それを察したトーマは、話を変えるべく、自分も気になっていたことを切り出します。
「……リンは? リンは何故、あそこにいた?」
「何故……、ええっと、それはですね……」
リンは理由を話そうとしますが、ふと親友の顔を思い出してしまいました。あの消えゆく親友の笑顔、バイバイと言って儚くポリゴン片に散る親友を思い出して、体の震えが止まらなくなります。
地雷を踏んでしまったことを察し、トーマは顔を伏せました。
「……ごめん」
「……、いえ、いいんです。トーマさんも嫌なことを話してくれたんですし、私も話します」
そう言って、リンは空を見上げました。天候システムによって天気は毎日変わりますが、その時もこんな天気だったなあ、とリンは最早遠ざかってしまったあの日を思い出しました。
「私を助けて、死んでしまった子がいるんです。その子が死んじゃったのは全部私のせいで、自分が助けようとしてたのはただの思い込みで、エゴで、手伝っていると思ってやっていたのはただの邪魔で。その結果、その子は死んだ。それでも笑顔でした。笑って消えていくんです。悔しかった。自分にはその時、何もできなかった。しなかった。その子は強かったから、どんな目に遭っても笑って、私を守ってくれたから、それに甘えていました」
リンは少し間を置いて、トーマに問います。
「……『カナ』って子、ご存知ですか?」
「カナ……四英雄の?」
「はい。その子であってると思います」
トーマはあまり掲示板を使わないので知ったのは最近ですが、非常に好戦的で、どんな敵が来ても笑って立ち向かったと聞いていました。あとはその明るい、人好きのする笑顔と性格のよさから人気の高かったプレイヤー、というくらいしかトーマは知りませんでした。
「……」
「私が、私が弱かったから、ゲームに参加してる皆さんにさえ迷惑をかけ、何よりカナちゃんを殺してしまったんです。だから私は強くなろうと、無謀とはわかってましたが、強い敵と戦ってレベリングをしようとしていました。カナちゃんが使ってた短剣を受け継いで。ですが、やっぱり私は弱かった。いろんなモンスターにターゲットされて、逃げ回って、もうダメだ、ってなった時、トーマさんが来たんです」
「……ごめん」
「え、何がですか?」
「……辛いこと、聞いちゃって」
辛そうに揺れるトーマの瞳を見て、リンは重苦しい雰囲気にしてしまったことに気付き、手のひらを胸の前でブンブンと振りました。
「い、いえいえ! 私が馬鹿だっただけで、トーマさんは私を助けてくれたんですよ!? 何も悪いことしてませんから!」
「……でも、訂正」
「?」
リンは首を傾げます。トーマは目を合わせずに口を開きました。
「大事なのは、そのあと。リンは戦った。怯えて行動できないより、フリーターの俺より、何倍もマシ。だから、戦ったこと、敵に挑んだこと。全部誇りに思っていい。だから、落ち込まなくていい」
「リンは、弱くない」
「トーマ、さん……」
リンは涙腺が熱くなるのを感じました。
たった一人だけで今まで戦ってきた、たくさん怖い思いも、寂しい思いも、辛い思いもしました。でもそれが認められた、無駄ではなかった。それがわかっただけで、涙が溢れそうになりました。
しかしトーマは釘を刺すことを忘れません。
「でも、体力割譲は、禁止。死にたがりと強さは別」
「……肝ニ命ジマス」
そう言って、リンは苦笑気味に笑いました。トーマも、まんざらでもない表情をしています。少し距離があった雰囲気から和やかな空気に変わり、リンはさらに笑みを深めました。
何より、過去に後ろめたい何かを抱えた同士、シンパシーのようなものを感じたのでしょう。二人は心地よいぬるま湯の中にいるような気分になりました。傷を舐め合い共に立ち上がる子犬のように、弱いところは隠しながらも、確かに絆のような物が芽生えたような気がしました。
足取り軽く向かう先には『グングニル』キャンプが。その距離はもう既に目と鼻の先です。二人はペースを上げて、キャンプに向かいました。
そんな二人に、
(っ!)
トーマは視界を動く動体を発見する。それは間違いなく、自分たちの方向に向かっていた。トーマはふとももに付けている投げナイフを咄嗟につかみ、コースを予測し投げかける。
きぃん、と甲高い音が鳴り、火花が舞い散る。僅かに音を立てて落ちる二つの影。単なる見間違いでないということは、確かな敵意を持ってこちらに投げた第三者がいるということ。トーマは周りを警戒しながら、投げられた物を確認した。
そんな二人に投げられたそれは、
「……ナイフ」
自分の型と同じ、投擲用のナイフだった。
いきなり最後に書き方を変えたのは、一気に状況が変化したことを表そうとしてみました。それだけです。
二人の過去に触れてみました。頑張って伏線を張ろうともがいているのがわかるかと思いますwwwwww
結晶世界も、ブラッド・オペラも、どちらも頑張っていきますので、どうぞよろしくです!