プロローグ
どうもwwww
やっちゃった感wwww満載wwwww
ですが、始めたからには頑張ろうと思います。
プロローグなので、主人公は微妙にしかでてきません
走る。
夜闇に覆われた森の中を走る、一つの人影。
月明かりに照らされ輝く髪はポニーテールに結い上げられており、走るリズムに合わせて右に、左に揺れる。夜空に躍る影の線は細く、その主が年端もいかない少女であることが伺えた。
少女が纏っているのは、動物の革を鞣し、金属の鋲でつないだ、いわゆるレザーアーマーと呼ばれる物だ。それをベルトでつなぎ、ツナギのようにした、動きやすい軽装である。
しかし何より目立つのは、ベルトに引っ掛けられている短剣である。揺れるたびにカチャカチャと音を立てるそれはあまりに大きく、あまりに分厚く、単純に言ってしまうと、少女に釣り合う物ではなかった。
「はっ……はぁっ、はっ!」
荒い息遣いが、嫌に静かな森に響く。反響し、増大し、何人もの人間が追ってきているような錯覚を覚える。
疲労がピークに近づいてきているのか、少女は時々足をもつれさせて、木にもたれかかり息を整える場面が増えてきた。それでも、少女は止まらない。ふらりふらりと体をぐらつかせながらも、走り続ける。止まらない。止まれない。止まれないのだ。
なぜなら、後ろから聞こえてくる甲高い音が、少女を突き動かしているから。
(近づいてきてる……!?)
少女は、音源が確かに近づいてきていることに気がついた。相手は疲れて減速することもなければ、加速することもない。なぜなら相手はプログラムであり、意志のない作り物。ただ獲物を追うようにプログラミングされた幻想の化物。
つまり、自分のスピードが落ちているということだ。
スピードを戻すため、少女は必死に足を動かす。しかし、柔らかい土や、時々地面から顔を出す木の根は、少女の集中力と体力を奪っていく。
終わりは近い。おそらく、自分の敗北という結末で。少女もそれをは既に悟っていた。かと言って、諦められるわけもない。
命が懸かっているのだ。簡単に諦められるものか。
勝手に浮かんでくる涙を振り切るように、少女は歯を食いしばり、うつむいて、足を大きく踏み出した。
生き残りたい。
その思いだけで、少女は疲労に震える足にムチを打ち、ギアを一段あげようとした。
しかしそれが、今回は仇になってしまった。
一瞬の浮遊感。衝撃。また訪れた長い浮遊感の後、視界が回って、回って、止まった。
なんという事もない。魔法や奇跡が積み重なったわけでもない。ただ、俯いたせいで前の穴ぼこを見逃し、虚空を踏み抜いて、体勢を崩してこけた(・・・)だけだ。物理法則に従って発生した結果であり、いたって普通のことだ。ただ、その普通は、一人の少女を絶望に突き落とすには十分な事象であった。
「あぐっ!? あぁ、うぁあ……!」
起き上がった少女の目の前には、川が流れていた。しかしただの川ではない、川にもモンスターが大量に徘徊している。水を吸い込む革素材の服を着た少女が川に飛び込めば、疲労が蓄積している上に動きづらい状態でモンスターに襲われることになる。……その結果は、火を見るよりも明らかだ。
(あっ、ど、どうすれば、まず逃げなきゃ、じゃあどこへ)
少女は着実に近づいてきている死の淵を幻視し、錯乱した。何をするべきなのかがわからない。考えられない。そうしている内にも、追う者の物音が近づいてくる。
追う者が鳴らしていた物音は、木々をなぎ倒す音だった。地響きと共に、木々が倒れ、ポリゴン片となって消えていく。そして、それは姿を現した。
芋虫。
それを形容するには、その言葉がぴったりだった。肌は白く、ブヨブヨとしていて、手足はない。ただ、異常なところを挙げるとするならば……その嫌悪感を掻き立てる巨体だろうか。
目測だけでその全長は3mを軽くオーバー。口元からは触手が伸び、舌なめずりするように動き回っている。キュッ、キュッという甲高い鳴き声が、さらに人の感覚を逆撫でする。だがしかし、それが今の少女にとっては恐怖をさらに助長させるものだった。視界に映った敵のステータス、名を『ファット・ロール』。
前門の虎、後門の狼。少女に逃げ場は残されていない。
「ひっ……!」
伸びた触手が少女の体を撫でた。そのまま舐めまわすように、少女の体を隅まで撫でる。そのぬめり気をおびた感触が自分を襲うたびに、少女は体を震わせる。
死の淵がもう足元まで近づいていた。その先は奈落、闇だけが広がっている。
「……えぐっ、い、嫌だ、死にたくないよ……まだ、死ねないのにぃ……!」
足はもう動かない。短剣を抜こうにも、レベルと筋力補正から持ち上げることも叶わない。使えるスキルはたった一つ、しかも戦闘用ではない。
戦うことも、逃げることも許されない。
その先に待っているのは死。実にシンプルだ。そして何より、人を恐怖させる絶対的な存在。
走馬灯のように、脳裏に突如ひらめいたのは、ポリゴン片になって消えていく一人の少女だった。自分を救い、もろく崩れた親友は、最後まで笑っていた。その思いを継いで、自分が戦おうと決めていたはずだった。
しかし、どうだ? 自分はその場から逃げることすらかなわず、護られた命さえも失おうとしている。最後まで戦った親友に比べ、自分はなんと弱い存在だろう。
「ごめん……ごめんね、カナちゃん……!」
情けなさに、また涙が溢れてくる。しかし拭う気力もなく、手を地面に着き、うなだれた。
そこへゆっくりと、死が、形を持った死が近づいてくる。
「……ッ!」
生体五感再生システムにより情報化された悪臭が鼻をつく。あの芋虫が大口を開けて近づいてきているのだ。
視界が暗くなる。月明かりが遮られ、少女の視界は完全な黒に染まった。
そして自分は芋虫に食いちぎられ、バラバラになり、ポリゴン片になって、意味を失う。最後に視界に映るのはGAMEOVERの文字――――
「……え?」
何も起きない。体も動く。四肢もちゃんと残っている。自分のステータスにも、部位欠損ペナルティを表す符号がない。
動けなかった自分に代わり、今はゆっくりと動いていたこの場の支配者が動かなくなっていた。ファット・ロールが時を止められたように動かなくなったのだ。
「……?」
バグか何かだろうか? 少女は口からなんとか抜け出し、様子を伺った。全く動かない。
手を叩いてみる。
ぱんぱん
なんとも気の抜けた音が森に響いた。しかし動かない。
「……おーい」
ぶんぶん
手を振ってみる。動かない。
「……?」
首をひねってしばらくする内に、状況にようやく頭が追いついてきて、
「や、やったあ! なんかわかんないけど、やったぁ! 生きてる! 私生きてるよカナちゃん!」
わーいわーい、と少女は両手をあげて飛び跳ねた。
こうして一人の少女の命は救われた。
ありがとう、バグ大先生……
「キュアッ、キョォアアアアアアアアア!」
しかし喜びもつかの間、止まっていたはずのファット・ロールが突如動きを再開した!
勝利の余韻を味わうような捕食ではない、邪魔の入らない内に捕食を済ませようとしているような、余裕のない様子で、猛スピードで少女に飛びかかる。
「えっ、ええええええええええええっ!?」
対した少女はあまりの急展開に仰天し、万歳のポーズのまま尻餅をついてしまった。
状況はまさかの逆戻り。絶体絶命の大ピンチ。
「だ、誰か助けてぇぇぇぇぇっぇぇぇっ!?!?」
あのまま死ぬことができれば、まだ諦めもついただろう。しかし、なんかこう、違う。こんな間の抜けた死に方は、できれば丁重にお断りしたかった。何より、死んだ親友にケラケラ笑われ、からかわれる未来が目に見えているからだ。
だんだんと近づいてくる口についにここまで、と顔を背けたその時。
「キョイッ――――――」
近づいてきていたはずのファット・ロールが、悲鳴を残して弾け飛んでいった。そして、そのままそれはカシャン、というはかない音を立ててポリゴン片となり、意味を無くして、空に溶けた。
「―――ほ、ほんとに、一体、何が……?」
どうやら、本当に生き残ったのは確からしい。それだけは、混乱のドツボに嵌った少女でもわかった。もはや笑いさえこみ上げてくるようなどんでん返しに、苦笑を隠せない少女。
そこでハッ、と気づいた。
「……ハッ! 止まったのはバグにしても、一体誰がぶっ飛ばしたんだろう!?」
バグでモンスターは吹き飛ばない。それはもう、バグを超えて物理エンジンの故障である。つまり、そこには当然人の手が介入されているはずだ。
少女は命の恩人に一目会おうと、ババッと擬音が付属しそうな勢いで周りを見回した。
その中で、木々に隠れて移動する黒ローブを着た人影を発見する。
「あっ、きっとあの人だ!」
少女は喜び、お礼をしようと一つ頷いて、その人影を追いかけるのだった。
少しずつ書いていこうと思います。
お付き合いくだされば幸いです
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