プロローグ3:説得
チュンチュン。
小鳥のさえずりで目をさます。学校へ行く支度をすると、1階に下り、リビングの椅子に座る。
「新は朝ごはんなにがいい?」
「ベーコンエッグトーストで。」
と母さんの問いかけに答える。
新聞を広げていると、
「おはよー、おにいちゃん。」
と眠そうな目をこすりながら、美園が下りてきた。
「おはよう」
と答えると、新聞の記事へと目を落とした。
『神天賦学園生徒大活躍!!』
9月3日未明、東京都新宿区でEvil Gifted Devilの構成員が職員3人を傷つけ、現金3600万円相当の現金を奪って逃走する事件が起きた。しかし、犯行グループは4日の深夜3時頃に神天賦学園の生徒と激戦を経て、神天賦学園の生徒がこれを鎮静化した。警視庁はこれに関わった生徒と学園に感謝状と楯、及びに金一封が送られた。当人は匿名希望をしているため名前は開示しない。
「新、できたわよ。」
と、皿に乗せた朝食を持ってきてくれる。
「あぁ。ありがとう母さん。」
ベーコンエッグトーストをかじりながら、新聞の内容を思い出していた。
やっぱり神天賦学園の生徒はすげぇなぁ。もし俺が入学できたら、俺の世界も大きく広がるのだろうか。
「そうだ、母さん。話があるんだ。」
と母さんの方へ向く。
「なぁに?」
「俺、神天賦学園へ行こうと思うんだ。」
「行こうと思うって・・・あんたgiftがないじゃないか。どうするんだい?」
「それは・・・まだ半年あるから、そこで開花するかもしれない。」
「あんたねぇ・・・そんな簡単に開花しないでしょ。」
俺がなぜ行きたいのかという今の思いを母さんに説明した。話し始めて30分くらいたっただろうか。
「・・・ふぅ。分かったわ。私は新が行きたいというなら、応援するわ。ただし、学力に問題がなくても100%入れるっていう保証はないんだから、私立の神椥高校も受けなさい。それが条件よ。」
「わかった。がんばるよ。じゃぁこの進路希望調査書にサインして。」
母さんがさらさらっとサインをした紙受け取る。
「じゃぁ学校行ってくるよ。」
学校につき、席につく。
授業が始まり、いつもの平凡なサイクルが始まる。
あぁ。ダルいな。と心の中でつぶやき、目の前にある半透明なウィンドウ群を眺める。
この現代では生まれるとすぐに脳の一部にICチップが埋め込まれる。これにより、一人一人の識別が行われ、住民登録から、様々な機能を有する。それに加え特殊なレンズを目に埋め込むことによってICチップと連動し、目の前に表示されるスクリーンを操ることができる。
神天賦高校のページを眺めている。
「あ、学園祭って今週末なんだ。行ってみるか。どんな所か見てみたいしな。」
そうこうしている内に、終業のベルがなり、俺は教員室に向かった。
コンコン。
「失礼します。3年A組、出席番号21番神宮新です。中谷先生に用事があり、きました。」
「あぁ、中谷先生ね。いるから入っていいよ。」
ドアをしめて、中谷先生の所まで歩いていく。
「おぉ。神宮か。持ってきたか?」
「はい。」
と言うと、調査書を渡す。
よしよし、と先生は受け取り、志望校を確認する。
「お前・・・神天賦学院って。本気で考えているのか?」
「はい。本気です。」
「第2志望の神椥高校は頑張れば行けそうな所にいるが・・・」
「giftはありませんが、まだ半年あります。まだ可能性がゼロというわけではないので、受けたいです。」
「しかしだなぁ・・・」
「親と決めました。神椥高校を受ける事を条件にされましたが・・・」
「そうか。親御さんと決めたなら何もいうまい。がんばれよ。神天賦学院は学力もかなり高くて、神椥高校並みだからな。」
「はい。」
出口へと向かい教員室を後にする。
これで、あとは勉強あるのみだな。
・・・giftは祈るしかないかな。
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