プロローグ2:目標
澄み渡る青い空。小鳥たちが楽しそうにさえずる姿を教室の窓から見ていると、
バシッ。
頭に軽い衝撃を覚える。衝撃を与えたであろう人物がいる方向を向いてみると、
「くぉらぁ、神宮!また、お前は外にばっか目をやって。少しは集中しようと思わんのか?」
「あ、すいません。」
ボーっとした目で担任の中谷先生に軽く謝罪をすると、
「はぁ。進路希望出してないのお前だけだぞ。どこに行くんだ?」
「はぁ・・・。入れればどこでもいいです。」
「あのなぁ、お前の成績は悪くないんだから、頑張れば私立のトップ校だっていけるんだぞ。少し考えてみないか?」
「はぁ・・・」
「まったく、やる気がまったく感じられんやっちゃな。明日までに進路希望調査書を持ってこいよ。」
「分かりました。」
先生が教壇に戻っていくのを見ていく。
俺は神宮新。中学校3年生の受験戦争真っ只中なわけだが、先ほども先生に言われたようにすべてにおいてやる気がない。なぜかというと、この今の世界の環境に起因するのだろう。この世界には
Gifter
能力を授かった人々
がいるからだ。何もしなくても能力を使うことで、仕事を得られて、何不自由なく生きている人たちがいる。その一方、俺ら一般の人々は仕事を得るため、勉学に励み、技能を磨き、それでも仕事を得られるか分からない。
進化してきた俺ら人類は、みな平等にgift発現の可能性を秘めていると言われている。しかし、本当に発現するかなんて分からない。
それなら、頑張って生きている意味なんかあるのだろうか。
そんな小さな希望を持って生活をしていく意味があるのだろうか。
俺はそんなことを考え少しため息をつくと、黒板の方に目をやった。
数刻後、チャイムがなり、教科書等をかばんに入れ、教室を後にする。家までの道のりは、自転車で20分程度である。音楽プレーヤーを身に着け家までの道のりボーっと自転車をこいでいると、街中には、浮遊しているもの、恐ろしく早いスピードで駆け抜けていくものなどgiftを授かった人たち、ギフターが自分たちの能力を駆使していた。
いいなぁ。と思わないこともない。能力があれば便利に過ごせそうだしな。などと考えていると、少女とすれ違った。すれ違った時に彼女の長い黒髪がなびいた。
新の時間が止まった。
自転車を止め、その場に呆けたようにしばらくたたずんだ。
後ろを振り返ると、その少女は神天賦学園の制服を着ていた。
正直家までの道のり、ほとんど何も覚えていない。
これが噂に聞く“一目惚れ”ってやつなのだろうか、と考えていると、
コンコン。
「おにいちゃん入るよー。」
と声がした。
声の主は、俺の妹である神宮美園である。美園は小学校3年生の時にgiftを発現して、神天賦学園へと転校していった。正直俺は自分の妹に少し劣等感を覚えていた。
「あ、あぁ。どうぞ。」
カチャ、っと部屋のドアを開け、そこには屈託のない笑顔をしている妹がいた。
「どうした?」
「えへへ、おにいちゃん。今度学園祭があるんだけど来ない?私、焼きそばつくるんだよ!」
神天賦学園の文化祭か・・・彼女いるかな。
「お前が焼きそば?料理できたんだな。」
ぶぅ。っと口を膨らませながら、
「焼きそばくらいできるよぉ!お湯を沸かして、その間にかやくをいれて・・・」
「インスタントかよ!」
「えへへ、冗談だよ。とにかくきてよね!」
と言い、部屋を出ていこうとする美園を呼び止める。
「美園。ちょっといいか?」
「ん?なに?」
「神天賦学園に入るにはどうすればいい?」
「!?え?いきなりどうしたの?」
「いや、今のままだと退屈でな。環境を変えたいと思ったんだ。」
美園はちょっと驚いたような顔をした。そして少し喜んだ顔になったかと思えば少し悲しそうな顔に変わる。
「んーっとね、神天賦学園はgiftに目覚めた人しか転入を認められてないってのと、いちよう、ある程度の進学校だから、勉強しないと入れないよ?」
「ふぅむ。勉強はなんとかなるかな・・・。ただgiftがな。」
「う~ん・・・でも、まだ9月だから、後半年あるからgiftが発現するかもしれないよ!」
妹の有り得ないだろうフォローにクスッと笑うと、
「ありがとう、美園。いちよう視野にいれてみるよ。」
「うん!・・・おにいちゃんが神天賦受かったら、美園うれしいな!」
と、ちょっと顔を赤くしながら部屋から出ていった。
「さてと、いちよう勉強をしておくかな。」
机に向かい、久しぶりに夜遅くまで勉強をした。
ご指摘よろしくお願いします。