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電脳魔術  作者: 青空白雲
3/4

最後の力

 二人の男子生徒は電子の世界へと呑み込まれる。

 地平線が見えるほど広い薄茶色のブロックで出来た舞台。

 逃げる所も隠れる所もない。純粋な力と力で勝敗が決する場所だ。

「負けたら、お前の魔具も貰ってやる!」

「俺が勝ったら、アイツらに謝罪してもらうからな!」

 睨む真也に対し、翔は冷笑を湛える姿勢を崩さない。

 低い、鐘のような電子音が唐突に鳴り響く。

「おおおおおおおおおッ!!」

 真也は一気に真横に飛ぶ。

 直後、真也の居た場所が炎に包まれた。

「ちっ、勘のいい野郎だ」

「はっ! 伊達に連敗記録を重ねてねーよ!!」

 九十九敗〇勝の真也は勘の良さと、逃げ回る速度にだけは自信があった。

 それに、今回は――

「最初っから、飛ばして行くぜえ!!」

 真也は掌に集中し、杖を呼び出す。

『A言語がバカな真也の為に、造ってあげた呪文なんだからシッカリ覚えてよ』

 香里奈の言葉を思い出す。

「鮮やかなる緑の閃光と共に現れろ!」

 鮮やかな緑色の〇と一の文字が掌の中で踊る。

 翔は驚いたように、真也の掌を見やる。

「日本語からA言語に訳すプログラムをレッドのヤツが……!?」

「紅!」

 緑の文字は一気に掌で凝縮され、木目調の杖が現れた。

 体内の内側から、透明な風が外側へと吹き荒ぶような感覚が訪れる。

 その風は力だと一瞬遅れて気がついた。

「すっげー! 何か、力がすげえ湧く!」

「いくら、魔具が凄くても、持ち主が弱ければ何の意味もないがな!」

 翔が床に手を置いた。

「何だ……?」

 瞬間、一気に空間の温度が下がり掌を中心に床が凍っていく。

 コレで足元を固めて身動きを取れなくする作戦だろう。 

 慌てず、杖を振るい、目の前まで迫ってきた氷を叩き、唯一実践レベルで使える魔術を使う。

 熱を放出する。

 ただそれだけの魔術が杖により増幅され、周りの氷が一瞬で気化した。

 一気に舞い上がる蒸気に真也の方が驚き、二三歩後退する。

「うはっ!?」

「バカすぎんだろお前」

 馬鹿にするような声が後ろから聞こえるが、真也はそれを無視する。

「おおおおおおおッ!!」

 真横に杖を振るい、影を叩く。

 圧倒的な熱量により、空気が膨張し空気を弾き飛ばす。

「くっ!?」

 顔を歪め、しかし人間なら一瞬で蒸発するであろう熱を持った杖を掌で掴み取る。

「変な所で、勘が良い野郎だ……!」

「嘘だろ!?」

 何であの速度で掴み取れるんだよ、と真也は愕然とする。

「甘いんだよレッドォ!!」

 全身から赤の閃光が迸り真也を吹き飛ばした。

「は……!?」

 真也は驚きより、まず先に疑問が頭を支配した。

 意味がわからない。

 閃光で人が何で吹き飛ぶんだ?

 コレが、レッドとブラックの差なのか?

 自然現象を扱うのが精一杯のレッドに対し、ブラックは異常現象すら起こせるのか。

「死ねよ、レッド!!」

 ふわりとした浮遊感の包まていた身体に、唐突な衝撃が走った。

「がっ!?」

 受身さえ、取る暇もなくブロックを包む氷に身体を叩きつけられる。

 氷は衝撃に耐え切れず、弾け飛ぶか、または砕けた。

 電脳空間でなければ、痛みで悶絶していただろう。

 体力が五千になっているのが、頭の片隅で分かる。

 今の一撃で約二千ものダメージを負っていた。

(ちっくしょう……勝てねえ……)

「諦めて、魔具を俺に渡しな」

 嘲笑するように、翔は言う。

「ふざけんじゃねえ! アイツの創ってくれたもんをやすやすと渡せるかよ!」

 氷を握り潰すほど、握り締める。

 こんな所で諦めて、いい訳がない。

「絶対負かす!!」

 身体全体のバネを使い、素早く起き上がり、猛獣のように飛び出した。

「力量差がわかんねーとは流石レッドだな!!」

「おおおおおおおおおおッッ!!」

 杖を振るう。

 それと同時に相手に向かって握り締めていた氷が投げた。

「コレが、最後だ!!」

 氷を、杖で限界まで高めた熱を当てる。

 そうすれば、水蒸気爆発が起こり二人共ダウンだ。

 しかし、杖は有り得ないことにピアノ線のような物を殴ったように手元に跳ね返ってきた。

「っ!?」

 氷は、無情にもブロックに落ちて崩れた。

「……俺の、線を防いだ……?」

 翔は愕然とした様子で、真也――否、真也の杖を見る。

「その魔具は何だ? 本当にレッドが創ったのか!?」

 翔の様子に面食らった真也は少し驚きながらも頷く。

「あ、ああ……当たり前だろ」

 強欲そうな笑みを浮かべ、翔は笑う。

「はっ、俄然欲しくなったぞ。その魔具が!!」

 飛び出してきた翔に真也は的を絞り、杖を思い切り振りかぶる用意をする。

「てめえの熱魔法なんざ、敵じゃねえんだよ!!」

「……」

 真也は必死でA言語を心の中で唱える。

(magic,gale,chant,waesz.kagunz)

 熱魔法。

 プラス――

「風ぇ!!」

 真也は杖を振った。

 真也は実践レベルの風魔法ではない、微風しか使えない。

 だが、杖が補助を果たし――爆風へと描き変わる!!

「万風放熱!!」

 熱と風が互いに互いを高め合い、うねりを上げながら翔の元へと駆け上がる。

 学校最強のレッドの元まで、翔んでいく。

 翔も攻撃に合わせて右手を思い切り、押し出した。

 掌の直前から、線が無より生み出される。

 その数、千。

 ピアノ線のような細い線は鉄より硬い。

「線状刻印!!」

 線は他の数々の線と混じり合い、悲鳴を上げながら真也へと襲いかかる。

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