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電脳魔術  作者: 青空白雲
2/4

三組

「あ、あった!!」

 香里奈はバッグの中からVRグラスを取り出した。

 VRグラスは電脳空間での戦いを見れるモノクルで、電脳空間に割り込んだり出来る代物ではない。

「意味ねえ!?」

「いいから、掛ける!」

 VRグラスを左目に思い切り押し付けられると世界が一瞬にして書き変わった。

『ST1323 アクセスOK?』

 VRグラスの縁にあるボタンを押し、決定する。

 更に空間が書き変わる。

 新緑の草が茂る春のように気持ちのいい景色が映し出された。

「っつ!?」

 そこにあったのは、狩人と獲物の姿だった。

「オイオイ、逃げ回ってんじゃねえよ!」

 狩人は苛立たし気に掌から、野球ボールほどある炎を創り出し、マシンガンのように鋭く放つ。

 秒間何発撃ったのか、それすらも分からないほどの圧倒的な物量と速度を獲物は後ろも見ないで盾を生成する。

「すっげえ!!」

 コレなら、逃げれる。

 真也がそう確信したが、次の瞬間それは驚愕に変わる。

 盾を凄まじい破壊力で、炎の玉を貫通し、獲物の背中を貫いた。

「っ……!?」

 空間は歪み、新緑の景色は幻想のように儚く消えていく。

 グラスを外し、目の前で対峙している二人を見る。

 獲物は精神的なショックからなのか、倒れて肩で息をしていた。

 よく見ると、「この世の絶望を見た」とでも言うような青白い顔をしている。

「どうだった?」

 香里奈が心配そうに訊いてきたが、そんな事を答えている暇はなかった。

「さっすが、翔さんだぜ!!」

「ホント、最高よ!!」

 取り巻きの男女がまるで、自分の手柄のように喜々として手を取り合う。

「おい、テメエの魔具、貰おうか」

 翔と呼ばれた男子生徒は鋭い射抜くような視線で獲物を見下す。

「ふざ、けんな。誰がテメエらなんかにやるかよ」

 獲物のパートナーの女子は助けを求めるように、周りを見回し、真也たちを見た。

 同時に真也は草垣を飛び越え、女子に駆け寄る。

「ちょっと真也!?」

 香里奈はビックリしたような声を上げて、草垣に苦戦しながらも真也に駆け寄ってくる。

 一足先に女子に駆け寄った真也は翔に注意を払いながら、訊く。

「コレ、どうしたんだよ?」

「この人が、私が造った魔具を寄越せって、無理やりバトルを始めて――」

 女子は批難するように、指を指し言う。

「ちょっと、あの人――ブラックじゃない!?」

「あ? ブラック?」

 香里奈が驚いたように言うのを、真也が問い返し、黒のネクタイを見た。

 ネクタイの色がこの学校では明暗を分ける。

 赤が最低。青が二番目。そして、黒が一番だ。

「何で、ブラックがブルーの魔具を欲しがるんだよ?」

「ふん、俺にはパートナーが居ないからな。一ヶ月後には大会も控えてる」

 翔が真也を鼻で笑い、言う。

「ネクタイをしていないところを見ると、お前はレッドだな?」

 翔は値踏みするように、真也を見てから冷笑した。

「ま、優勝なんてお前には関係のないことだろうがな」

 真也はその言葉に、沸騰しそうになる。

「ふ、ふざけんな! 俺だって優勝狙ってるっつーの!! ていうか、返してやれよ!」

「ぷーっ、レッドの屑が優勝だってよ! 翔さんに勝てる訳ねーだろ! お前はクラス大会でも目指してろよ!」

 ブラックの取り巻きである、ブルーの男女が見下すように笑う。

 翔は、少し苛立ったように言う。

「……優勝を狙う? なら、実力で取り返してみろ」

「ああ、いいぜ。やってやらあ!」

 真也の買い言葉に、香里奈が素早く反応する。

「ちょっと!? 真也が勝てる訳ないでしょ!?」

「やってみなきゃ、分かんねーよ。絶対勝ってやる! 魔術師には魔具が必要なんだよ。それを奪い取るなんて俺が許さねえ」

 犬歯を剥き出しにし、吠える真也に香里奈は諦めのため息を吐く。

「……あーもう! 分かったわよ」

 香里奈は成り行きを呆然と見守っていた男から、メットを取るとバッグからパソコンを取り出し、ケーブルを接続させた。

「……どうしたんだ?」

「真也が勝てるように、魔具を取り込んでる」

 むすっとしたように、香里奈はぶっきらぼうに答えながら、パソコンを操作する。

「え、マジで!? 魔具出来てたの!? もう、本当にいけずなんだからー!」

 パシパシと頭を叩き、喜びを露にする真也に香里奈は笑みを零しながらため息を吐く。

「言っとくけど、まだ試作段階だから、性能充分じゃないし、時間制限だってあるんだからね。分かった?」

「おう! 任せとけ!」

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