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肝試し

作者:

俺はいつもの六人のメンバーと話をしていた。


俺は中学二年生で名前は『遥』だ、女みたいな名前だが男だ。


部活には入らず、成績もそこそこだ。


季節は夏で、今日も暑いなぁ……………なんてボーっとしていたとき


「あの館の噂って知ってるか?」


と、言ってきたのは『拓真』だ。コイツは野球部ピッチャー、身長低め、少なくとも俺よりは低い。体育だけ〔5〕の奴だ。


「ああ、五年前に事件があった館だろ?」

コイツは『雄也』好きな番組がニュースらしく社会問題に詳しい、ただし知識は浅く広く、たまに使えない。


「まさか…肝試しとか言わない……よね?」


この少しビビり気味なのは『加奈』といって俺の幼馴染みだ。加奈は幼稚園から一緒で親同士も仲が良い、そして気が小さい。

「お、よくわかったな」


「えっ……本当に行く…の?」


「当たり前だろ」


この中で話題になっている館とは、俺らの地区にある古い館で、十数年前からあるらしく人は住んでいない。周りは蔦で覆われ入り口さえわからない、そんな館で五年前殺人事件があった。死者三名、犯人は未だに見つからない、そこに肝試しに行こうというのだから、加奈がビビるのも無理はない。


「てかあそこ、入り口が何処にあるかわかんねぇじゃん」


コイツは陸上部所属の『幸也』だ、足が速い。百メートル十二秒フラットとかいう奴、性格はあんまりよろしくない。しかも頭髪はワックス固定、あさ二十分かけるそうだ。走ったら崩れるだろ、その髪型。


「蔦とかきれば、正面の門から行けるっぽいよ?」


コイツは『和哉』だ、友達は俺らを含めPCのみ、そのかわり情報収集能力が高い、体力的に見れば使えない。情報屋をやっているらしい、どうせ拓真に頼まれて調べたんだろう。


「勿論、遥も行くだろ?」


俺に振るな。


「ねぇ……遥も…行くでしょ?」


そんな目で見るな。


「じゃあ加奈はどうするんだよ」


「私?……遥が行くなら」


「じゃあ行かね」


「何で…?行こうよ……?」



「おいそこの夫婦」


「歯を食いしばれ、糞ピッチャー」


「すいませんでした」


俺と加奈は中がよいからか一部の生徒から『夫婦』と呼ばれているのだ。


「この前学校の裏サイトで、お前と加奈の事でスレ立てしたら、スゲェ事になったぜ」


「ぶっ殺す、お前のPCもろとも」


「すいませんでした」


そして二つ目の土下座が完成する。


「マジで?」


「どのサイト?」


「……………貴様ら」


「「ちょ、まっ、ギャーーーー!」」


まったく……こんな奴らと、こんなテンションで肝試しに行くのだ。


不安だ……………。



放課後の校庭では、規則的な掛け声と荒々しい怒声が混じって響き渡る快活な光景が、毎日のように見られる。

部活動という概念に興味を持たない遥は、嫌味というよりは客観的にそう思った。


「遅いな・・・・・・」


部活動に勤しむ連中で飽和状態の校庭を眺めながら、彼は敷地の隅に威勢よく佇む桜の根に、沈み欠けた日を浴びて腰掛けていた。

時刻は午後五時半を回っている。遥がとある二人を待ち続け、かれこれ二時間は経過しようかというところだ。


「(ったく、加奈も雄也も和哉も、揃いに揃ってさっさと帰宅しやがって薄情者共め。何時

間も暑苦しい空気と光景に圧される俺の身にも、なってみろよ本当)」


暑苦しい光景というのはもちろん、彼の眼前に広がる土の敷地で一生懸命に汗を流す運動部の人間達である。正直、自分はあんな泥汗まみれになってまで運動しようとは思えない。やはり自分はインドア派なんだろうな、と文学少年(どちらかと言えば)である遥は小さく呟いた。

その時、校舎のスピーカーから聞き慣れた音楽が流れ始めた。部活の終了を示すチャイムである。この学校の部活動は全般的にこのチャイムと同時に終わることを義務づけられていて、それは遥の待ち人の所属する陸上部と野球部も例外ではない。


「鳴ったか・・・・・・。拓真も幸也も、忘れてなければ良いけどな・・・・・・」


そう言うと彼は静かに立ち上がり、本当の待ち合わせ場所である校門前へと歩を進めた。



待ち人が現れたのは、遥が校門に到着した数分後のことだった。


「悪いな、待ってもらって」

「あれ? お前一人かよ。他の奴等はどうした」


拓真、幸也が順に言葉を発する。遥は脱力した声で適当に声を返した。


「帰ったよ。「一人待ってれば充分だろ」とか友情の欠片も無い言葉を残してな」

「ははっ。お前相当に雑な扱い受けてんな。将来、加奈には尻に敷かれちまうかもしんねえぞ」

「アレの尻に敷かれるつもりは無い。というか将来的に結ばれる結末を勝手に作り出すんじゃねえよ」


高笑いする幸也を呆れた目で睨みながら、遥は溜息混じりに本題を切り出した。


「・・・・・・行くぞ。先に帰りやがった御三方が、加奈の家で待ってるしな」



加奈の家は大きい。やたらに大きい。

家が農家をやっていて、父親が地元の農協のお偉いさんとか何とか。加えて地区の大部分の地主ともなれば納得は出来るが、とにかくお金持ちなのだ。

大して遥の家は至極普通の一家なのだが、何故か加奈とは昔から仲が良い。きっかけや理由というよりは、相性と言う方が頷けるかもしれないが。

そしてそんな政治家の実家のような大豪邸の前に、拓真と幸也、そして遥は夕日を存分に浴びる道中を経て辿り付いた。学校とはさほど距離が無い為、時刻はまだ午後六時過ぎだ。


「・・・・・・相変わらずデカイな加奈ん家は。ま、打ち合わせをするには丁度良いか」


幸也の言った「打ち合わせ」とは、昼間に学校で話していた肝試しの件について。つまりはその為に遥は、湿気と熱気に包まれた学校で二人を待っていた訳だ。


「まあ広くて快適だし、その上茶菓子も出るし、打ち合わせには持ってこいだろうな。さっさと入ろうぜ。昔の家は夏でも涼しい造りになってるらしいし、加奈も雄也も和哉も、首を長くして待ってるだろうからさ」


拓真がそう言うと、三人は瓦屋根の屋敷へと冷気を求めて入っていった。


家に着いたといってもそう簡単に家の中に入れるわけではない。前に言ったが加奈の家は豪邸だ、庭を含めるとさらに広い。そしてそのだだっ広い庭には、加奈の母親が趣味でやっているガーデニングが敷いてある。わかりやすく言うと、遠い。門から玄関まで直線距離で五十メートル程度だが、ガーデニングのお陰で迂回するように道が出来ているため、二百メートル程度になるのだ。


「あぁ……あっつい……」

「まだ着かないのかよ…………」

「黙って歩け……」

「後五十メートル……………」


つらい、凄くつらい。インドア派で損した、だがアウトドア派になるつもりはないがな。


「やっと着いた………」

「早く入ろうぜ、死ぬ………」


「死ぬなら勝手に死んでろ……」


そして重たいドアを開ける、その無駄に彫刻が彫られているのは加奈の父親の趣味であろう、疲れてるせいか余計重く感じた。


「涼しいな……」

「い…生き返る」

「長かった………」


中は涼しかった、まだ玄関を入ってすぐだが涼しかった。中は広い、見た目どうりだが至極普通の家に住んでいる身としてはいつ入っても広く感じる。


「お、早かったな」

「お前ら汗ヤバいな」

「遥お疲れ様…中入って……」


「薄情な奴らめ」


俺はそう一言残して、加奈の部屋へと向かった。


女友達の部屋に男子が五人、そして家主の女子が一人。余所から見れば様々な誤解を受けそうな光景ではあったが、実質が健全な集会なのだから茶々を入れられる理由も無い。


「それで、肝試し? って言って良いのか判らんが、その打ち合わせをするって言っていたな・・・・・・で、拓真。具体的には?」


遥は四畳程の和室の内装(出入り口は障子。窓は硝子細工のような曇り窓)に堂々と設置された溶け込まないインテリアデスクを前に、そう切り出した。


「まあ、その辺の説明は和哉に任せるよ。和哉、頼んだ」

「りょーかい」


肝試しとやらの発案者である拓真は、投げられた質問をそのまま和哉へと受け流し、和哉も拒むこと無くそれを受け取る。挙動に違和感の無い所を見ると、どうやらこの二人は今回の件で、今日以前にも何らかの繋がりがあったようだ。もしかして拓真はこのPC狂に何かろくでもない事を吹き込まれたせいで、肝だめしなどという面倒なイベントを思いついたのだろうか?


「みんな、まずはこれを見て」


遥の無意味に等しい分析を余所に、和哉はいつの間にか取り出したPCの液晶画面に何かの図面のようなPDFを出力して机の上に丁寧に置いていた。その机を囲むように座っていた他の五人は詰める形で身を寄せ合い、プレゼンターの和哉から液晶画面に視線を移す。


「これって・・・・・・どこかの家の見取り図か? 形から見て、マンションやアパートメントの類じゃねえな」

「ああ。同形の図面が三つ、って事は一軒家か。それもかなり広い」

「さすが、幸也も遥も回転が速くて良いね。そう、これは肝試しの舞台である館。その正確な図面だよ。建築当初の物だから、恐らくは正しい情報だと思う」


和哉が皆に見せたのは、話題の中心にある五年前に殺人事件のあったという館の見取り図だった。打ち合わせの冒頭から情報収集専門の和哉が口を開いたのだから、このくらいの予想はしていたが、それの伴って遥の頭に無視出来ない疑問が生じる。


「・・・・・・おい和哉。念の為に聞いておくが、このPDF、どこで手に入れた?」

「ああ、それね。いくら検索してもあの館の詳しい情報が手に入らなくて面倒だったから、


不動産屋のサーバーをハックして図面ごと拝借させていただきました」

和哉の予想通り過ぎる答えに、遥は思わずうな垂れた。触法行為だの何だのと言う前に、そもそも個人情報を厳格に保護する不動産屋から容易くデータを盗み出す事など中学生の出来る芸当では無い。


「大丈夫だよ遥。台湾サーバー経由してるから、万が一盗み自体がバレても警察ごときじゃ僕には辿り付けない。前にも幾つかの大企業にサイバーテロ仕掛けてみたけど全くバレなかったしね」


胸を張って言い切る和哉。企業のメインサーバーさえも奪い取れるという事は、株の流れも企業の体制も殆ど操作できてしまうのだろう。コイツ一人居れば並の企業ぐらいは簡単に潰せるのでは無いだろうか。まあ、それはそれで重宝されそうな気もするのだが(完璧にハッキング出来るという事は、逆に言えばそれに対する完璧な防衛策を知っている事と同義であると言える)。

もはや善悪の垣根を飛び越えてしまったような同級生を前に、遥は一度頭を抱えてから、辛うじて路線を戻した。


「・・・・・・まあ、その辺は良い。今回は流そう。それで、この見取り図をどうするつもりだ?」

「そりゃあ、肝試しだしさ。ただ変な噂のある館を徘徊しても面白味が無いじゃん? だからこの図を元にルートを作成しようと思ってさ。特定のチェックポイントを周って証拠写真を撮っていくとか、そういうルールがあった方が雰囲気出ると思うし」

「・・・・・・まあ、そうだな。一理あるかもしれない。やるからには生半可にはしたくないからな」


この辺の決まり事や縛りについては、このグループの性格上確実に設定されていくだろうとは思っていたので、和哉が早々に話を進めてくれるのなら都合が良い。

遥や他の四人も、和哉に納得の代わりとして沈黙を差し出した。

それを受け取った和哉は小さく笑い、手品を披露するような滑りのある口調で囁く。




「さて、じゃあルールとか順序とかは後に回して・・・・・・、まずはルート、“決めておこうか?”」




その和哉の何て事ない一言は、遥に妙な違和感を与えた。


(・・・・・・なんだ、今の)


遥の他に気づいている人間はいない。拓真や雄也は冗談を交えながらルート作成を始めているし、加奈や幸也も特に変わった様子は無い。


(・・・・・・気のせい、か)


恐らくは自分だけが何かを無意識に異常と捉えてしまっただけだろう。遥はそう割り切り、順路作成に勤しむ拓真達に混ざっていった。



恐らく、この異常事態に気づけなかったのは人生で一位二位を争う大失敗だったのかもしれないと、後の遥は思い返す事になる。


「おい、どうした遥」


俺の顔色を伺った拓真が気にかけてきた、先程の和哉の一言で変に気に病んだせいか顔色が悪いらしい。


「大丈夫………遥?少し休む?」

「………俺は一旦帰るから詳細が決まったら誰か連絡してくれ」

「ほんとに大丈夫かよ」


「…………ああ」


そう残して、俺は加奈の家を後にした。皆は気にもしなかったが、あの裏があるような、それでいて俺にだけ気が付かせるような口調は、やはり何かある。そんな事を考えていたら自分の家に着いた。俺の家は加奈の家からそう離れていない、親は共働きなので今はいないだろう。


珍しく考え事をしたからか、頭痛が襲ってきた。時刻は午後六時半頃だ、今日はもう寝るか。俺は制服のままベッドの上に倒れ込んだ。





起きて時計を確認したところ時刻は午後十時を回っていた、頭痛はもう引いて体も軽かった。和哉の事はまだ気になるが一旦忘れよう。俺は携帯を開きメールが来てないか確認した、メールは五件届いていた。一件は加奈だ肝試しの詳細が決まったらしく、それを送ってきたみたいだ。こちらは長文なので後回しにする、もう三件は和哉以外のメンバーからだった。そして最後に『和哉』のメールを確認する。


『頭痛はもう引いた?』


ゾッとした。他の奴らは皆『頭痛』なんてワードは出てこないでただ『大丈夫か?』程度のメールに対して、コイツだけは俺の症状を知っていた。


俺がメールを凝視しながら立ち尽くしていたら


「遥?起きたの?」


と下から母親の声がした。寝ている間に帰ってきたのだろう、肝試しの詳細と和哉のメールは後回しにして、俺は一階に降りていった。


翌日。天気、晴れ。学校。昼休みにて。


「結局、まともに寝られなかったな・・・・・・」


遥は教室で溜息を吐いていた。昨日の頭を金槌で内側から叩かれるような痛みは引いたが、それでも何か腑に落ちない感情を抱えたままである。


「そういえば、加奈のメールまだ見てないな」


肝試しの詳細が決まったとのメールが昨夜の時点で遥の携帯には届いていたが、まだ見ていない。頭痛が尾を引いている事もあり、見る気にならない、というほうが正しいだろうが。

さて、こんな素晴らしい快晴の下だというのに、何故モヤモヤした何かを捨てきれないのかも、何故気分が乗らないのかも、原因は全て分かっている。

そう、原因は・・・・・・、


「遥、体調良くなった? 心配したんだよ」


その時、ちょうど諸悪の根源である和哉が声をかけてきた。心配した? 安心しろ、お前のせいだ。


「・・・・・・大丈夫だ。体調は、な。それよりも和哉。少し聞きたい事があるんだが」


もちろん昨日の件だ。遥が頭痛の被害を受けていた事は、遥以外が知るはずがないのだから。


「お前、どうして昨日俺が頭痛だって「遥はどうして気が付かないの?」


・・・・・・いきなり、和哉に言葉を重ねられた。人の話を聞かないのはいつもの事だが、ここまで露骨に遥の言動が潰されたのは始めてだ。見れば和哉は少し動揺する遥を眺めて薄く笑顔を浮かべている。つくづく思うが、和哉は少し気持ちが悪い。


「・・・・・・何に、気がつかないって?」


遥は反射的に言葉を返す。社交辞令、という名目でもあったのだが、今は和哉の言動に素直に興味を持っただけだ。

対する和哉は特に変わった様子もなく、話題をすり替えるように質問を返した。


「遥は僕が情報屋をやっているのは知っているよね?」

「・・・・・・ああ、まあな。稼いでいるかは知らんが」

「近年は情報社会に成りつつあるし、売れ行きは上々だけどね。で、本題に戻るけど僕は情報屋だ。だから『干渉するより傍観する側に徹して居たいんだよね』」

「干渉・・・傍観・・・? なにを言っているんだお前は」


遥が眉を顰めて聞き返した途端、和哉はネジが外れたように大笑いし始めた。そして嘲笑いように遥を見た後、人差し指を遥に突きつけ言い放つ。


「本当に気が付いていないのか遥? “君の愛しい愛しい幼馴染の顕著な異変に”」

「はっ・・・・・・?」

「ハハハ、これは傑作だね。まあ、遥聞いてよ。例えばさ。遥が昨日訪れた加奈の家。そこであの幼馴染の娘に丁寧に差し出されたお茶と茶菓子。『あれは本当に単なる茶菓子だったかい』?」

「・・・・・・おい、待て、それはどういう・・・・・・っ!!?」

「直接見ても聞いてもいないけど、遥は昨日の夜は頭痛に悩まされたよね? それは単なる体調不良なのかな?」

「・・・・・・・・・・・・!!?」


それだけ言うと、和哉は遥に背を向け、そのまま教室の戸をくぐって廊下へと出て行く。遥は絶句したまま和哉の肩を掴もうと追いかけるが、和哉は滑らかな動作でそれを避け、廊下の人ごみへと煙のように消えていった。

教室の入り口に一人残された遥は呆然としながらも、ふと自分の携帯電話が揺れているのに気がつく。

表向きでは校則違反である携帯電話の画面を遥は慌てて開き、そのバイブがメール着信の揺れであると判った。

差出人の欄には『藍崎 和哉』の文字。


————————————————————————————


件名:なし

本文:

肝試し、来てね

そうすれば遥の知りたい事は全部分かるから


————————————————————————————


「………………………」

俺は絶句していた、この状態を先生に見られれば呼び出しは確実だがそんなことを気にしてる余裕は皆無であった。唐突に俺の肩に手が置かれた、相当驚いて跳ねそうになっだが抑えて振り向いた。


「おい、大丈夫かよ顔色わりぃぞ」

「あ…あぁ……」


幸也だった、心臓に悪い…………。


「どうした?」

「ぃ…いや何でもない、肝試し行く」

「え…あぁ、っておい………」


幸也がなんか言っていたがスルーだ、病み上がりだからか、はたまた和哉のせいか、和哉だな。気持ち悪い。屋上行くか……。

屋上は本来なら立ち入り禁止だが柵を乗り越えて、ドアの鍵はいつか和哉が開けた。

屋上に出ると風があるから夏にしてみれば涼しい方だった、今は昼休みだからゆっくりできる。どのくらい時間がたったからわからないが後ろの扉が開いた。この遠慮がちな開け方は加奈だ、開け方でわかる。


「やっぱり……ここだった…」

「なぁ」「ん?」

「お前あのときの茶菓子に何かしたか?」「お茶菓子……?」

「いや…知らないなら良い」


やはり和哉か、加奈ではないか。アイツが何を目的にこの肝試しをセッティングしたのは知る必要がある、それが危険を及ぼすものなら尚更だ。アイツに何か思惑があることは知ってる。


「遥……………?」


ただ、この手を伸ばせば届くような距離がアイツのせいで二度と手の届かない距離になることはまだ知らない。

中2

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