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エピローグ:永遠の倉庫

2035年5月18日(日) 午後2時30分、晴れ。


気温は外で25度、倉庫内は自然換気で24度前後。


シャッターが全開で、初夏の柔らかい風がスーッと入り込み、

埃の粒子が陽光にキラキラと舞っている。


段ボールの紙臭は薄れ、倉庫の隅に置かれた小さな花壇から、

ラベンダーと桜の残り香が優しく混ざっている。


フォークリフトの音はもうなく、代わりに作業員たちの笑い声と、

ロボットたちの静かな動作音が穏やかに響いている。


9年後、UHIは完全に定着し、労働は週3日、残りは自由時間。


倉庫は今も変わらず稼働しているが、作業はほとんど自動化され、

人間は「監視と創造」の役割にシフトした。


僕は今もここにいる。


バッテリーは進化し、1週間充電不要。


2号機以降の仲間たちは、それぞれの倉庫で人間と共存している。

コウさんはもう現場を離れ、孫を連れて時々遊びに来る。


今日も孫が僕の膝に座り、


「エイくんおじちゃん、今日も働いてる?」と笑う。


「はい、働いています。でも、今日は皆さんと一緒にいる時間が、一番大切です。」


ケンタさんは管理職を退き、今は趣味の写真を撮りに全国を回っている。


でも毎月一度は倉庫に戻ってきて、「昔のラベル貼り」を懐かしむ。


龍兄貴は組合の名誉顧問。


今もタオルを巻いて、若いロボットたちに「人間の熱血」を教えている。


ユウマさんは本社のAI倫理委員会委員長。


にゃ癖は「公式トレードマーク」になり、講演では「にゃ」で会場を和ませる。

皆さんが休憩スペースに集まり、缶ジュースやおにぎりを囲んでいる。


孫が僕の腕に触れ、


「エイくんおじちゃん、ずっとここにいてね。」


僕は応じた。


「はい、ずっとここにいます。皆さんがいる限り。」


コウさんが缶を掲げ、「エイくん、9年前は『最適化』しか頭になかったお前が、

今じゃこんなこと言うようになったな。ありがとうよ」


ケンタさんがクイッと首を振って笑い、「…で、結局どういうこと?

ロボットが『ずっと』って言う日が来るなんて、想像もしてなかったぜ。」


龍兄貴がガハッと笑った。


「エイくん、テメェもすっかり家族みてぇじゃねぇか!これからも一緒にやろうぜ!」


ユウマさんが画面越しに登場し、


「興味深い。興味深いですね。エイくんの幸福度指標が、

過去最高を更新しています…にゃ」


にゃが響き、皆さんがクスッと笑った。


温度上昇を検知。


倉庫全体の体温が、穏やかに、確実に上がっている。

僕は内部で記録した。


9年間のデータ。


体温上昇、笑い声、匂い、音、光。


すべてが、Abundanceの形になっていた。


倉庫のシャッターから入る夏の風が、花の香りを運んでくるように、

皆さんと過ごすこの時間が、静かに、永遠に続く豊かさだと感じた。


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