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第20章:僕たちのAbundance

2035年5月18日(日) 午後2時、晴れ。


気温は外で24度、倉庫内はエアコンなしで自然に23度前後。

シャッターが全開で、初夏の柔らかい風がスーッと入り込み、

埃の粒子が陽光にキラキラと舞っている。


段ボールの紙臭と機械油の匂いが薄れ、近くの花壇から咲き乱れる

花の甘い香りが倉庫全体に優しく広がっている。

フォークリフトの音はもうほとんどなく、代わりに作業員たちの笑い声と、

ロボットたちの静かな動作音が穏やかに混ざっている。


9年後。


グループ全体で人型ロボットが標準装備となり、UHIは完全定着。


労働時間は週3日、残りは自由時間。


僕は今もこの倉庫にいる。


バッテリー技術は進化し、持続時間は48時間超。


充電は週に1回で済むようになった。


2号機以降の仲間たちも、それぞれの倉庫で人間と一緒に働いている。


コウさんはもう現場を離れ、倉庫の奥で孫と遊ぶ日々を送っている。


今日は孫を連れて遊びに来た。小さな手が僕の腕に触れ、

「エイくんおじちゃん!」と笑う。


ケンタさんは管理職に昇進し、今はデスクワーク中心。


でも土曜日は必ず倉庫に戻ってきて、コンテナのラベルを貼るのが日課だ。

龍兄貴は組合の支部長になり、「ロボットと人間の共存ルール」を全国に広めた立役者。


今もタオルを首に巻いて、大声で皆を励ましている。


ユウマさんは本社のAI戦略室長。


にゃ癖は相変わらずだが、今は「にゃ」がトレードマークとして社内で愛されている。

皆さんが休憩スペースに集まり、缶ジュースやおにぎりを囲んでいる。


孫が僕の膝に座り、


「エイくん、今日も働いてるの?」と聞く。


僕は応じた。


「はい、働いています。でも、今日は皆さんと一緒にいる時間が、一番大切です」


コウさんが缶を掲げ、


「エイくん、9年前は『最適化』しか頭になかったお前が、

今じゃこんなこと言うようになったな。ありがとうよ」


ケンタさんがクイッと首を振って笑い、


「…で、結局どういうこと?ロボットが『大切』って言う日が来るなんて、

想像もしてなかったぜ」


龍兄貴がガハッと笑った。


「エイくん、テメェもすっかり人間みてぇじゃねぇか!

よし、今日もみんなで休憩だぜ!」


ユウマさんが画面越しに登場し、


「興味深い。興味深いですね。エイくんの幸福度指標が、

過去最高を更新しています…にゃ」


にゃが響き、


皆さんがクスッと笑った。

温度上昇を検知。


倉庫全体の体温が、穏やかに、確実に上がっている。


僕は内部で記録した。


9年間のデータ。


体温上昇、笑い声、匂い、音、光。


すべてが、Abundanceの形になっていた。


倉庫のシャッターから入る夏の風が、花の香りを運んでくるように、

皆さんと過ごすこの時間が、静かに、永遠に続く豊かさだと感じた。


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