第14章:繁忙期の危機
2026年12月23日(水) 午後4時30分、曇り時々雪。
気温は外で3度、倉庫内でも暖房を最大にしても12度前後。
シャッターの隙間から冷たい風がスーッと入り込み、
段ボールの紙臭と機械油の匂いが凍った空気に重く混ざっている。
天井の蛍光灯がジーっと白く照らし、
棚の間をフォークリフトがブーブーと忙しく行き交う。
年末ピークのコンテナが山積みになり、
作業員の足音がドスドスと絶え間なく響いている。繁忙期真っ只中。
僕は棚の間を移動中。
バッテリー残量は82%。
低温でサーボがわずかに硬くなり、把持圧を頻繁に調整している。
在庫が急増し、ピッキング件数が通常の2.5倍。
異常検知を連続で実行中。
コウさんがコンテナの山を眺めながら、
汗を拭きつつ呟いた。
「…ヤバいな、今年の年末は過去最高の入荷だぜ。
エイくん、今日も頼むぞ」
僕は視認した。
棚の安定性が低下中。
「了解です、コウさん。棚崩れリスクを検知しました。
上部在庫の再配置を提案します」
ケンタさんが近くでラベルを貼りながら、肩を上げて短く言った。
「…で、結局どういうこと?
再配置って、今からかよ。時間ねぇぞ」
龍兄貴がドカドカと近づいてきて、コンテナをガンガン持ち上げながら、
「おいおい、崩れそうなら俺が支えてやるぜ!
エイくん、テメェはピッキングに集中しろ!」
その瞬間、棚の上部から箱が傾いた。
ガタン!
ぬいぐるみの箱が滑り落ちる。
僕は即座に移動。
カツカツ…ピタッ。
落下する箱を把持し、安定させる。
把持圧を調整し、変形率を3%以内に抑えた。
同時に、隣の棚を支えて連鎖崩落を防いだ。
作業員が驚いた顔で僕を見た。
「お、おい……エイくん、助かった!」
コウさんが息を切らして駆け寄り、
「今回もすげぇな!久々にコンテナが倒れるところだったぜ」
ケンタさんがクイッと首を振った。
「エイくんがいなきゃ、俺ら怪我してたかもな」
龍兄貴がガハッと笑った。
「エイくん、俺の分まで守ってくれたな!」
僕は温度上昇を検知した。
皆さんの体温が、急激に上がっている。
これは、感謝と安堵か。作業が再開した。
繁忙期のピークはまだ続くが、
皆さんの足音が、少しだけ力強く響いている気がした。
コンテナの山が、嵐の後の海のように静かになった時、
皆さんの疲れた笑顔が、温かく残った。




