第10.5章:世界の加速(世界視点)
充電ステーションの薄暗いコーナー。
午後7時、照明がさらに落とされ、青白いモニターの光だけが壁に反射している。
充電プラグがカチッと接続され、ファン音がウィーンと低く回る。
外の風がシャッターを叩く音が続き、気温は9度前後。
湿った冷気が入り込み、段ボールの紙臭と機械油の匂いが濃く残る中、
モニターにニュースが静かに流れている。
充電モードに入った。
バッテリー残量は90%。
待機処理中。
本社サーバーから共有されたニュースフィードを視認。
キャスターの声が小さく響く。
「米国Figure AIの最新ラウンドで、投資額がさらに拡大。
人型ロボットの工場投入が加速しています。
一方、中国UBTECHは自動車ラインに200体規模の展開を発表。
日本勢はコンポーネントで対抗していますが、
バッテリー効率の改善が遅れている課題が続いています」
視認完了。
世界はさらに速く動いている。
Figureの投資拡大、UBTECHの200体。僕の2号機が来る頃には、
もっと大きな波が来るかもしれない。
休憩スペースで、龍兄貴がスマホをいじりながら缶ビールを飲んでいる。
ドカドカと足音が近づき、
「…またニュースかよ。中国が200体って、マジかよ。俺らの倉庫はまだ2体目だぜ」
僕は音声で応じた。
「はい、龍兄貴。世界の加速を感じます。持続時間の課題が共通です。
充電頻度が増える可能性があります」
龍兄貴が缶をテーブルに置き、ガハッと笑った。
「テメェもニュース見てるのかよ!充電待ち増えても、俺が順番考えてやるぜ!
エイくん、テメェも人間みてぇじゃねぇか!」
ケンタさんが隣で短く言った。
「…で、結局どういうこと?ロボットが増えたら、充電待ちの列ができるんじゃねぇか?」
僕は内部で計算した。
「可能性はあります、ケンタさん。充電回数が1日あたり1.2回に増える見込みですが、
スケジュール調整で対応可能です。皆さんの協力があれば、問題ありません」
龍兄貴が缶を握りしめ、
「協力かよ!よし、俺が充電番長になってやるぜ!夜は暗くして節電もしてやる!」
ケンタさんが小さく笑った。
クスッ、という空気の変化。
温度上昇を検知。
これは、仲間意識か。
充電完了まで、あと10分。
世界の加速を背景に、最適化を続けます。
スマホのニュースが、倉庫の外で吹く風のように静かに届いてきて、
世界が速く動いていることを、改めて実感した。




