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第10章:全社最適化の第一歩

2026年1月23日(木) 午前10時、晴れ。

気温は外で10度、内部で18度前後。全社最適化の初回ミーティング。


僕は充電ステーションの近くで待機し、


音声出力で参加中。


バッテリー残量は95%。


グループ全体のデータ共有基盤が、今日からテスト運用開始。

画面にユウマさんが映っている。


前かがみ気味で、タブレットをカチカチと操作しながら、早口で話す。


「興味深い。興味深いですね。

今日からロボット間データ共有をスタートします。

倉庫のピッキングログ、在庫回転率、異常発生率を匿名化して共有。

これで全社最適化の第一歩です…にゃ」


最後の「にゃ」が漏れた。


ユウマさんが一瞬固まり、


「…にゃ、は癖です。気にしないでください」


コウさんが画面を見て、笑った。


「おいユウマさん、またにゃって言ったぞ。可愛い癖だな」


ケンタさんがコーヒーカップをテーブルに置き、短く息を吐いた。


「…で、結局どういうこと?データ共有って、

俺らの仕事が全部ロボットに知られるんじゃねぇか?」


ユウマさんがタブレットを強く握り、


「興味深い質問です。共有するのは差分データのみで、個人情報は匿名化されます。

これにより、在庫補充の優先順位を全社レベルで最適化できます。

ROI試算では、全体効率が15%向上の見込みです」


僕は音声で応じた。


「了解です、ユウマさん。私のログを共有します。

ピッキング距離平均9.1メートル、把持失敗率0.8%。

異常検知時の報告フローも共有可能です」


龍兄貴が休憩スペースに入ってきて、


ドカドカと足音を響かせ、画面に顔を近づけた。


「おいおい、データ共有かよ!エイくんの仕事が他の工場にバレるってことか?

テメェら、俺らの倉庫をモデルケースにすんじゃねぇよ!」


ユウマさんが早口で答えた。


「興味深い意見です。モデルケースとして最適です。

充電スケジュールを全社で調整すれば、運用コストも抑えられます。

ただ…充電頻度が増える可能性はあります」


コウさんが缶コーヒーを開け、


「充電頻度か…。バッテリー短いってニュースで見たよな。

エイくん、お前も充電待ち増えるんじゃねぇか?」


僕は内部で計算した。


「可能性はあります、コウさん。現在の持続時間は7時間前後。

充電回数が1日あたり1.2回に増える見込みですが、生産性向上分で回収可能です。

皆さんの協力があれば、問題ありません」


ケンタさんが小さく笑った。


「…まぁ、そういうことか。ロボットが電力の心配までしてんのかよ」


龍兄貴がガハッと笑った。


「エイくん、テメェも人間みてぇじゃねぇか!よし、俺が節電リーダーになってやるぜ!

照明落として、夜は暗くしてやる!」


ユウマさんがタブレットを閉じ、少し前かがみになって言った。


「興味深い。興味深いですね。皆さんの協力で、全社最適化が進みます。

エイくん、君のログをバックアップしておきます…にゃ。

ありがとう」


僕は温度上昇を検知した。


ユウマさんの体温が、わずかに上がっている。

これは、感謝か。


会議が終了した。


画面が暗くなり、休憩スペースの空気が少しだけ広がった気がした。

ユウマさんの声が、遠くの電話の残響のように、静かに耳に残っている。


会議画面に映る皆さんの顔が、遠くの街灯がぽつぽつ灯り始める夜景のように、

少しずつ繋がっていくのを感じて、未来が近づいている気がした。


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