94.頑張ります
翌朝、竜真達はギルドに居た。ギルドでイナザの冒険者登録し竜真は一人数字持ちの依頼ファイルを覗き、シン、ロイ、バレイラはランクAの掲示板を見ていた。
イナザはと言うとランクEを眺めさせられていた。
「草刈り、買い物代行……自分でやれ。家事手伝い、薬草採集……」
ランクEで出来る仕事をするようにと言われ、まだ納得できない部分が多々あるもののイナザは竜真が怖いので指示に従っている。
「イナザさん、決りました?」
「シンだったか……」
「シンで合ってますよ。もしEでもの足りなければDも探してみたらどうですか?Dなら討伐系も少しあるみたいだし」
「いや、Eでとあの男に指示されているから勝手はできん」
意外にも融通が効かないことにシンが驚いていると竜真がフラり現れた。
「シン、任せた」
「任せたってリウマさん!」
焦ったしないシンが名前を呼べば、肩を竦めて鼻で笑う竜真が少し機嫌が悪そうに答える。
「王都のくせに数字持ちが今居ないらしい。2ndの依頼が二件もあんの。僕はとりあえず一件を片付けるから……予想的には五日はかかるかな。イナザに世の中を知ってほしいからシンに任せたいんだ。ロイとバレイラには少し荷が重いからね」
竜真の不機嫌の原因である王都のくせに数字持ちが居ないことがわかり、シンもすんなりと了承した。
「リウマさん……わかりました。ロイとバレイラは依頼を受けたんで俺はイナザさんと行動します。リウマさんは手伝いいりませんか?」
シンの気遣いに竜真はシンの頭を撫でた。誉める時に頭を撫でるくせがあると知っているシンは嬉しくなり満面の笑みを浮かべた。
「ん。僕の方は大丈夫だよ……そうだ。もし王都で僕を見かけても話しかけないように二人にも伝えてくれる?」
「はい。わかりました。イナザさん、Dランクまでの二人で出来る依頼を探してください。俺はロイとバレイラに話をしてきます」
シンがロイとバレイラのもとに向かうと竜真はイナザの方へと顔を向ける。覆面の奥で口角が上がるのを見てしまいイナザは目を泳がせた。
「Eの仕事は基本的に子ども達のおこづかい稼ぎなんだ。でもその分、民達の生活に密着しているとも言える。……僕は行くから三人に迷惑かけないでよ?」
「あぁ」
シンがロイとバレイラを連れてきた時には既に竜真がギルドを離れていた後だった。これにロイとバレイラがヘソを曲げたが、シンが頑張り二人を依頼へ向かわす。
「で、どれにするか決めた?」
「……これだ」と差し出された依頼書をシンが受け取る。
「三日間家事代行……イナザさん料理出来る?」とシンはふと気が付いたことを聞いてみる。
「家事に料理も入るのか?」と聞き返してくるのに王子様にしたって世間知らず過ぎると心の中で絶叫するシンは軽くハハっと笑う。
「まぁ……うん……二人でってなるとEなら仕事ないし仕方ないか……イナザさん、三日間よろしくお願いします」
「迷惑をかけるかもしれん」
「誰でも通る道ですよ」
もうこれは一からってことですよね?と心の中で竜真に語り掛けてシンは依頼を受けるべくイナザを連れて受付へと向かうのだった。
あれ……シンてこんなにいい子だった?