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1stのリウマ  作者: 真咲静
住処は確保してあります。
90/113

90.お好みは?

「さあ、これが最後の一本だ。こい!バレイラ!」


「ふっ!」


 バレイラが跳躍しヨルに攻め込む。その後は激しい剣のぶつかり合い。バレイラは小柄さと俊敏さを武器に戦い、ヨルはブレのない基礎上に極めた剣技で応戦する。


「男女差や年齢差が根底にあるんだ。お前に合ったやり方があるのはわかったな?」


「はい!」


「お前は女だ。しかもまだ幼くて身体が出来上がっていない。基礎も甘っちょろい」


「はっ」


「男の剣なんぞ真っ正面から受けようとするなよ。流すんだ。流した上で体勢を崩させる」


「はい!」


 ヨルは竜真に旅立ちを一日先送りにさせて今日一日店を竜真とシン、ロイに任せバレイラをしごいていた。


「型練習は毎日しなさい。自分じゃやらないがリウマも型は覚えている。監督してもらえ」


 ヨルがバレイラの攻撃を受け止め、バレイラが体勢を崩したところへヨルから体当たりを食らう。もちろんバレイラは吹き飛ばされたが、ダメージ軽減のため自ら跳んだこともあり、飛ばされた距離と比較してもダメージはさほどない。

 バレイラの立て直しは素早く、ヨルの次の攻撃を立て続けに避けた。


「肩で息してきたな。まだまだスタミナ不足だ。それを補うためにも弱点は的確に突くんだ」


「……はい!」

「こうしてな」


 バレイラはヨルの一打に膝をついた。避け切れず流すこともさせてもらえずに剣で受けることになったのだ。


「はい。終了」と、ヨルは剣から力を抜いて、バレイラに手を貸して立たせる。


「いい感もしているし、そこそこ器用だ。太刀筋も素直だから真面目に練習を続ければ二つ名の付く剣士にもなれそうだ。バレイラ、頑張れよ」


 ヨルはそう言うとバレイラの頭を撫でてぐしゃぐしゃにした。

 バレイラも疲れ切って言葉は出ないが実に嬉しそうだ。


「ヨルさん……はぁはぁ……ありがとう……ござい……ました」

 息が整ってきたバレイラがヨルに礼を言えば、ヨルはバレイラの目線に合わせて屈み、バレイラの髪を優しく梳く。

 ヨルがふと言いにくそうに言った。


「おー。お前は強くなれるよってあんまり強くなりすぎてもなぁーシェナビアみたいに男に対しても強くなりすぎるなよ?」


「私より強くないと認めちゃダメってリウマさんは言ったよ?」


「強いの定義が違う。男より実力で強くたっていいんだ。ただ女の強さは内面の強さで男より柔軟でしたたかなところなんだよ。肉体的に男を屈伏させる強さよりも、精神を鍛えたほうがいい。まぁ男女構わず精神も鍛えるに越したこっはないがな。男女はこことここがもとより別の生き物だ。お前は女の子だってこと忘れんなよ?」


 ヨルは頭と胸を指して示すとバレイラは頷いた。


「さぁ店に行こうか」


「はい!……ところで何でシェナビアさんと結婚しないの?」


「……家事が壊滅的で性格やもろもろが合わないんだよ。あいつ、いい加減諦めねーかな」


 ヨルはうんざりした眼差しでどこか遠くを見つめた。




***




「おかえりなさい」

「おかえりなさい」

「おかえり」


 エプロンを着けた三人が店で出迎える。カウンター席は女性冒険者でいっぱいだ。テーブル席とカウンターでは華やかさに違いがありすぎる。テーブル席は野郎がちくしょーと酒を浴びていた。


「お!相変わらずリウマは覆面しててもハーレム作るんだな。どうやったらそんな技が使えるんだ?」


「今日は僕だけじゃなく魅力的な少年達も居ますからね」


 カウンターに空いていた一席にバレイラを座らせるとヨルは着替えるために奥に一度引っ込む。簡単に頭から水を被って着替えてきたらしいヨルがエプロンをしながら出てくるのはしばらくしてからだ。

 ヨルが奥から出てくるとカウンターはますます盛り上がる。

 野性味のある大人の魅力があるヨル。覆面はしていても目元や口元から美しさが漏れだしている竜真。正統派な純朴少年シンにどことなく腹黒が見え隠れな美少年ロイだ。

 女性に声を掛けられ戸惑うシンにかわいいと言い、照れながらもクールな受け答えのロイにきゅんとするお姉様方にヨルと竜真も苦笑する。


「バレイラ、着替えが持ってきてあるからついておいで」


「はい。リウマさん」


 竜真がバレイラを連れて奥に入ると女性の一人がポツリと呟いた。


「あの子……結婚できないわね」


「かわいそうに……」


 それに反応したシンが飛び付き、ヨルがなんとなく感じたことを洩らす。


「いい男に囲まれすぎなんだよ」


「自画自賛ですか?」


「ロイは中々言う子だねー。あの子の周りには色んなタイプの良い男が揃ってるのさ。ミグやもう一人旅仲間、アカイも含めてね」


 ロイの切り返しに笑うとヨルは手元のグラスを拭きながら答える。

 その答えが正解なのか女性達が一斉に頷いた。


「あの覆面さんもかなりの美形と見たわ」


「マスターだって素敵だし」


「シン君もロイ君も将来有望そうだし」


「目が肥えちゃえば、そこらの男なんて砂粒よ」


「そうそう。あなた達並か以上じゃないと結婚できないわよー」


 シンは女性陣のお喋りを頭の片隅にミグとニャルマーや自分達に囲まれたバレイラを頭に浮かべてなんとなくわかった気がした。

 逆にロイはいまいち分からないようで首をかしげている。


「あいつ自体がランクAだから、実力はそれ以上じゃないとリウマが認めないだろ?つーかその時点で相手は数字持ちか?もしくは王侯貴族かもな……そのうちどっかの王妃にでもなんじゃねーの?まぁ、バレイラの趣味次第だろうがな」


「これだけの男に囲まれて構われて並の男に走ったら凄いわ……いえ、ありかもしれないわね」


 お姉様方はバレイラの行く末に並々ならぬ関心があるようだ。

 そこへ着替えを終えたバレイラが竜真と共に帰ってきた。エプロンドレスの可愛らしい少女の登場に店内が騒つく。


「ねぇ、ねぇ、あなた。これだけの男前ばかりいるけど、タイプはいるの?」


「リウマさんみたいに強くて、ミグさんみたいに家事も出来て、ニャルマーさんみたいに一途な人!」

 お姉様の一人がバレイラを捕まえて直に尋ねた。どうしても気になるらしい。

 対するバレイラの返しにカウンター内の男達は明後日を向く。――バレイラそれはそうそう居ないよ。とバレイラの婚期はそう簡単に訪れないだろうとバレイラと行動を共にした男達は思ったのだった。


バレイラちゃん…居ない居ない。

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