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1stのリウマ  作者: 真咲静
神様達との接点が出来ました。
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9.同郷の人

マリシュテンの神殿で何かを発見してきました。

マリシュテンの神殿を去って、すぐの街でのことだった。

ギルドで依頼状を眺めていた竜真はミグに尋ねた。


「ちょっとだけクエストしていいかな?」


1stともなれば、1回の依頼料が高いクエストが多いので、竜真が金に困っていることもなければ、やはり数字持ちなミグもそんなに金に困っていることもなく、目的地はあるが規制のないぶらり旅の途中、ギルドでの依頼を受ける必要はない。


「別に構わないけど…」


「じゃあ、これ、一緒にやってみる?」


そう言った竜真から出された依頼状はレベル2ndのものだった。

自分は3rdだが、一緒に居る竜真は1stだ。格上の依頼も請けれる。ミグは依頼状を見た。


《依頼主:シグルド=マナタナル=フェブカ》


「リユカ帝国フェブカ領、領主シグルド=マナタナル=フェブカからの依頼だね。報酬も内容も良いから受けてもいいかなと」


《依頼内容:娘ナーミエの教育》


「リウマ…旅の途中なのだが」


旅の途中に教育係は時間がかかり過ぎる依頼になるのではないかと、ミグは眉間に皺を寄せたのだった。


「教育できれば問題ないんでしょ?」


簡単に言う竜真。

教育とだけしか書かれていない。何を教育するかまで書かれていないのは、クエストとしては難易度が高くなる。

確かに数字持ちはギルドから、貴族の習慣やマナーの講座をみっちり受けるし、専門的なことは生業としているから、数字持ちへの教育依頼は良くあることだった。


「決定でいいかな?」


ミグも何件かこういう依頼をこなしたことがあったので、竜真の指示にしたがった。



***



「1stのリウマです。隣に居るのは3rdのミグ。フェブカ領主様のご依頼の件でギルドより参りました。」


門番に告げると、門番は竜真を待たせて、館に入っていった。


「噂通りなら、手強そうな娘さんだぞ。」


「…手強い方がやりがいあるじゃない。」


ミグがこそりと呟けば、楽しそうに答えた。ミグは竜真を見た。覆面なので、竜真の顔は見えないが、妙にやる気満々な雰囲気はミグに伝わってくる。


噂ではナーミエは常に顔を隠していて、話を聞かないし話さない。

なので、教師達は降参するしかないらしい。


「なぁ、ミグ。常に顔を隠す誰かに似てないか?」


「何が言いたい?」


「言葉が話さないないのは何故だろうね。もしかすると、話せないかも…」


笑った気配が竜真から流れ出してくる。


「楽しみだ。」


***


「お待たせいたしました。シグルド様がお会いになるそうです。」


執事が現れ、竜真達を案内する。

館内は品の良い厳選されたものが趣味良く並べられていて、ミグは時々頷いていた。

竜真は竜真で、この領主は善人か腹黒か計かっていた。


「シグルド様、お連れしました。」


「入れ」


思ったよりも若そうな声がして、竜真は意外に思った。

入ってみると、やはり、思ったよりも若い。


「はじめまして、1stのリウマ殿、3rdのミグ殿。フェブカ領主シグルドと言います。」


シグルドは茶色い髪をオールバックにしたこれといってない平凡な印象の男だった。


「はじめまして、フェブカ領主様。1stのリウマです。覆面にて失礼致します。」


「はじめまして、3rdのミグと申します。」


方や背の低い覆面、方や大男、不思議な組み合わせの冒険者だが、数字持ちに対しての信用は高い。

しかも、覆面の男は1stを名乗る。


「1stの方と出会えるとは、ギルドに依頼した甲斐がありました。」


「希少動物みたいなものですからね。」


ははっと笑い、竜真はシグルドに握手を求めると、シグルドはその手を握り返した。


「それでは、ナーミエの家庭教師になっていただくに当たって、教養とマナーの試験をしていただきたいのですが宜しいですか?」


「えぇ。もちろんです。」



***


数字持ちになるには教養やマナー講習である程度の点をとらなければならない。

更に2nd、1stとなると各国や各地方独特のものから各国の歴史から夜会や舞踏会用のダンスまでを叩きこまれる。

竜真は勿論、ミグも教師採用された。


シグルドが娘を連れてくる。

顔を隠した娘の手はアジア圏の人間にみられる肌色で、竜真は読みが当たったと内心喜んだ。


「これが娘のナーミエです。」


「…はじめまして、竜真=三島です。」


うつむき加減で部屋に入ってきた娘が顔を上げた。


『三島さん?』


帰ってきた返事にニヤリと笑う。ここにきて、初めて出会う同郷の日本人。


『なみえさんでいいのかな?』


『はい。向井奈美恵と言います。良かった。日本人に会えるなんて嬉しい。』


『今日から君の教師になるんだ。その覆面をとってもらっても?勿論、僕も取るよ。ちなみに、後ろのでかい男はミグ。彼は僕の髪が黒いことを知っている男だから問題ないよ。』


そう言うと竜真は覆面を外した。ミグは竜真は見知らぬ人の前でいきなり覆面を外したことに驚いた。

竜真が覆面を外し、露になった素顔にシグルドと控えていた執事も驚く。


「リウマ、いいのか?」


慌ててミグが聞いた。


「大丈夫。シグルド様も執事さんも僕が素顔を晒したところで驚いてはいたけど、怯えなかっただろ。『向井さんも外してください。』」


最後の一言を奈美恵に向けた。

奈美恵は被り物をとった。

黒い髪は上手に巻き上げてある。うっすら化粧もしているようだが、基からの作りも悪くないようだ。

恥ずかしそうにはにかむ顔は可愛らしかった。


『改めて、自己紹介するよ。僕は三島竜真、こんな顔だけど性別は男で、25歳。20歳でこの世界に来たんだ。それから5年、ここで冒険者しています。』


『私は向井奈美恵です。こんな外見だけど、27歳でここに来たのは1ヶ月前でいいのかな。35日目になります。どうしてか若返ってしまったんだけど、鏡見て驚いたわ。どう見ても10代じゃない。』


『その事、シグルド様に伝わってる?』


『多分、伝わってないと思うのよ。名前は何とか分かったけど、なんせ奈美恵もナーミエになってしまってるし…』


困惑の表情を浮かべている奈美恵は少し精神的に疲れているらしいことを竜真は読み取った。


『伝えても?』


『伝えてもらえる?』


嬉しそうに奈美恵は笑った。

今まで笑うことがなかった奈美恵を見て、シグルドは驚いていた。


「『いいよ。』シグルド様、彼女はどうも僕と同郷のようです。彼女について、どの程度ご存知ですか?」


「残念ながらナーミエと言う名前と10代の少女と言うことしか…」


何せ言葉が通じず、外見で判断した結果、娘として保護したのだ。


「詳細を聞いても?」


「えぇ、とりあえずそこに座って話しましょう。ダナ、お茶を」


「かしこまりました。」


控えていた執事がお茶の支度を始める。


「ん〜、何から話しましょうか。」


シグルドはどう説明するかを悩んだ。




***



今から1ヶ月程前のことです。

満月が美しい夜でした。

寝ようと寝室へ向かい、ベッドに入ろうとして、そこに既に寝ている者がいることに気が付きました。


それがナーミエなんです。

黒は魔の色と言われていますが、彼女はその魔に見えませんでした。


話が通じない彼女となんとか会話になったというか、名前がやっとわかったのが、それから1週間後。


なんとか話せるようにと教師を雇ってみたものの、顔も見せることが出来なければ、声を発することもなく、教師達は手の出しようもないと諦めていったのです。



***




―これは単純にいい人属性かな。


竜真は心の中でクスクスと笑いながら、奈美恵についてシグルドに通訳した。


特に年齢についてはシグルドやミグ、その場に居ることを許可されている執事も驚いていた。


「本人曰く、若返ったそうですが、中身は27歳という妙齢の女性ですので、扱いは大人の女性と同じにしてください。シグルド様?」


「私と3歳しか違わないのか…」


竜真は苦笑した。

それもそうだろう。3歳しか違わない彼女を娘扱いしているのだ。


「外見が外見なので、しかたありませんよ。因みに僕は25歳なので、やはり見た目で判断しないで下さい。」


更に驚いているシグルド達を尻目に竜真は奈美恵に話し掛ける。


『さて、奈美恵さん。あなたには魔法をかけなければならないんですが、手をとっても?』


『魔法?魔法なんてあるの?』


魔法と聞いて、奈美恵の目が輝いて、ファンタジーが好きなことを竜真に知らせた。


『この世界は剣と魔法がある世界で移動方法は徒歩、馬、馬車等かなり原始的です。黒は魔物、モンスターの色なので、僕達は顔を隠さなければ、殺される可能性が高いことを知っていて下さい。

あなたは出会った方が良かった。シグルド様でなければ、殺されていた可能性があります。奈美恵さんはシグルド様の娘とされているので、屋敷からでなければ大丈夫でしょうが、言葉が話せなければ対応に困るでしょう。これについては英語の授業を受けるとでも考えてもらえれば良いでしょう。それと、僕の場合は顔が顔なので、覆面で覆ってしまっていますが、昨日、発見した呪文で、髪を染めることができるようになりました。それと瞳の色を替えれます。質問はありますか?』


殺されるかも云々では怯えた表情を出したが、竜真の説明を聞いて、平常な精神を取り戻してきた用立った。


『お話を聞くと、竜真さんは魔法が使えるんですか?』


『これも一応、練習しましょうか。この世界に来たと同時に僕には髪や瞳の黒が濃くなる。言葉が通じる。魔力が強い。怪力と速さが通常の人より強い等の異能がつきました。なので、あなたにもなにかしらの異能というオプションが付いているはずです。』


『わかりました。これからしばらく宜しくお願いします。』


奈美恵が手を差し出すと、竜真も握り返した。

2人のこの世界の言語ではない会話を聞いていた他の3人に握手をしたまま簡単に説明した。


「彼女が適応できるように、教師役をさせていただきます。それと…《美しき御髪を風にそよがせよ、その風の色は天に煌めく星》《美しき瞳は映すは何か、それは深緑の森》っとね。」


握手している手から何かのエネルギーが走ったようで、奈美恵は小さな悲鳴をあげると、シグルドは焦った表情を出した。次の瞬間、奈美恵の体が光り、体毛はプラチナブロンドに瞳はエメラルドグリーンに変化していた。


「シグルド様、解呪魔法を受けると戻ってしまいます。僕が旅立った後に解呪魔法を受ける機会があれば、また掛けなおしてあげて下さい。」


「は…はい。」


握手していた手を離すと、竜真は奈美恵に自分の姿を見せるため窓際に連れていく。

ガラスに写った自分の姿に奈美恵は心底驚いた。


『似合っているよ。もう少し地味な方が良かったかな?』


竜真は色彩が派手過ぎたかもと、少し反省したのだった。


向井奈美恵:27歳だが現在の外見年齢は15、6歳。


シグルド:30歳。かっこいいに括られるが平凡な容姿の平凡な領主

奈美恵を養女にしたが、実は3歳しか年が違わないと知り驚愕。


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