表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1stのリウマ  作者: 真咲静
住処は確保してあります。
88/113

88.痴漢撃退は教え通りです

 シュミカに着いてから一週間してから作法と洞窟探検が交互に午前中を埋め始め、午後は各々がそれなりに過ごしていた。今回は紅一点バレイラの話から始まる。


 今バレイラは一人シュミカの町をぶらついていた。

 シンはアカイと出かけてしまい、ロイは竜真と魔術の勉強中でバレイラは珍しく暇を持て余してしまった。そこで町中に出てみようと思い至ったのだ。

 お気に入りの服を着て家を出ようとしたところ飲み物を取りに来た竜真がバレイラを呼び止めた。バレイラの髪を編み込んでサイドで止め、さらには白粉と紅で簡単に化粧を施し「はい。かわいいよ。お嬢様風の出来上がり。絡まれたらぶちのめすんだよ」と物騒極まりない台詞を言って送り出してくれたのだ。

普段とは違う自分に違う状況はバレイラをウキウキとさせ足取りを軽くさせた。そこへお約束のごとくダミ声がかかる。


「お嬢ちゃん、おっちゃん財布が空でよぉー。ちっと金を分けてくれねぇーか?」


 下卑た笑いで近寄ってくる三人の男達をバレイラは慌てず騒がず路地裏へ誘導して投げ飛ばした上で男にとって一番守りたい場所を力の限り踏み潰した。

「ぎゃー」と言う悲鳴を上げて失神した男二人にバレイラを止めるように立たない腰で逃げようとする一人の男。


「こう見えてもランクAなの。おじちゃん、女の子だからって舐めたら痛い目に会うんだよ」


 とっても可愛らしい女の子の口から出る獰猛な台詞に男はガタガタと震えた上に身に覚えがあった。


「あ、あんたにもしかして仲間がいるか?」


「いるよ」


「もしかして同じ年ぐらいの男か?」


「あれ?ロイのこと知ってるんだ」


 男の頭の中で何かが崩れた音がした。


「もう、もう許してくれ!」


 男はその場に崩れガタガタ震えだした。男達三人はロイがランクを上げた場所でロイに返り討ちにあった男達だったのだ。


「お金は働いて稼ぐものだからね。人から盗っちゃだめなんだよ」

 ごもっともだ。

 男に説教をするとバレイラは立ち去った。男は大きな息を吐き、「まっとうに働こう」とポツリ呟いた。しかし、彼とバレイラとの縁は更に続いていたことはまだ誰も知らない。


 再びメイン通りに戻り歩きだした。雑貨屋に寄り簪タイプの髪飾りを二つ買うと武器屋に寄って髪飾りの先を削ってもらい尖らせる。長針のような簪を手に入れた。

「やっぱり女の子は護身用の武器を持たないとダメだよね」と先程の男達が聞けば戦慄する一言を呟く。


 またしばらく歩いていると前から見知った男がやってきた。


「よぉ!バレイラ」


「ヨルさん!」


「ヨルおじさまって呼んで」


 その瞬間、ヨルの目の脇を何かが飛び去る。


「師匠、すいません。手が滑りました」


 それはバレイラの真後ろから聞こえてきた。


「うん。笑いながら言う台詞じゃないよな?」


「大笑いしてもいいと思ってますよ」


 頭の上でのやりとりをバレイラは見上げていると、横からロイが来た。


「バレイラ、バレイラが三人の男に囲まれてるって見ていた人が教えてくれたけど無事だったみたいだね」


「それで来てくれたんだ。リウマさんが教えてくれた通り投げ飛ばして力の限り踏み潰したけど」


 にっこりと輝かんばかりの笑顔で答えるバレイラにロイがうっすら顔色を悪くする。ロイは竜真に出会ってすぐの頃竜真がバレイラに教えた痴漢撃退法を見ていたのだ。あの頃はか弱かったバレイラもランクAと一人前の冒険者だ。

 ロイはそっと自分の股間を押さえた。


「リウマさんが教えてくれた通りにしただけだもん」


 ただ可愛らしいバレイラがこの見た目通りではないことを知るロイは見知らぬ、実は知ってる男達に「自業自得だけど使い物になるといいね」と呟いた。


 ヨルに連れられバレイラと合流したロイと竜真は夜更けのアリアに居た。お茶を飲み安らいだ三人。

 バレイラがヨルに聞いた。


「ヨルさん独り身なの?」


「バレイラちゃん嫁に来てくれる?」


「ヨルさん?夢は寝てから見てね」


「ぐはぁ! バレイラちゃんがバレイラちゃんが……リウマの様だ」


 嘆くヨルに竜真が笑いながらバレイラに言う。


「シェナビアって女性が居るんだけど、この人、何度も振ってんだよ。美人なんだけどね」

「ヨル様、その隣にいる若い女誰!」


 竜真は自分の声を遮って大きな音を立てて扉を開けた人物を見て頭を抱えた。まさに今話している人物だからだ。


「シェナビア、僕の養い子だ。ヨルなんかにはやらないから安心していいよ」


「あら、リウマくん。いつから子持ちに?」


「この前会った時のしばらく前に……師匠逃げるな」


 シェナビアの視線が竜真にそれた途端、ヨルはすかさず逃げ出したのだが、竜真とシェナビアの鞭によって拘束されてしまった。

 そのあっという間の捕獲劇をバレイラとロイは呆然と見ていたのだが、ふとあることに気が付く。

「ねぇロイ」

「うんバレイラ」


 二人は見覚えのある竜真の鞭からシェナビアの鞭に視線を移す。

 何かが蠢いていた。


「シェナビア、まさぐるな! 触手プレイは趣味じゃないって言ってんだろうが!」


 見た目は確かに鞭なのだが表面が何やらうごうごしている。視線をヨルに移せば、鞭の先が何気なくヨルの首筋をそろそろと擦っている。


「シェナビア、子作りしておいでね」


 それを言うが早いか竜真は自分の鞭をすでに閉まっている。


「あ! リウマてめ」

「ダーリン! さぁ逝くわよ」


 どたばたと抵抗しているが大柄な男が美女に階上へ簡単に引き吊られていく。流石は現役2ndだ。竜真はこっそり手を合わせ二人が消えた後を拝んだ。師匠、成仏してくださいと。


「ロイ、バレイラ、エプロンを着けてヨルの変わりに仕事をしようか」


 そう言った竜真がやけに清々しそうだったとバレイラとロイはこっそり思ったのだった。


南無。ヨル成仏してくれ。


私にもどうしてこの展開になるのかわからない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ