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1stのリウマ  作者: 真咲静
住処は確保してあります。
87/113

87.洞窟にはつきものです

「うわ!」


「あーあ、失敗しちゃったね」


 短い悲鳴の後、右足を縄に絡めとられて逆さ吊りにされたシンをロイ、バレイラ、竜真の三人が囲む。


「シン、敗因は?」


「紐の解く向きが違ったんだと」


「そうだね。三つ目の紐の解き方を間違えていたかな」


 洞窟に入って十一個の罠を解くのに失敗し吊されたシンは竜真によって理由を求められる。


「ロイ、バレイラ、助けてあげなよ」


 リウマさんは助けないの? そんな二人の眼差しに竜真は「僕が助けたら意味がない」と答え、それを聞いたバレイラとロイがシンに近づいた瞬間にロイとバレイラも罠に引っ掛かり逆さ吊りになる。


「うん。こうなると思った。シン! 遺跡や洞窟にはこういった複数に連鎖する罠もあるんだ。君の失敗が二人の命にかかわるかもしれないと学びなさい」


「あい」と頭に血が上りつつあるのかシンは半泣きな返事。


「それから二人もうかつに近寄らない」 


「はい」とロイとバレイラも神妙に返事をすると竜真が三人を解放した。


「一つ一つ、ちゃんと教えるから失敗を恐れないで先に進もうか」


 この場にヨルやミグが居たなら親バカなことだと吹き出されていたことだろう。ちなみにニャルマーの反応は「なんとお優しい」と感激していた可能性は高い。三人は改めて気合いを入れ直し、竜真の胸を借りまくるつもりで洞窟の踏破を決意を新たにしたのだった。


 それから三人は様々な罠に突き当たっては破り、時には引っ掛かり、ようやく一階から地下へ降りる階段を見つけた時には消耗しきっていた。


「な……何個罠があるんだ……」


 一番活躍し尚且つ被害にあったシンが床に倒れこんだ。


「確か……百七十三個だったかな。一階の罠の多さは異常なんだよね。まぁ、半分は僕が付け足したんだけど」


 竜真は実に楽しそうに言った。三人はぎょっとして竜真に注目する。


「僕が初めて突破した時は八十個近い罠があってね、分かりやすい場所にあるのに今まで何故制覇できないのか気になっていたんだ。どうやら面倒過ぎて誰もが途中で断念してきたらしい。依頼を受けて潜ったのが最初なんだけど、色々な罠の解除が楽しくなった後は作るのにも熱が入っちゃって、結局誰も通れなくなってさ。だからと言ってはなんだけど、ここは紅砂の試験場にしたんだよね」


 竜真のせいで難易度が異常に高い洞窟になったのを利用して紅砂の入会試験をしているらしい。何せ罠も多いがそれ以上に魔物もランクAと強いものも出る。


「シンはいずれ一人で踏破させるからね。まぁ、今日はシンだけじゃなくロイやバレイラも扱くから楽しみしていなよ」


 そういう竜真は楽しそうに笑った。


「ところでマッピングはできてるかな?」


 竜真の問いに三人は顔を青くさせる。どうやら罠の突破やエンカウントしてくる敵に夢中に忘れていたらしい。


「じゃあ今日はこのぐらいにしてバレイラ先頭で帰ろうか?」


 バレイラが「えっ?」となったのも無理はない。何せ覚えてないのだから


「これも練習だよ」と竜真の声にバレイラのやる気が出る。しかし全ての罠が解除されたわけでもなく、解除された罠が出っぱなしになっているかと思われていた罠は最後尾だった竜真が入り口側からしか発動しないように直しながら通ってきたため罠の形跡もない。

 三人が途方に暮れながらも入り口に向かいとぼとぼと歩いていくのを竜真は「午前の練習を洞窟踏破に切り替えようかな」と呟いて見ていた。




***



 おまけ


 とある屋敷にて、どっかの一行が旅立った日の夜のこと


「シグルド様、なみえ様、ミグさん、お待たせ致しました。夕食の準備が整いましたので食堂にお越し下さい」


 燕尾服をビシッと着たニャルマーが控えめなノックをした後、シグルドの許可を得て部屋に入り、恭しく言う。シグルドとミグはそんな時間かーと言う感想を胸にしまい、奈美恵は美形生執事さんかと一人現代女子の感想を胸にしまい、ニャルマーを先頭に部屋から出た。


「ニャルマー、今後のことがあるから今夜の給仕はお前がして人払いを」


「かしこまりました」


 これまた恭しく主人に頭を垂れるニャルマーをミグがおかしいものを見るように笑いを堪えている。


「ニャルマー、その切り替えは素のようだな」


「ミグさん?」


 以前に言っていた天然に間諜をできるのもある種の才能だなとミグはにやにやしながら見ている。

 そんなミグの内心はシグルドに伝わったようで、シグルドもくすりと笑みを浮かべた。


「ミグ殿、ニャルマーは素直なのですよ」


「えぇ、そのようです」


 何のことだか分からない。そんな様子のニャルマーにシグルドとミグは吹き出す。ニャルマーが困った顔をするとたまらんとばかりに二人は大笑いした。いきなり笑う二人をニャルマーと奈美恵は不思議そうに見ていた。

 しばらくして食堂に着いた三人が席につくとニャルマー以外の使用人達が出ていく。全員居なくなって食堂には四人しか居なくなりニャルマーが給仕を始めたのち四人は今後のことを話し合い始めた。


 拍手でニャルマーが求められていたので垣間見程度に(笑)


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