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1stのリウマ  作者: 真咲静
住処は確保してあります。
84/113

84.麗しの鬼姫

ごめんなさい……なんか……はい。ごめんなさい。

 竜真の家に着いた翌日、朝食後のお茶を飲んで子ども三人達が寛いでいると、一番奥の部屋から竜真が廊下に首を出して三人を呼ぶ。

 なんだろうと首をかしげ、三人はカップを片付け竜真に呼ばれた方へ向かった。三人は竜真がいるのが例の謎の部屋だと気が付く。


「大丈夫。部屋を作ったから入ってきて」


 竜真の声に三人は入ってみることにした。そうすると目の前に広がる広間にそして竜真に驚く。


「訓練場を作ってみたんだ。これから朝ご飯後は毎日ここに集合ね」


 そう言った竜真の姿はミグの意匠らしいドレス姿だった。美しいマーメイドライン、喉仏を隠した襟元で袖は袖口に向かい広がっている。色は薄紫で銀糸で刺繍の模様がある。髪は結上げてあり、真珠の飾りが清楚に生える。それはそれは美しい令嬢、姫姿だった。


「三人とも着替えて」


 竜真が取り出したのはミグがバレイラの盛装にと竜真に預けた薄い黄色のドレス。ロイとシンはこちらもミグが作った盛装。三人は再び首をかしげながらも訓練場を出て自分の部屋へ着替えに向かった。

 竜真達の盛装はミグにリユカの帝都出発前に頼み竜真達のシュミカ到着後に追いついたオーダーメイド。竜真のドレスは竜真に一度ドレスを着せてみたかったミグによる渾身の作だ。この場にニャルマーが居なかったことは幸いで、後に三人から竜真の美しさを語られた時に悶絶するほどにニャルマーは悔しがった。

 戻ってきた三人に竜真はニィっと口の端を釣り上げて笑う。


「バレイラ綺麗よ。シンとロイも似合っているわ。流石ミグね。貴方達には各国のダンスや礼儀作法の練習をしてもらうことにしたの。数字持ちの大事な訓練の一つですからね」


 裾を軽く持ち上げて最上級の礼の形を取る。


「バレイラ真似してね。そして出来るだけ言葉使いは丁寧にしなさい。シンとロイもよ。シュミカにいる間は丁寧な言葉使いを心がけること。それから礼儀作法は男女両方とも覚えます。シンとロイには可愛らしい服を着て裾捌きから覚えてもらいます。わかりましたか?」


 竜真お得意の鬼の訓練になりそうな予感に三人三様に口元を引きつらせている。


「お返事はどうしました?」


「はい」


 三人の戸惑いが隠しきれていない返事を聞いて竜真が更に付け足した。


「シンとロイには丁寧な女性の言葉使いも覚えてもらいますので、二週間頑張ってくださいね」


 まさに花が綻ぶと言った笑みに三人は見惚れた。


「これからするのは世界共通の女性の作法です。まずは一の礼、そして二の礼、そして最上級礼ですわ」


 次々に繰り出す華麗な動きに三人は立ちすくんだ。


「バレイラ」


「はい」


 バレイラは見よう見まねで竜真の動きを追う。そして竜真はもう最上級礼の見本を再度見せると膝を折ったところでピタリと止まる。


「バレイラ止まっていなさい」

 竜真はバレイラの傍に近寄ると首の角度、手の位置、膝の角度を直していく。


「この位置で動かない。次シン、ロイ」


 バレイラがプルプルとしているのをシンとロイがびくびくしながら見ていた。


「男性の礼の取り方、一の礼、二の礼、そして最上級礼。次、一の礼」


 シンとロイが真似る。


「二の礼。そして最上級礼……二人とも動かないように」


 バレイラと同じように手の位置をそして腰の角度を直す。


「三人ともこれが礼の仕方です。貴族階級ではこの三種の礼を使い挨拶します。大まかに言えば一の礼は身近な人。二の礼は目上の敬意ある人、もしくは最上級礼を使わない時と場所です。最上級礼は基本的には王族相手だと考えて下さい。はい。崩していいですよ」


 まずバレイラが崩れた。


「リウマさん、足がプルプルします」


「そうね、あの角度は辛いわね。わかるわ。でも数字持ちは貴族や王族相手に家庭教師が出来るだけの教養と何者にも負けない強さが必要なの。実際、数字持ちの中には裕福な商家や貴族、王族の妻や婿になる人もいるのだから。それに依頼の中には潜入調査もあるから男女かまわなく練習しなくてはならないのよ」


「なぜリウマさんは今女性の仕草言葉使いを?」


「決まってるわ。これで男言葉話していたら気持ち悪いでしょ」


 確かにこれで男性らしい仕草や言葉使いをされたら気持ち悪いぐらいに竜真は絶世の美少女だった。

 


 こうしてシュミカに滞在の午前中は作法の授業に費やされるのであった。


シンとロイに女装、バレイラに男装フラグ……ゲホゲホ

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