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1stのリウマ  作者: 真咲静
住処は確保してあります。
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81.未来へ駆ける

「……師匠、帰りました」


 竜真は激しく嫌そうな顔をしていた。それは覆面に隠れて見えないが、声にはしっかり表れていて、ロイ、シン、バレイラの三人の視線を竜真に集めた。因みにアカイはシュミカの手前でどこかに消えた。


「リウマ!ようやく帰ってきたな!」


 興味に目を光らせ豪快に笑うヨルに竜真の目が泳ぐ。竜真は思った。――ここには弄られるために帰ってきたんだ。と。


「昨日、お前宛てに荷物が届いたんだけど、成人未満閲覧禁止な銅像を店で広げちまって大騒ぎだった」


「…………」


 竜真は頭を抱えた。――成人未満閲覧禁止な銅像ってそんないかがわしい物を作ったのか! あの覗き魔め……。と、そんなことを考えていると、バレイラからクスクスと漏れ聞こえてくる笑い声。シンとロイも釣られて笑いだす。


「バレイラ?」


「リウマさんが視姦されました」


 竜真の顔が青ざめた。ただし覆面で周囲には見えないのだが。


「……誰かな?バレイラにそんな下世話な言葉を教えたのは」


「ニャルマーさんに決まってるよ。リウマさん」


 ロイとシンが声を合わせて言った。もちろんこの言葉からは竜真の殺気が引き出される。


「何々、面白そうな話の予感がする。オジサンに話してよ嬢ちゃん坊っちゃん」


「ニャルマーさんて言う」

「リウマさんが大好き過ぎて仕方ないダメ人間が」

「たまに呟く人間としてどうかな言葉をバレイラが聞いていたんです」


 バレイラが話しだしてロイがぶんどり、毒に塗れなロイの発言をシンがカバーする。カバー出来てるかどうかはともかくとして、一応カバーした。


「お前ら面白いな。俺はヨルだ。この店のオーナーでリウマの師匠な」


「俺はシンです」

「僕はロイです」

「私はバレイラです」


「師匠、この子らは僕の養い子ですよ。ランクAになったばかりです」


「おう。聞いてる。リウマに隠し子が」カッ!

 

 ヨルの言葉を遮る竜真のナイフ。子ども達三人はこの二人の関係をしっかり把握した。ヨルに対してはリウマさんで遊ぶ強者。リウマさんも呆れながらも楽しくそれに付き合っているんだな。と、判断した。

 竜真がナイフをかざし、ヨルはふざけた態度で避ける。そんな二人の様子を店内にいたランチの常連客がゲラゲラ笑う。


「お店的にいいのかなぁ?」


 そんなロイの呟きに新たに入り口から入ってきた誰かが返事をする。


「いいのだよ。リウマとヨルの漫才はこの店の名物なのだからね養い子諸君。私はシュミカのギルドマスターでハアンと言う。君らの名前を聞いてもいいかな?」


「俺はシンです」

「僕はロイです」

「私はバレイラです」


「よろしくお願いします」


 それぞれに名前をいい、三人揃っての返事にハアンは目を細めた。


「良い目をしている子達だ。流石に短期間でランクAになっただけある」


「期間としては僕なんかより余程早いですよ」


 ヨルとの追い駆けっこを止めて戻ってきた竜真が誇らしげにしている。


「とりあえずシュミカには二週間の滞在予定だよ。依頼を受けてもいいし、好きに行動していい。僕は家に居るか、この店で働いてるかしてるから。因みに寝泊りは僕の家だから」


「え?リウマさん家があるの?」 


 シンが素直に驚くのを竜真が驚く。


「ミグにだって家があったでしょ?数字持ちになれば相応の収入があるから、あちこちに家がある奴もいるぐらいだよ」


「実はリウマは各国に家があるくせに寄ろうともしないんだ」


「あれは貢ぎ物。それに各国って程にはないよ……リユカ含めて五ヶ所ってとこだよ。二ヶ所は孤児院になっているし、後の三ヶ所は部下達のアジトになってるから厳密に家があるとは言わないの」


 竜真の知らなかった一面がまた現れた。紅砂が孤児院の運営を手懸けていて教育は紅砂や魔術師ギルドでなされ、この孤児院に居るは子ども達は各ギルドや下僕会のメンバーが目を付けて目を掛けていた。とは言っても孤児院は竜真がシン達三人と出会った後に紅砂に命じて運営が開始されたものである。子ども達は各国のスラムや路上生活中の子から集められている。因みに下僕会は紅砂より孤児院について知り勝手に支援している。


「君らを養い子にした時に今まで気にしていたことを実行したまでなんだ。子ども達には保護と教育が必要だからね」


 竜真は三人の頭を順番に撫でると空席に座るように手で促す。もちろんバレイラの椅子を引くことは忘れない。竜真も椅子に座ると竜真の前の席をハアンが確保した。


「リウマさん、あなたの始めたことに乗りたい人が多くてですね、冒険者ギルドでも孤児院を開設することになったんですよ。設置場所はまだ一ヶ所ですが、冒険者達、特に数字持ちの方には教師をしていただこうと言う話があります」 


「噂には聞いたよ。……本当にやるんだ。国立の孤児院はそこかしこにはあるんだけど、あまりに質が悪くて見兼ねていたんだ。数字持ちの条件も識字率の悪さから見て高い壁だからね」


 シンは竜真をじっと見ていた。売られる前、シンはリユカではなく別の国の孤児院に居て暮らしていた。竜真が言うとおりの質が悪い場所で食事も出さなければ教育もしない暴力をふるう的にした上に子どもを売り飛ばす。それがシンにとっての孤児院だった。だが、竜真や冒険者ギルドの孤児院は違う。シンは考えていた。

  

 

「なぁ、リウマさん」


「どうした?」


「紅砂に入んのどうしたらいい?」


「……入りたいの?」


 優しく「どうした」と聞いた竜真の声が僅かに低くなり、ロイとバレイラがシンと竜真に視線を向ける。シンは真剣な表情で竜真を見ていた。

 

「バレイラは剣使いだしロイは魔術が使える……俺だけ特出したもんがない。しいて言えば手先が少しだけ二人より器用だ。そして紅砂が孤児院を運営しているって聞いた。なら盗賊ギルドに紅砂に入りたい」


「理由はそれだけ?」


「パーティーバランスも考えても俺が鍵開けや罠解除スキルが学んだ方がいいとも考えてる。ロイはともかくバレイラにゃきっと無理だ」


「弟妹思いだねシン。でも将来的に三人がパーティーになるとは限らないよ」


「俺、予感がするんだよ。だからここで盗賊ギルドに入る」


 竜真はシンの目の奥に光る決意を見てとる。――なんでまた一番素直な子が盗賊ギルド所望かねぇ〜。とため息をついた。


「予感ねぇー……アカイ」


「なぁーに?リウマ様」


「え?」

「うわっ」

「え?」


 アカイが竜真の隣に立っている。三人三様に驚いていた。因みにハアンもアカイと呼ばれた人物の登場に顔には出さずとも驚いていた。


「近場の盗賊ギルドでシンの入会案内してやって。上納金はシンに払わせて。紅砂には……実力がついたら入るといいよ」


「リウマさん」

「リウマ様ぁ過保護ぉー」


「親バカで何が悪い。シン行ってこい。夜までには帰って来るんだよ」


 アカイの間延びした軽口に竜真は笑った。そして、シンに行くように促す。シンは喜びに竜真に抱きつく。


「ありがとうございます。行ってきます。行こうアカイさん」


 シンは荷物を持つと夜更けのアリアから掛け出ていった。


「アカイ、よろしくね」


「はーい」


 アカイもゆったりとアリアから出ていくのであった。


また設定が増えた……作者も知らんまに設定が増えてる。

いやーーーーー(涙)

そんなこんなでシュミカにつきました。

え?80話で次の町に着いたら依頼って言ってた?

いや、ちゃんと彼らは依頼を受けてましたよ。(書いてないけど)

80話の前フリのことを忘れてたなんて……ね……スミマセンでした。(土下座&逃走)



追伸:アカイさんがくらげの様で困ります。

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