8.神殿の壁に
マリシュテンの神殿につきました。
「マリシュテン。1年ぶりぐらいかな。」
「リウマぁん〜〜〜〜ぁん」
目があった瞬間にマリシュテンに飛び掛かられ、なおかつ熱いキスに見舞われ、竜真はマリシュテンを引き離した。
引き離されたマリシュテンは不満顔で拗ねた。
「マリシュテン、いきなりキスするのは止めようね。」
「また不粋な覆面しているのね。取りなさいよ。」
仕方なく竜真は覆面を取り去った。
「本当に綺麗ね。リウマ…」
「マリシュテン…ミグも居るんだけど。」
マリシュテンの電光石火のご挨拶にミグはどうしたものかと、思案していた所、矢先は急にミグに向かった。
「ミグも来てるの?ミグ、この前頼んでおいたドレス出来てる?」
「出来てますよ。」
マリシュテンの所へ行くと決めてから、ミグは宿に着くごとに針仕事をしていたのを竜真は知っていたが、それがマリシュテンからの頼まれごととは思っていなかった。
ミグのバックパックから取り出されたのは、淡い青色のドレスだった。
「イメージ通り。流石、ミグ。ありがとう。」
満足そうな満面の笑みで、早速ドレスをあてがうマリシュテンは10代後半の少女のようだった。
「凄いな。僕は裁縫と料理の味見に才能がないって師匠に言われててさ。自分の繕い物もままならないよ。」
「確かにリウマは裁縫はダメだし、ゲテモノ好きだからな…俺はお前が作った料理は食えない。」
竜真が感心していると、ミグは呆れ顔で返した。
竜真の作る妙に甘激辛い食べ物にミグは辟易していた。
マリシュテンはお気に入りの竜真に抱きつき、擦り寄っていたのだが、途中から変なものを見る目つきで竜真を見つめた。
「ねぇ、リウマ…なんであの変態の匂いがするの?」
「ビシャヌラのこと?3週間前にあいつがいる神殿に偶然入ったんだ。」
「やだ、リウマ。あの変態に何かされなかった?私の匂い、いっぱい付けておいたから、心配だわ。」
「大丈夫。確かな変態だけど、押し倒されたぐらいで済んだから。」
端から見てれば、美女同士の会話で目の保養だとミグは外野から見ていた。
ただし、方や男で方や竜なのを考えると、虚しい気持ちになってくる。
放置されたミグはまだ続くマリシュテンと竜真のイチャイチャよりも壁に書かれている古代文字に目を向けて、徐々に視界から2人を消していった。
***
「マリシュテン、今日は君に用があってきたんだよ。」
途中から、マリシュテンによるキス攻撃が始まり、しばらく、竜真も何故ここに来たのかを忘れかけたが、ふと思い出した。
「用?」
唇が離され、不本意そうな顔で、竜真に抱きついているマリシュテンが可愛らしく首をかしげた。
「実はね、ビシャヌラからの依頼で神殿同士を繋ぐ通信装置を届けにきたんだ。」
「…変態と通信なんて嫌だわ。…でもリウマやミグが相手ならいいわよ。」
余程、ビシャヌラが苦手らしいマリシュテンにリウマは苦笑いし、通信水晶をマリシュテンに渡す。
「とりあえず、4つの神殿とミグが持つ予定。」
「リウマは持たないの?」
「基本的に通信装置の水晶が使えるのは5つまでなんだ。1stの僕より3rdのミグの方が対応しやすいことも多い。だから、ミグなんだよ。」
つまらなそうな表情を浮かべるマリシュテン。
「後、3つの神殿に向かう道中はミグと一緒だから、いつでも通信して?」
「それなら許してあげる。」
「使い方は魔力を水晶に流し込んで会話するだけだからね………ミグ?」
「…」
「ミグ?………あぁ〜あ、研究モードだ。これはしばらくダメだ。」
古代文字に夢中になっている友はともかく、マリシュテンに水晶の使い方を教えたい。ミグ用の水晶はミグの鞄の中にあり、いくら友人とは言え、人の鞄は開けれない。
ミグは壁を見つめて、はぁはぁしているのは見てはいけないものを見ているかのように興奮している。
「なぁ、マリシュテン。あそこに書いてあるのは何?」
「人の愛の行為の説明よ。」
「納得。」
壁一面に日本で言えば48手だのが言語で書かれていると考えれば、古代オタクとしてはたまらないだろう。
「ミグはこの部屋初めてじゃないだろうに、今更?」
「あぁ、あれか?あの部分はリウマと私の」
「マリシュテン?」
声に怒気を込められ、静かながら迫力満点に自分の名前を呼ばれ、マリシュテンは小さくなった。
「怒らないでね。だって、あれだけの興奮は久しぶりだったんだもの。興奮を覚ますために日記にしてみたの。」
「あいつ…直にそれ見てるくせに、何で書いてある方に興奮してんだ?」
あわあわと焦っているマリシュテンを軽く睨み付け、眉間に皺を寄せて、うなだれたのだった。
マリシュテンはこってりと怒られました(笑)




