79.出会いは
「なぁ〜ラーノォ〜新入り来たぜぇ〜」
赤毛の若い男に話し掛けられた小麦色の髪の男が新たに扉から現れた小柄の覆面の人物を細い目を更に細めて見た。
「リケラも見なよ。あれは表か裏か」
小麦色の髪の男、ラーノに藍の髪の男が振り替える。
「最近調子に乗ってる冒険者でリウマと言うらしい。表だな」
藍の髪の男はリケラと言い、左目を眼帯で覆っている。リケラはいつも行動する三人の中で情報担当していた。
ラーノやリケラの言う裏や表とは、盗賊ギルドの表面と暗部を指し、表面は遺跡の発掘調査での罠の解除や鍵開けの技術を授ける。暗部はその名の通り盗賊を束ね、暗殺や人身売買などの闇の商売も押さえている点である。
冒険者の中には遺跡の発掘調査のために盗賊ギルドに在籍する人間も居る。竜真もその分類だと思われたのだろう。
「調子に乗ってる冒険者ねぇ〜ん〜ちょっかいかけていい〜?」
ラーノに話し掛けた男、赤毛のテラが人差し指をくいくい第二関節で曲げて竜真の財布を擦りたいと意思表示する。
「気を付けろよ。相当にできるらしい」
「わかったよぉリケラぁ〜」
テラはふらりとしながら竜真の背後に近づいた。
***
「もぉ勘弁してぇ」
結果から言えばテラの挑戦は失敗に終わった。
竜真の鞭に捕らえられ、ギルドの中庭の木に頭を下に吊されている。
「新入りだからって甘く見るのはどこの……いや、魔術は懇切丁寧だったね。まぁ、冒険者ギルドもここも変わらないね」
「テラ……だから気を付けろと言っただろうが」
リケラが頭を抱えて俯く。
「リケラぁ〜助けてぇ〜」
「自業自得だって」
リケラに助けを求めれば、ラーノが呑気に笑い飛ばした。
「ラーノぉ〜きぃ〜もぉ〜ちぃ〜わぁ〜るぅ〜いぃ〜」
ぶらりぶらりと揺れるテラはより間延びした声でラーノやリケラに助けを求めたが、竜真から発される妙に怖い気配を感じてラーノとリケラは首を横に振る。
「そんなぁ〜」
テラの間延びした悲鳴はギルドの中庭に轟いたのだった。
***
「これがリウマ様との出会いだったねぇ〜。すごいんだぁ〜。ギルド入会時にぃ〜上納金をぉ〜頭目クラスまで払ってぇ〜、あっという間にぃ首領になったんだよぉ」
間延びした口調でアカイはへらへらと笑いながら竜真との出会いを語っていた。
シン、ロイ、バレイラの三人はその光景を頭に浮かべながら歩いていく。そして、竜真は気持ちげっそりしていた。
「アカイ、なんでアオイやキイロイを連れてこないんだ……」
「アオイはぁ〜リユカの支部にぃ〜上納金を払いに行った後ぉ〜リユカをまわってぇ〜下僕会のぉ〜会員集めぇ〜、キイロイはぁ〜ブジュルムとかぁ〜あっちの事後処理ぃ〜!俺暇ぁ〜!」
竜真の額に交差点が浮かび、口元がヒクついている。ただし覆面のため周りには分からない。分からないが、シン、ロイ、バレイラはそっとアカイの傍から離れた。
「んにゃ〜〜〜!」
竜真から縄が放たれ、あっという間にアカイを捕らえる。竜真は飛び跳ね七メートル程の高さの太い枝に縄の先端を括り付けた。縄の長さは五メートル。アカイはぷらぷらと揺れた。
「さぁ、行こうか」
実に清々しいといった様子で竜真が歩きだす。
「リウマさんいいの?」
「煮ても焼いても縛ってもアイツは追い掛けてくるから大丈夫だよ。ロイ」
それは大丈夫なのか?という疑問をロイは浮かべた。
「僕の盗賊ギルドの組織『紅砂』の一員で右腕の三人組の一人だから多少のことじゃびくともしないよ」
竜真は何でもない様に歩いていく。バレイラは気になり振り向いた。
「オレのバレイラぁ〜!」
「きゃっ!」
振り向いた瞬間、バレイラの目の前には満面の笑みを浮かべたアカイの姿。何時の間にやら抜け出したのか、シン、ロイ、竜真の手からそれぞれにナイフがアカイの顔目がけて飛んだ。
「「「バレイラに触るな変態!」」」
アカイは三人の怒りを見事に買ったのだった。
テラ=プテラノドン(赤)
リケラ=トリケラトプス(青)
ラーノ=ティラノザウルス(黄)
オーズプトティラコンボが元のネタ(笑)