75.伝説級
「竜真さん。竜真さんに誘われたのをきっかけに、あの後すぐに魔術士ギルドに入りまして、癒しの魔法だけを突き詰めて勉強してたの。その後、私のところに来た三島さんに連れられて、あの方々の所に行って、それぞれの欠片の能力を開花させてきてからここに来たの」
奈美恵は極上エメラルドの輝きを持つ魔力玉を手に出現させた。 竜真はそれを見て真似するように極上とは言わないまでも美しいエメラルドの輝きを持つ魔力玉を出現させる。
「賢者もビックリだ」
竜真は初めて見た時の翡翠色からの進化に驚いていた。
奈美恵は竜真の軽口にクスリと笑うとエメラルドの魔力玉を左手に寄せて右手に巨大な真珠を思わせる魔力玉を作り上げる。
「なるほど。分離したんだね」
「正解です。術の精度はかなり上がりました」
前に見た時には翡翠色だった魔力玉は見事なエメラルドと真珠になっていた。
奈美恵は自分の魔力玉を竜真の魔力玉に押しつける。その行動を竜真は黙ってみていた。徐々に交わる魔力玉。最後には一つの球体になった。
そして、奈美恵は片方に出した真珠色の魔力玉をそれに混ぜるため、また押しつける。エメラルドは翡翠色に変わりながら、一つの球体になった。
「他人の魔力玉を混ぜてしまうのか……すごいな」
「ですが、ここからです。三島さんから教えていただいたので、うまくできればと」
奈美恵は魔力玉を両手の上へ乗せていたが、両手を大きく開いた。同時に魔力玉は同じ大きさの二つの球体になる。それの片方を竜真に渡した。
「これが四神の力で安定した癒しの力になります。まずは緑同士を混ぜることによりヤシャルの癒しを取り入れて、次に私独特の負の払拭する真珠色を混ぜました。これで負を払拭する力を竜真さんにも渡せることになりました」
「……あれ?奈美恵さん、他に適性の属性ないの?」
「ありません。残念ながら癒し特化ですよ。なので、旅先で竜真さんには頑張ってもらわないと!私は子ども三人も産まないといけないんだから、その間、竜真さんにはフォローしてもらおうってさっき決めたんです。魔力玉の混合自体は三島さんに教えていただいたので、竜真さんと会ったら必ずするようにと」
話をしながら二人は作られた魔力玉を体内に収め、魔力の巡りを確かめる。
二人してそれほど違和感を感じないらしく、奈美恵にいたっては翡翠色からエメラルドと真珠に似た魔力玉へと分離させてみたりと試している。
「うわぁ、それは忙しくなりそうだ」
獅子王にそこまで言われなかった竜真は盲点だったと目を塞いで天を仰ぐ。
「そりゃそうか、皇帝相手なら奈美恵さんはここから動きづらくなるわけだ。うんうん。……僕が動けるだけ動くわけか」
「後は情報交換することあります?」
「…………そうだ。君のことを大事にするように宰相に言い付けといたから、便利に使うといいよ」
「宰相をこき使っていいの?」
「そう。それから………」
次々とリユカにまつわるあれやこれの黒歴史やその他使える人間云々を竜真が教えてくれるにつれ奈美恵はなぜこうも一国の内情ただもれに知ってるのか口元を引きつらせる。
「1stにまつわる噂は伝説級だけど初めて信用する気になったわ。規模が大きすぎて嘘だと思っていたの」
奈美恵は先程の竜真とは逆に手で目を覆うと下を向いた。
「そんなに誉めなくていいよ」
「誉めてないよ」
「奈美恵さんも実は伝説級だよ」
「世界を滅亡させそうな1stさんと同じ位置には立てられないって」
「負を相手にできるのは、今のところ四神と僕と奈美恵さんだけだもの。ほら、ね?伝説級」
女神の神々しくも花開くような笑みとも言える可憐な笑みを浮かべた竜真を見ながら、その並びに入るのは本当に嫌だと奈美恵は遠いところを見つめて思ったのだった。