71.事実説明
優勝と結婚の祝いの宴の翌日、竜真は宿の自室にニャルマー、シン、ロイ、バレイラの四人を呼び出した。
「おはようございます」
「リウマさんおはようございます」
「おはようございます」
《おはようございます》
「おはよう。旅の支度の前に皆に言っておきたいことがあるんだ」
部屋に入ってきた彼らは竜真の前に立つ。
「今までミグと旅をしてきたのは依頼だと話していたよね?」
「えぇ。聞きました」
ニャルマーが律儀に相槌を打ち、ほかの三人も頷いたのを竜真は見回して確認する。
「ミグからの依頼はとある遺跡の調査だった。その遺跡は今から三千年前から存在するもので、この世界の創生にまつわる神殿なんだ。僕は一度、その関係にある遺跡に入ったことがあるんだ。で、ミグからの依頼だけど、そのことを踏まえた上で神殿調査をすることだった。
神殿につくとそこには神の一人が居て、僕が見つけた神殿とその神殿以外に後二つの神殿があることが分かった。
僕らはその神に依頼を受けて四つの神殿を巡ることになり、こうしてリユカの中を巡る内に君達と出会うことになったわけだ。」
竜真の話を聞き洩らさないように四人は真剣をして聞いている。
「神の竜マリシュテン、神の狼ビシャヌラ、神の鳥アルシュラ、神の獅子ヤシャル、創生神リユカリルリノーラが最初に創った動物達がこの世界を司る四神として祀られた。しかし、時が経ち、当時この世界を支配していたリユカの王によって神殿に仕えていた者は殺され、四神が祀られた神殿は閉鎖された。ちなみに今のリユカ帝国には、その前身たるリユカの王の血脈は続いていない。が、血脈は続いているらしい」
竜真は一息ついて続ける。
「ここからが本題なんだけど、僕らは四神の神殿を巡って、四神達に会ってきたんだけど、その中で僕にとって完全予想外の人に出会った。獅子ヤシャルこと三島師子王、僕の父親がそこに居た。つまり僕には四神の一人の血が流れている。半分人外。さっき三島師子王と言ったけど、僕の名前は正式には三島竜真と言って、三島が家名、竜真が名前。この世界とは違うところから来た。つまり僕は異世界出身者なんだ。神殿の封印で人間に嫌気がさした父は異世界へと渡り、僕の母と出会った」
竜真が周りを見回せば、四人の八つの目は竜真に集中している。真剣に竜真が言うこと聞き漏らさないようにしているようだ。
「以前、ニャルマーは僕の魅力が上がっていると言っていたね」
「えぇ、出会った時よりも更に輝きを増しました。えぇ、その神々しさにどんなに……」
「ニャルマーさん、そろそろ黙って」
ロイの毒舌がニャルマーに釘を刺す。ニャルマーは一瞬だけシュンと落ち込んだが、竜真に視線を戻すと、話を続けるように促す。
「それは父さん、つまりヤシャルにだけど、父さんから受け継いだ力を引き出されたからなんだ。おかげで神殿めぐりする前から規格外だったのに、規格外どころか問題外になったかんじだよ。そこで聞きたいんだけど、……こんな僕だけどこれからも仲間として着いてきてくれる?君らの力的にはランクAとして問題ないし、ランクAともなれば食うに困らない程度の収入は手に入るはずだ」
「リウマさん、僕らがリウマさんから離れるわけないでしょ?」
「リウマさんと一緒にいる方が楽しそうだし」
《第一ニャルマーさんが離れるわけがないですよ》
「リウマ様…いえ、竜真様、わたくしはあなたとは何が何でも離れません!」
ロイはふふっと笑い、シンはあっけらかんと、バレイラはさも当然と、ニャルマーは竜真に抱きつかんばかりに近寄り、竜真に後頭部を抑え込まれて床とキスしていた。
「ありがとう。これからもよろしくね」
***
「おい、竜真、お客さんだ。竜真の言っていたことは本当だったんだな……ニャルマーは何をしているんだ?」
部屋にノックが響き、竜真が返事をすると、ミグが顔を出した。
「まさか…レイアか?」
「そのまさかだ…そしてもう二人ほど顔なじみが来ている」
「誰だろ?このあたりで僕に会いたい人っていうと……」
「部下が何をしているか気になるんだろう」
「シグルド様と奈美恵さんか」
そこで床とキスしていたニャルマーが立ち上がった。
「シグルド様が!」
「どこで待ってる?」
「下の食堂だ」
「さぁ、行くよ」
六人は竜真の号令で部屋から階下へと向かっていった。
竜真命……