67.ランク戦(4)
まだ生ぬるい戦い続きます。
「ふっ」
「確かに二回戦だ」
「…」
「嬢ちゃん、やるじゃないか」
「接近戦もできるのですね」
「…」
「なんだ、そのふざけた服は」
「不可抗力です」
翌日、二回戦が始まった相手チームは紫の夢と言う、対人依頼を中心に受けているチームだった。
剣士とシン、体格のよい女とバレイラ、魔術士の女とロイ、盗賊とニャルマーが各々に戦っている。
試合開始直後、ロイに相手の沈黙の術が決まってしまい、付与の術が使えなくなってしまった。
その瞬間、ニャルマーが全員に目配せする。
「ゼスラ、こいつらやるよ。付与をくれ」
「この坊っちゃん、隙をくれないよ」
「付与なしの勝負ですね」
「本当にこいつはふざけた服着やがって」
「だから、不可抗力ですってば。胴ががら空きですよ」
ニャルマーが薄紅の服をひたすら貶す男の腹を布を巻いた剣で強打した。
男が苦悶の表情をして膝から崩れる。
「デズマ!」
魔術士が男の名を叫んだ。
魔術士もなんとか術を使おうとするものの、ロイの攻撃の手が休まらない。
「ぐっ…」
バレイラが相手を押さえ込み、腕の関節を決めている。
「キーナ!」
シンと戦っている男が叫ぶが、その一瞬の隙が仇になった。
男の首元にシンのショートソードが添えられ、勝負がついた状態になる。
「………」
「きゃっ」
ロイの棒を避けそびれて魔術士が倒れた。ロイがその喉に棒の先を突き付ける。
「終了」
ギルド職員の声で歓声が広がる。
ニャルマー達はそれぞれに手を貸し、相手を起き上がらせた。
「君ら、強い上に性格もいいのな。いいパーティーだな」
「ありがと。おっちゃんらも強かったよ。俺はシンです」
「ジョエルだ。どこかで会ったらよろしくな」
シンが剣をしまうと相手の剣士がシンらを誉める。
シンもおどけて返すと、互いに握手した。
***
「で、また食べるのな」
ミグは目の前の大食い大会に苦笑した。
そして、…
「食べ過ぎだろ」
隣の席から呆れ声が聞こえる。
それは先程の戦いの相手の一人だった。
「シンはいいとして、そっちのチビ二人の腹はどうなってるんだ?」
「底なし沼ね」
女魔術士ことゼスラも苦笑いしている。
「バレイラ、ロイ、そこら辺にしておかないか?店主が目を白黒させているぞ」
《まだ六分目》
「僕は七分目、魔術使わなかったから、お腹の減り方が違うよ」
バレイラもロイもまだ食べたそうだった。
「そう言えば、あんた試合に出なかったよな」
ニャルマーの相手をしていたデズマがミグに聞いた。
「俺は付き添い代理だ。参加資格がない」
ミグは曖昧に笑って答える。キーナが参加資格がないの一言に眉を動かす。
「まさか数字持ちか?」
「3rdのミグだ。友人の子達が世話になった」
「…そりゃ強いよ。教える奴の最初のレベルが違う」
「それもあるかもしれないな。何しろ1stの愛弟子達だ」
ミグの爽やかで穏やかな声で何事もなうように言われた一言に紫の夢の一行がギョッとしている。
「赤?青?」
「赤ですよ」
食事を終えているニャルマーも会話に交ざってきた。
「1stのリウマの愛弟子?そりゃ無理だ」
紫の夢一行は驚いたまま、机に突っ伏した。
***
「シン、右側が甘い。ロイ、詠唱破棄の練習を相手に先手をとられないように。」
「「はい」」
「バレイラ、もっと正確に突いて」
「…」
食事の後、宿の中庭でミグがシンとロイを見て、ニャルマーがバレイラと組み手をしている。
「ニャルマーはかわし方をもう少し小振りにしろ、次の動作までロスができる」
「はい」
その様子を紫の夢一行が見学している。
「おしまい。君らも組み手してみるか?」
柔軟から入り、変わった運動、体術らしき型に組み手、最後の瞑想までの一連の訓練に一行は良く見ていた。
「ハードだ」
ジョエルが呟いた。
「これを毎朝、毎夕繰り返す。ジョエル、キーナ、デズマ、ゼスラ来い。シンはバレイラとロイは詠唱破棄の練習、ニャルマーは…分かってるな?」
ミグは紫の夢の一行を呼びつけると次々に指示を出す。
紫の夢一行は戸惑いながらもミグの傍により、シンとバレイラは向き合っている。
ロイは一人集中していて、ニャルマーは桶に水を汲みにいき、宿から布を借りてきた。
***
「吐く…」
ジョエルがふらつきながら、生け垣に顔を突っ込み、キーナ、ゼスラは顔をニャルマーから渡された濡れた布で隠すようにして倒れている。デズマは放心状態でただ座っていた。
「シン、ニャルマーは避け方が大振りだ。」
ミグが木と木の間に縄を結び付け、その間を小振りに避けながら往復百本を指示する。
「バレイラはもっと相手を翻弄するフットワークを…ここからこの線の間を五分で往復百本。ロイは棒の型を百本」
「…まだやるのか…」
デズマが呆然としている。
「俺が決めた分、まだメニューは楽な方だぞ」
ミグの一言に紫の夢一行は固まったのだった。