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1stのリウマ  作者: 真咲静
神様達との接点が出来ました。
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6.天敵との初対面

不本意な出会い

「あぁ…最近のラスボスは変態ばかりだ。」


竜真は涙が出そうだった。

ミグが別の部屋で石板に夢中になっているのを余所に、探索を続けたのがまずかった…と、思いたい。

竜真はうなだれた。



***


「ミグ。少し周りを見てくる。」

「………」


解読作業にすっかり夢中になっているので、竜真の声はミグに届いていないようだった。

ミグに声をかけるのを諦めて、竜真は部屋を出た。

マリシュテンの遺跡と対に近い形の今回の遺跡。

とりあえず、マリシュテンが居た部屋に近いような場所には近寄らないようにしておけば、なんとかなるだろうと浅はかに思ったのがまずかった。


まさかの途中の部屋で白金の毛で覆われた巨狼が待ち受けていた。


《…マリシュテンの匂いがする。》


目が合った瞬間、竜真はヤバいと思った。

このヤバいの意味は今から強い敵と戦闘する意味ではなく、変態と対峙した時のヤバいだ。

神狼から出てくるオーラに敵意はなかったが、妙にピンクにぼやけた別の意志を感じた。

しかし竜真は目を合わせたまま、手足を動かせなかった。神狼の威圧感はマリシュテンと出会った時を凌いだ。


「マリシュテン!」


逃げなければ!

そう思った時には竜真は押し倒されていた。


「愛しのマリシュテン。まさか君が来てくれるなんて。」


いつの間に人間体になっていたのか、長い白金の髪に黄金の瞳の見事な体躯の半裸の男が竜真を押し倒している。


「その顔を見せておくれ。マリシュテン。」


止める間もなく、竜真の覆面を取り払う。


「…お前だ…かわいいな。」


誰だと聞きたかったのだろうが、竜真の美少女ぶりに呟きが疑問から感想に変わっていた。


「変態、どけ!」


次の瞬間、竜真の蹴りが男の局部を破裂させんばかりの勢いで炸裂し、男はふっとばされ、壁に打ち付けられた。


「マリシュテンの知り合いか?」


ポツリと呟かれた一言に男は即座に反応した。壁に半分埋まったままなのは気にしてはいけないだろう。


「知り合いだとも。彼女まだ生きてる?あぁ、あの美しい髪、肢体…したいなぁ。あの胸に包み込まれたい。」


絶対的な美形も変態だと魅力は激減されるらしい。

残念感に竜真は勝てなかった。


「マリシュテンとそこまで匂いが移ることをするなんて…なんて羨ましいんだ。女の子同士の絡み…それも萌える。」


「バカたれ、俺は男だ!」


「何!男だと?そんなマリシュテンが男と…いや、その顔ならありだ。」


なにがだ…

竜真は何も言わず、後退った。

この世界に来て、変態遭遇率は意味不明なまでに高いと竜真は思っていたが、目の前の美形男は変態さが突出していた。


「逃がさないよ。マイダーリン。」


「誰がダーリンだ。」


竜真は眉間、喉仏、心臓にナイフを投げた。

それぞれに刺さったが、男は何のダメージも受けなかったらしい。


「そのツンツンした態度はマリシュテンに通じるね。タイプだ。」


ナイフを回収しつつ近寄ってくる男は元の世界ではたくさん居た、この世界初になる真性の変態と竜真に認定される存在となったのだった。


***



「何を遊んでるんだ?」


「ミグ、変態だ!」


「大変と言いたいのか?」


「違う。敵が真性の変態なんだ。」


全身が鳥肌で覆われた状態で、冷や汗をかいてミグのいる部屋まで逃げてきた竜真は、扉越しにいる変態と攻防していた。


「手伝え!ミグ。あぁ、鳥肌とまんねぇ。」


「わかった。」


反対からの圧力に全力で抵抗する竜真の後ろから、何のことだかわからないミグが支えた。


「何がいるんだ?」


「だから、変態。」


「で?」


「多分、マリシュテンみたいな存在。神狼じゃないか?狼っぽかったし」


向こうから押してくる力は並みではない。1stと3rd2人がかりでも必死で押さえているが、かろうじて押さえられている程度だ。その説明で納得したのか、ミグは力を強めたようだった。


その時、反対側からの圧力が消えた。


「転移できるの忘れてた。」


涼やかながら、艶っぽい声が吐息と共に耳にあたる。

ついでにサワサワと太ももを撫でる感触が気持ち悪い。


「なゃー!」


「僕が居たのに扉越しにいちゃついてたんだ。お兄さん、ちょっとショック。」


―過去読んできたファンタジーの王道では、白金長髪はクールやインテリ系、若しくは狼で熱血漢なキャラが多く、こんな変態は居なかった。

外見をぶち壊しにする変態は嫌だ。

その前に誰と誰がいちゃついて、誰が誰のお兄さんなんだ。


竜真は襲いくる脱力感と戦いながら、どう逃げるかに必死になっていた1stにあるまじき混乱ぶり、ミグは1人冷静に突っ込んだ。


「俺はノーマルだ。いくら美少女顔でもリウマ相手には勃たない。」


「馬鹿、名前を言うな。」


名乗っていないので、男に名前は知られていなかった。


「リウマ…リウマ…リウマ…覚えた。久しぶりに来た人間。歓迎するよ。どうかな?閨を共にするのは…」


「しない。俺も完全なるノーマルだ。男相手は乗るのも乗られるのも勘弁だ。ついでに俺だけじゃなく、ミグの名前も覚えろ。」


「好み以外は覚えない。」


竜真の一人称は基本的に僕や私。これが俺に変わる時には、混乱している若しくは侮られたくない場合が多い。

今回は後者のようだ。


「でも今回は、リウマの名前を教えてくれたことだし、覚えておこうかな?それに彼からもマリシュテンの匂いがする。なんだろ?これかな?」


手首についているレースのシュシュに男の視線が移動する。


「マリシュテンがくれた布で作ったからじゃないか?」


相手がなんだろうが普通に接するミグの背中に竜真は隠れた。


「加護付きの聖布を貰うなんて、君は神官か何かかい?でも、あの時、リユカ王が皆殺しにしたから、それはないか…」


「それはいつ、何があって?」


最後つぶやきになっていた語尾にミグが食い付いた。

巨体に近寄られ、男が押される。ミグに詰め寄られ、顔を引きつらせるのを見て、竜真はざまみろと思った。


「おい、ミグはリユカ帝国史マニアだから、ちゃんと話しないと離れないぞ。」


「…リユカ王ハムネアはね、神殿が権力を握るのが嫌で、四神神殿の神官を皆殺しに、殺せない僕らを封印して、神殿から出られなくしたんだ。退屈で死にそうになっている内に眠っちゃってさ、君達の気配がして起きだした。」


「四神って……ハルマのケザインに四神を祭っていた村があった。宗教的にはかなり衰退していて、その村と近隣の2、3の村しか崇拝してない。御神体は竜、狼、獅子、巨鳥だったかな。名前までは覚えていない。資料がシュミカにあるから、見ればわかるんだけど…」


「マリシュテン、ビシャヌラ、ヤシャル、アルシュラね。僕はビシャヌラだから」


「そうそう、そんな感じ…あぁ、そう言えば、本人がいるのか。」


先程までの喧騒はすでになく、研究者状態の冒険者達はそれぞれの脳内に描く学説に夢中になっていた。


「マリシュテン、ビシャヌラ、ヤシャル、アルシュラ………何だか発音が似ているものを知っている気がするぞ。………まりしてん、ビシュヌ…いや、びしゃもんもありか、ヤシャルは夜叉…アルシュラは阿修羅…でも毘沙門天ならせめて虎だろ。…」


「ハムネアと言えば、狂王ハムネアか、ハムネアの次代に1度革命が起きていたのは、つい先日、発見したから、つじつまはあう。成る程、宗教を潰したのか。しかし、四神教が復活しなかったのは何故だ…」



全く2人に相手にされなくなったビシャヌラはつまらなさそうに隅で拗ねていた。


***



2人に質問攻めにされ、ちょっと顔色を悪くしている古代神は、いつの時代も研究熱心な人間達に待ったをかけていた。


「流石に今日はもう止めてくれるかな。何年ぶりに人間と話してると思っているのさ。喋るの疲れたよ。」


「わかった。リウマ、1度ナユタに帰ろう。」


ミグはビシャヌラに返事をすると、書くところがなくなった紙をペラペラと捲った。


「そうだな。マリシュテンの時は色々でこんな事を聞けなかったし、お前、変態だけど、中々いい奴だな。」


めったに見せない満面の笑みを竜真は浮かべた。


「リウマ、君はやっぱり素敵だ。」


「放せ、変態。」抱きつこうとするビシャヌラと竜真の攻防を余所にミグは資料を捲っている。

誰も収拾つける者は居なかった。



***


それから1週間、2人はビシャヌラの神殿に通いつめた。

その結果、ビシャヌラの依頼を受けたのだった。


「じゃあ、ヤシャルとアルシュラによろしく。」


遺跡の入り口で手を振る美形。

ビシャヌラからの提案はマリシュテンとすでに知り合いになっている2人にヤシャルとアルシュラへの使いをしてもらうこと。

ヤシャルの神殿はビシャヌラの神殿から真南に100キロ、アルシュラの神殿はマリシュテンの神殿から真西へ100キロ。

完全なる正四角形の形をとるらしい。


「ミグ、マリシュテンの神殿によって、アルシュラ、ヤシャルで、最後にビシャヌラで1周でどうかな?魔法屋で通信機を5機買って四神殿1機ずつ置いて行こうかと思うんだけど…」


「それが出来たら3000年前がなんて身近になるか…リウマ」


「ミグ。」


力強く握手している覆面と大男の凸凹コンビ。

竜真はミグとの旅は当分終わらないだろうと、ビシャヌラの神殿から離れながら思った。



遠く離れて行こうとする2人を見つめて、ビシャヌラは小さな声で言った。


「マリシュテンの匂いと飾り、僕の髪があれば、通行手形には充分でしょ。」


2人を待ち受けるであろう困難に、ビシャヌラは笑みを浮かべるのであった。


ビシャヌラ:変態…

えっと…ツンデレよりツンツンが好き。

邪険にすると喜びます。

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