57.凸凹夫婦
無事だったのは竜真とミグだけで、他は皆、大変なことになっていたが、何とか男は男ものに着替えることが出来たようだ。
「それにしても…」
目の前にあるのはリユカの宮廷料理にゲテモノ料理、竜真が知るかぎり8ヵ国の田舎料理はある。
「節操がないって言うか」
「それはここが追究する飯屋だからだ!」
突然の声の乱入に見てみれば、ベリーショートの金髪で碧眼が燃え上がっている印象の褐色の小さい美女が料理人の服を纏い、お玉片手に仁王立ちしていた。
「この店は料理を追究する奴が集まる店。料理長のミルワだ。ダイオンと共にミグと旅していた。冒険者ギルドのランクはA」
元気と言うか活発なと言うべきか、ミルワは華やかな笑顔の持ち主だった。
その脇に、先程の服屋の店長が並ぶとミルワは小さな子どものようだった。
「改めて自己紹介だ。俺はダイオン。ギルドランクはミルワと同じくAだ。それから一つ言っておく!ミルワが可愛いからって手を出すなよ?ミルワは俺の嫁だ。可愛いだろ?」
完全な惚気に一同どん引きである。
「可愛いはよせと言ってるだろ!木偶の坊!マモーとミモーは?」
「お仕置きの千本まつり縫いの真っ最中だ。全く、その手の趣味がない奴に女装させるのはいかがだと思うよ。あ、マモーとミモーは俺達の子どもだ。飯屋の方に長男のリオーが居る」
過激な凸凹夫婦のやり取りを止めたのは、慣れているミグだった。
「さて、こちらも自己紹介するぞ?まず覆面がリウマ、その隣がニャルマーで、シン、ロイ、バレイラだ。それから、ミルワ、ダイオン、やっとリーシャを見つけた。リーシャ、来てくれ」
ミグはリーシャを自分の脇に立たせる。
「リーシャだ。俺の花嫁だ」
驚いたのは次の凸凹夫婦の行動だった。
ミグの腹に二人の拳がめり込む。
「「ミグ、おめでとう」」
手荒な祝福に竜真は笑い、リーシャ以外は唖然、そして、リーシャはくの字に折れたミグにオロオロしていたのだった。
***
「あ〜硬かった」
「肉体労働から離れているくせに硬くなるんだ」
思い思いに感想を言い、手を振りミグの腹を殴った反動の痛みを逃している凸凹夫婦。
「ようやく2ndに上がるだけの経験値に上げたんだ。当然だろう?」
「「受けんの?」」
「受ける。リーシャを嫁にするなら、そのぐらいの甲斐性は必要だ」
堂々と言い張るミグにリーシャは困っている。
この言い合いに竜真はニヤニヤしながら…目の前の料理をニャルマー、シン、ロイ、バレイラに説明しつつ食べていた。
「まったくミグの男の甲斐性のレベルの高さはありえないよね」
「リウマ様、あなたは人のことを言えません」
「ニャルマーさん、言うじゃないですか!」
「にしてもリウマさん、料理のことまで詳しいですね」
《美味しい》
竜真がにやつき、ニャルマーが苦笑。ロイがニャルマーにツッコミ、シンは感心している。そして、バレイラはゲテモノ料理を食べながら感動していた。
「バレイラ…君には是非とも連れていきたい店があるよ。」と、竜真は嬉しそうにしている。
そんな彼らはさておき、ミグ達は男の甲斐性について話し合っていた。
「元々、俺がリーシャを見つけたら、店をお前らに経営まで任す予定なんだ。俺の稼ぎが減るならベースアップは絶対だ。」
「「経営委譲なんかしたら、作っていられなくなる。経営はお前がしろ」」
ヒートアップする彼らを余所に、食事チームはギブアップしたニャルマーとシンがぐったりしているのを尻目に食事を続けている。
「ミグ、貧乏くじ〜」
「趣味も程々ですね」
《おかわり》
竜真とロイは冷やかし、バレイラはマイペースに食べている。
「バレイラに負けた」
「シン君…私達は人間でいましょうね」
「ニャルマーさん…」
ニャルマーとシンは友情を育んでいる。
何とも言えない空気が漂うなか、ミグお帰りなさい会はミグとリーシャが何も食べないうちに食料が尽きそうだった。
濃い夫婦が出てきた…
さて、前回のマーモー!ミーモー!のネタ分かった人はきっと25オーバーだ。
にしても…お宅拝見〜orz




