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1stのリウマ  作者: 真咲静
神様達との接点が出来ました。
47/113

47.愛し愛され

「いいの、いいの。私にできることなんてないんだから、私にもさせて?ね?」


休憩になり、リーシャが鍋を持ち小川に水を汲みに行こうとするのをミグが止めたのだが、リーシャは行ってしまった。


「ミグ。」

「ミグさん。」


「「いつ告白するの?」」


すかさず竜真とロイが近づいてミグに突っ込むと、シンも近寄ってきた。


「ミグさんを苛めちゃだめですって。ミグさんは完全に弟なんですから、リーシャさんの目から大量の鱗を削ぎ落とさないと男に見てもらえないんだから。」


このパーティーの良心となりつつあるシンがミグを慰めたようで袈裟切りに切り付けている。


「シン、分かってはいるんだ。」


ミグは落ち込んだ。


「まぁ、こどもがいる所帯じゃあ、大人な迫り方がしにくいのは分かってますし、リウマさんならともかく、ミグさんがそういう付き合いに慣れていなさそうなのも分かってますから。」


慰めているのか、切り付けているのか分からないシンのコメントに竜真が追い打ちをかける。


「僕はともかくってシンねぇ。でも訂正しておくと、ミグは毎回毎回が本気でお付き合いする人だから、…それなりにお付き合いしてきてるんだけど、遊びの幅がない分お付き合い回数が少ないだけだから。ただ僕が知る限り2人には振られてるよ。」


「そうなんすか?やっぱ女の子より家事が巧すぎるのは駄目なんでしょうか?それとも懐が広すぎて逃げられちゃうんでしょうか?」


「それ以上苛めないでくれないか?」


ミグが哀しげに巨体を小さくして落ち込んでいる。


『リーシャさん曰く、ミグさんは最高のオムコさんタイプだって』


バレイラの慰めも嬉しくなかった。

ニャルマーとロイが生暖かにミグの背中を見ていると、リーシャが戻ってきた。


「あら、ミグどうしたの?」


「いや、なんでもない。鍋もらうよ。」


「ん、ありがとう。」


リーシャが華やかに笑えば、ミグは何も言えずにリーシャを見つめてしまう。

そんな自分の背中に視線を感じて呟いた。


「…………生暖かく見守るのをやめてくれ。」


「ん?どうしたの?あっそうだ。」


ミグの呟きはリーシャに聞こえなかったようでキョトンとされてしまったが、リーシャがポケットから出したものに今度はミグがキョトンとした。


「うふ。見つけたの。」


「青硝石の固まりだな。握りこぶしサイズは中々ない。加工してもいいか?」


「いいわよ。そうねぇ〜。シンとロイとバレイラにお揃いのアクセサリーなんか欲しいなぁ。」


思わぬところで自分達の名前が出て3人がリーシャを囲んだ。

ミグは3人の顔を見回して少し考えた後、自分の鞄から薄い青の布と麻紐、針や鋏、トンカチを取出し、その場で何かを作り始めた。


***




「基本デザインは一緒だけど、個性に応じて変えてあるのね。シンはチョーカーで、ロイはベルト、バレイラは髪留め…凄いわ。ミグ天才!」


リーシャに誉められてほんわかと口元を緩めるミグにリーシャを除く全員がにやつく。


「リーシャさん。」


「何?リウマ君。」


「ミグってオムコさんにしたいタイプ?」


「…そうね。長身で力持ち、ギルドでも実力者でインテリ、帝都、城でも身分ある仕事に就いていて、更に家事一切が最上級レベルで顔も悪くない…女としては高物件よね。ミグ、あんた結婚する気ないの?父さんと母さんがうまくいかなかったからって、あんたがうまくいかないとは限らないんだから結婚したらいいのに。」


本気の他人事でミグを心配しているリーシャにミグの表情が一瞬の陰りを見せた。

それに気が付いたのは竜真ただ1人。後は発言にあ〜あ…と言う感想を持つ。


「じゃあさ、リーシャさんがもらってあげたら?」


「え?」


予想外の竜真の言葉にリーシャが驚いている。

次の瞬間、リーシャの頬が赤く染まった。

これには全員がおっ?となって、目を見張る。


「ミグ、リーシャさんまんざらじゃないみたいだよ。さて、皆の衆、僕らはちょいとかくれんぼしようじゃないか。」


ミグにニヤついた後のセリフにリーシャがギョッとするもミグもリーシャも止める間もなく一瞬で2人の周りから誰も居なくなった。

ミグが遠い目をしてため息を吐いた。


「全く皆何考えてんだかぁ。…ミグ?」


何かを誤魔化すようにリーシャがミグを振り替えると、苦笑気味にミグがリーシャを誘う。

竜真らの微妙な配慮の仕方にミグも覚悟をした。


「リーシャ、こっちに来て座らないか?」


「どうしたの?」


リーシャは恐る恐る近寄り、丸太に2人で腰を掛ける。


「リーシャはこれから先どうしたいんだ?」


「そうね。のんびり暮らしたいわね。」


リーシャの暮らしてきた日々はハードだった。

男女のことなど考えなくゆっくりと暮らしていきたいと思うのだが、ミグが誰かと結婚することを考えた時に胸の奥にツキンとした痛みが走る。

男女の睦あいと駆け引きが仕事であったリーシャには何度か通り過ぎた身に覚えのある痛みであった。


「…俺とのんびり暮らしていかないか?」


「ミグ?」


「城常駐の仕事もあるし、もうすぐ2ndテストも受ける。男としての甲斐性はある方だと思っている。リーシャのこと、小さい時から好きだった。リーシャの面影をずっと追い掛けてきた。再会出来たら離さないとも決めていた。だから、のんびり暮らしたいというなら俺と暮らしてほしい。」


真っ直ぐで駆け引きのない必死な告白。

リーシャはどうしたらいいものか、頭のなかを大いに混乱させていた。


「…あんたみたいに綺麗すぎる人間とは釣り合わないわ。」


「リーシャはリーシャだ。俺だって冒険者で、それなりに汚いこともしてきた。人だって何人も切っている。花街の女を抱くことも勿論あったし、彼女達の事情や花街の事情も知らない年の男じゃない。俺の方がきっとリーシャに釣り合わない。でも俺はあきらめない。」


藍の瞳は強い意志を込めてリーシャを貫く。


「だって姉弟じゃない。」

「血のつながりはないし、今は姉弟じゃない。」


「元遊び女よ。」

「そこから連れ出したのは竜真だし、事情も知っている。そもそもリーシャをリーシャとして見ているんだから理由にはならない。」


「家事なんてしたことないわよ。」

「俺ができるから問題ない。辛い仕事をしてきたんだから、その分、甘やかしたいぐらいだ。」


言えば言っただけ甘ったるい言葉になって即返ってきて、リーシャは頭をクラクラさせていた。


「断る理由がなくて、俺が少しでも好きなら明るい返事が欲しい。もうここまで意志を表に出したからには、今まで以上に甘ったるく甘やかしてやる。覚悟してくれ。…少し頭を冷やしてくる。」


最後にはリーシャを柔らかく包み込むように抱き締めて、額にキスすると、ミグはあっという間に居なくなってしまった。


「…」


ただただ顔を火照らせて、リーシャが動かなくなっていると、リーシャの前に誰かが立った。

顔を上げると、それは竜真だった。


「そのまま、怒らないで聞いてね。一緒に旅している時に、一応、大人の男な訳で、自分をコントロールするためにも定期的にミグを花街に連れていったのは僕。そんな中でミグが必ず選ぶタイプの女性が居るわけなんだけど、必ず髪と目の色が一緒なんだよね。僕が見たことある恋人も同じ髪と目の色。初めてリーシャさん見た瞬間に納得した。ミグは常にリーシャさんを求めてるって。ミグは初恋を大事にしていた一途な男だよ。別の人を抱いていても彼はリーシャさんを抱いていたってこと。ねぇ、リーシャさんがミグを好きなのは僕は初対面から気付いてる。リーシャさん。愛されてるなら飛び込んでみたら?ミグは本当にいい男だよ。」


言うだけ言って、竜真は居なくなった。

そこへミグが帰ってくる。

あまりのタイミングの良さにリーシャの心臓は苦しいまでに高鳴っていた。


「ミグ…本当に私でいいの?」


「リーシャ以外は女じゃない。」


リーシャは一歩、一歩とミグに近づき、その大きな身体を抱き締めた。


「私もミグが好きだった…お客でもアッシュの髪だと、藍の目の人だと喜んだ…」

「もう言うな。言わないでくれ…リーシャの口から他の男を聞きたくない。俺だけを見て欲しい。」


ミグの激情に強く抱き締め返される。

リーシャはミグを見上げた。


「リウマ君からミグのこと聞いたわ。でも怒らない。だって私を抱いてたんでしょ?ずっと音信不通で二度と会えなかったかもしれない私をずっと…」

「そうだ。リーシャが欲しかった。ずっと欲しかった。」


ミグの熱い思いがままにリーシャと深いキスを交す。

互いが手に入った瞬間だった。



***



「リウマ様、リーシャさんに何を言ったんですか?」


木の影で気配を隠して待機しているかくれんぼ組。

竜真の傍にニャルマーが、シン、ロイ、バレイラはその足元に座っていた。


「いつになったら合流できるかなぁ。」


《シン、馬に蹴られてきてよ。》


「いやだよ。なんで俺なの?こういう役はニャルマーさんでしょ。」


「「あ」」


擦り合いしていると、竜真が堂々と木陰から抜け出す。


「イチャイチャは宿に着くまで程々にねぇ。」


「竜真。」「リウマ君。」


真っ赤になったミグとリーシャが叫んだのだった。


ミグ、おめでとう!


書いたぞ。

砂吐くぞ。

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