39.ありがとう
39話目で副題ありがとう…はい、だじゃれです(笑)
《ありがとう。》
サーナターナから1日歩き続け、次の町への街道筋、また1人増えた一行は夜営に入っている。
食事を終えて、片付けも一通り終わって、バレイラはリーシャに髪を結いあげてもらった。
バレイラにお礼を言われたリーシャは目を細めてバレイラの頭を撫でていた。
気持ちよさそうにとろんと目蓋を落としているバレイラに、周りの大人や兄貴分達は、ほんわかと温かい気持ちを心に灯していた。
「こういう平和が1番だねぇ。」
「竜真さん、じじむさいよ。」
マグを片手にお茶を飲みながらの感想にシンがすかさず突っ込んだ。
「じじむさいって…シン、君ねぇ。じゃあ、シンが思ってる冒険者ってどんなもんよ?」
思ってもない切り返しに、シンははてと思う。
―――シンが初めて冒険者と言う者を意識したのはいつだったろうか?
まだ幼子だったおり、孤児院は単に子どもの世話をする場所ではなく、単なる寄せ集めにする場所で、困窮していたあの日。
森の中は危ないと知りながらも、食べられる野草を探していた。
その時現れたのは猫が巨大化したかのような魔物。
幼心にシンは死ぬんだなと自覚した。
しかし、いつまでもその瞬間は来なかった。
シンの前には1人の男が居た。
アッシュの長い髪を一括りにした長身の男はショートソードを手に魔物を退治した。
「坊主、怖い思いをしたな。」
そう言って男はシンの頭を一撫でしてくれたのだった。
「爽やかな笑顔と温かい手と…ホッとする強さの男かな。」
「グフっ…」
シンが思い出を吐露し、柔らかな顔で過去の自分の英雄を思い浮かべていると、ミグがお茶を吹き出し、信じられないとばかりにシンを見る。
「アッシュの長い髪を一括りにした長身の男…ねぇ〜。」
冷やかしの竜真の声にミグは視線を明後日に向ける。
「まさか!」
「きっと覚えがあるんだろうねぇ。顔が真っ赤かだよ。ミグ。」
シンが目を見開く。
竜真はニヤニヤしている。
「運命です。」
その時、目を輝かせてニャルマーが感激していた。
「私と竜真様が出会うのも運命なら、ミグさんとシン君が出会うのもまた運命なのです。」
その場を白けた空気が漂う。
今まで黙っていたロイがニャルマーの背を叩いた。
「ニャルマーさん。煩悩は閉まっておこうね?」
すっかり寝入っているバレイラ以外は白けた空気の中、そろそろ寝るかぁとそれぞれに寝入り場所に移った。
***
明け方、シンがボーっと日の出を眺めていると、隣に音もなくミグが座る。
「ミグさん…あんときもだけど、他にも色々と死にかけたことあるんだ。でも、こうして今生きてる。それは1番最初に俺を助けてくれたあんたのおかげだ。ありがとう。」
ミグはシンの頭をがしがしと撫で付ける。
シンはその手の暖かさに嬉しく幸せになる。
「シン、お前がここまで生きてこれたのはお前の力だ。…シン生きててくれて、ありがとうな。」
清かな朝はほのかな温もりとともに2人を包み、また旅立つための力となった。
ニャルマー…痛すぎる。
そして、ロイ君キツいよ。君…